武ニュースDiary


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2020年06月16日(火) 「南方人物周刊2017-4-24」記者の眼

「人物周刊」の記事は、3つの部分に分かれていると書きましたが、
公式HPには、前回ご紹介した導入部と、もう1つ、
本誌にはない、「記者の眼」という文章が載っています。

この特集は1人の記者(劉珏欣 りゅうかくきん)によって書かれていて、
その記者が取材をして感じたことを率直に書いているのですが、
先にそれを読んでからの方が面白いと思いますので、以下に。





記者の眼
なぜ金城武を守ろうとするのか?


だインタビューが始まる前から、
あの一分の隙もなく待ち構える態勢が、私に気を揉ませた。
護衛が多かったというわけではない。
金城武のスタッフ・チームは、インタビュールームに入ってくるや、
インタビューとは直接関係のない人間を1人1人、
断固としてお引き取り願った。
その中には映画の宣伝担当者までいた。

それなのに、宣伝担当者はさらにお咎めにあっていた。
「関係の無い人はいないようにとお願いしなかったですか?」
「ええ、ほんの数人ですよ、それにあなた方がいらしたら、すぐに出ますから」
「いやいや、そうではなく、あらかじめお願いしていたのは、
私どもが来る以前に、引き取っていてくださいということだったんです」
理由は、金城武が、人が少しでも多くいると、落ち着かなくなるからなのだ。

たとえ私がずっと金城武を好きだったとしても、
大スターにはおかしな癖を持つ人が大勢いるのを見てきていたとしても、
流石にこのときは思った。
これはちょっとわざとらしすぎるんじゃないか?
まさかあの伝説の中の素晴らしい金城武は、
実はお高い人間だったとでもいうのだろうか?

しかし、彼と面と向かって腰を下ろすと、
このような考えはまた消えていくのだった。
以前、こんな記事があった。
金城武と対面で取材するときは、間隔を2メートル開けなければならない。
記者が少しでも近づこうとしたら、制止される、というのである。
そのようなことは、今回は起こらなかった。
彼の方から、話しやすいように近寄ってきてくれたし、
私がICレコーダーを置けるように、
近くのテーブルを自分で動かしてきてくれたりさえしたのだった。

今回のインタビューは成功したとは言えない。
私が前に読んだり見たりしたことのある彼のインタビューが
ほとんどそうであったように、成功しなかった。
唯一成功したと言えるのは、
NHKが制作した南極旅行のドキュメンタリーである。
しかしあれは南極という環境のもとでリラックスした11日の間の撮影で、
旅行する前に撮ったものではない。
同じような条件を再現するのはほとんど不可能だろう。

私は数えきれないほど多くの人のインタビューをしてきた。
昔語りが上手な人、撮影時のことをよく覚えている人、
考えをまとめるのがうまい人、また、ユーモアたっぷりの人も、
自分をよく分析できる者もいた。
だが、金城武はどれもこれも不得意だ。

あいにく彼は極めてまじめで、ほんの軽い質問にも、眼を閉じ、
傍らを向いて、長いこと考え込む。
その姿はこの上なく美しく、時間を止めたいと思わせるほどだ。
そして目を開くと、誠実にこう言うのだ、
「本当に覚えてないんです」

もし、この覚えていない、あるいはあまり役に立たないような答えが
続いたようなときには、彼はこう言う。
「ごめんなさい。ほんと、申し訳ないです」
そこで、私はインタビューのときにはめったにならない気持ちになる。
一方では、参った参った、使える内容がほとんどないと思い、
一方では、なんていい人なんだと感嘆しているのだ。

こうなれば、周囲の取材に精を出すしかない。
私は彼と仕事をしたことのある人間を訪ねて回った。
そして2つの面白いことに気が付いた。

1つは、仕事をしたことのある人たちの多くが、
自身と金城武との関係を定めかねているということだ。
仲がいいのか? そのはずだ。
だが金城武の方もそう思っているのかは断言できない。

このつかず離れずの関係は、公の人物が公に語るときにはめったに見られない。
公の人間は普通の人よりも、もっと仲の良さを楽しそうに語ったり、
時には友情を誇張したりするものだ。
こういうつかず離れずの表現がされるとすれば、
それは特に親しくはないということを意味する。
しかし、金城武の場合は、彼自身が認めた友人であっても、
このような言い方になる。

2つめの興味深い点は、一緒に仕事をした多くの人が、彼に対し、
端から見てもすぐそれとわかる保護者的気持ちを持っていることである。

例をあげよう。
映画館で金城武が質問に答えているとする。
相変わらず答えるのが下手だ。
すると、ピータ・チャンがすぐに助け舟を出す。
「彼の言葉を翻訳しましょう」
他人に理解されないのが心配なのである。
金城武のスタッフ・チームが彼を守ろうとする感じと、大変良く似ている。

プロデューサーの許月珍はこう話す。
「彼のことを良く知ると、自然と守ろうとするようになるんですよ」
私は頷いた。
なぜなら、数日取材しただけで、その保護しようとする気持ちが
私にも芽生えてしまったからである。

よくよく考えると、43歳の男性なら、
たとえあまりハンサムすぎて宇宙人みたいになっていようと、
人の心に生まれるものは、憧れのような気持であるはずで、
守ろうとする気持ちではないのではないか?

一体その気持ちはどこから来るのだろう?
浅い結論にならざるを得ないが、
彼は一見してデリケートであるが、時代の大きな潮流に抗って流されず、
ただ良い仕事をしたいだけで、
自分について人には一切知られたくないという生き方を貫いている。
ひ弱だが、強靭で、人に尊敬の気持ちを起こさせ、
少しでも助力してやりたいと思わせてしまう。

このような俳優は損をする、とピーター・チャンは話す。
彼は今回金城武に「恋するシェフ〜」への出演を勧めたとき、こう言った。
「やってみてごらんよ。撮影からプロモーションまで。
今の世界がどんなふうなのか、見てみたらいい。
君は気に入らないと思うが、しかし、ぶつかってみてごらん。
世界を変えることができないなら、
その世界と共存することはできないかどうか、見てみたらどうだい?
もう2度とやらないかどうかは、その後で選べばいい」

今回の試みで、金城武が喜びを感じられたのだったらいいと思う。
私たちは、やはりこれからも、
大スクリーンでの彼をたくさん観たいと思うから。
(この項終わり)


   BBS   ネタバレDiary  19:00


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