絵画制作日誌    Diary INDEXBACKNEXTHOME GALLERY


クロッキー会第2弾         2002年02月08日(金)

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水曜日、アンディスインディアンの写真集から木の上で弓を構える子供をちょこっとラフで描く。

駐車料金振込。通帳未記入明細通知が来なかったので窓口で問い合わせる。そうしたら未記入明細は今は郵送していないんだそうだ。書類に記入し明細希望を出す。それでも郵送はしてくれないようで、1週間後に窓口まで取りにくる様言われる。ふと周りを見ると、窓口両替有料の張り紙が。不況の波ってこんなところにも。今銀行って相当貧乏しているのかしらなどと思う。


相棒は代休で家にいる。なんとなく落ち着かない。
夕方、クロッキー会に出かける。相棒も誘った。


行きたいんだか行きたくないんだか迷っていた。
しつこく尋ねると躊躇していた理由はわたしと同じ。子供の世話を人にしてもらってまで、自分が好きなことをするのは悪いと感じたらしい。


そんな迷いは何十回もしているわたしは、「クロッキー会は水曜日6時からしかないんだよ。あなたは今日を逃すともう何か月も行く機会はないよ。それこそ何年もないかもよ。」と冷たく言い放ったら、やっとその気になった。


相棒は最近創作意欲がないらしく、絵や工芸に関することには傍観者に徹底している。展覧会で友人の作品を見たあとなどは興奮して、「俺もやりてぇー、もう構想15年だよ」とか言っていたが、最近はそれもなくてちょっと寂しそう。

わたしもその気持を所有する一人だが。


相棒は創作よりも家族のために働くことを優先している。お義母さんは外に出ることもなく、介護と子守、家族の食事に気を配ることを優先している。わたしはわたしを大事にしてくれる人に感謝しつつも自分のしたいことを最優先している。ここで「自分を疎ましく思っている主人公」の物語を思い出した。


大事にしている者のために尽くしたい。でも激情は押さえられず、いつでも自分のためにだけ動いている。恩恵は受けつつも返せない。
そんな自覚はめげるものだ。やりたいことがうまく行かない時は特に。追い詰められるよね。
ま、うまく行けばいいんだけれど。


そんなこんなでクロッキー会。今日のモデルさんは良かった。身体つきも鍛えられ、かつ女性らしい丸みも美しく、ポーズもきりっとしていて良かった。うん。
「綺麗ね。あなた、とっても。綺麗ね???」、という気持で描いていた。まるでカメラマンの褒め殺し。
持っていったコンテがちびたものばかりで、掴みきれず手からぽろりぽろりと落ちていく。
象徴的で目眩。
落ちない様、何喰わぬ顔で画面を横にする。


相棒は「やっぱり久しぶりだとうまく描けない」と言っていた。予想どおり。絶対言うと思った。

やっぱりちょっと寂しそう。
結婚前にわたしが泣いていた時、「何年かかろうと俺はつくることを諦めないよ」と言ったのは君なのよ。
何度でも思い出す。わたしは忘れない。

でも、返す言葉はなくて、寂しがる人に声もかけない。

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木曜、寝坊した。絵を描くってなんか疲れないかい。だるい。神経からエキス絞りとられるような感じ。たかだか2時間のクロッキーなんだけれど。高揚したあとはだるい。


そんで朝メシも喰わず、チビはお隣にさっさと押し付けて出勤。腹減った。

買い喰いしたくても金がない。ちょっと切ない気持。でも、「腹減った」感覚も懐かしくいとおしかったりして。あぁ。


朝一で教室の大荷物を整理し、モチーフセットして授業突入。今日は「休学予定」だった生徒さんが来てて、仕事の量を減らしてもやっぱり絵を続けたい、とのこと。仕事は真剣にやればこんなにやりがいのあるモノはないから、選択した彼女に、わたしはただ「そうですか」と微笑する。


彼女は絵を描いた経験はさほどないが、本物の絵を日常的にたくさん観ているので眼が肥えている。初心者絵画教室のいわゆる線描き→固有色べたぬり的な手法では面白くないだろうと、ドローイングをやってみないかと誘った。時間も根気もなく、感性が突出している彼女、じっくり仕上げるタブローにこだわる必要はないんじゃないか。誘ったら大いに盛り上がって、水彩の人を一人巻き込んで、来週から楽しいドローイングにトライしてみることにする。

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午後の油絵の人は、もう3か月も同じモチーフを描き続けている。一度納得いくまで描いてみたいという要望を受け入れた。でも、そういえば彼女にはエスキースや構図、構成のことを何も教えていない。ものを描く力はあると思っていたが、全体のバランスに対する配慮が皆無なため、描きこめばいくほど鈍くばらばらで、最初のきらめきは浮かび上がってこない。


描き終わるまで待とうと思っていたけれど、中にはさんで彼女にもエスキースやドローイングを一緒にやろうと誘ってみた。あの絵が好転するか混乱したままかどうなるかはよく分からないが、構図や主題の認識がいかに重要か、彼女が絵に手を加えれば加えるほどわたしの方が切実に感じてしまう。


彼女は混乱の末、「悔しい」と言っていた。
もう一人の油絵の人も「せんせいと同じモチーフを描くのはいやだ」と苦笑していた。

なんか嬉しかった。
わたしたちはきっと仲間になれる。


疑問を与えたのはわたし。
混乱に引きずり込んだのはわたし。
わたしは加害者。
自ら混乱のさなかにいて、導いていく力は不足していると思う。先生と呼ばれるに相応しい人格と技量は持っていないし、だからこそ演技もする。

でも、わたしはあなたがいる地点を確かに知っていた。
迷いながらも通り抜けたことを憶えている。

by HPY


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