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ラヂオスターの悲劇
トマーシ
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2003年09月29日(月)
冬の散歩道

カフェ・アゼリアをでると、僕はまるで丸裸にされた気分になった。指先に感じる風と頬に当たる風は均一。どちらも冷たい。たがの外れたレジスターみたいにポクポクポクポク独り言が口をついてでる。窓越しにぎっちょのマスターがコーヒーを入れるのを見た。それからそのマスターの向こうにポットが湯気を立てているのも。僕は斜めに斜めに路地を曲がる。路地の奥は小豆色の板塀で、その向こうは空き地になっている。板塀の下は中が覗けて、そのキックできるくらいの際に空気の抜けたサッカーボールが転がっていた。ぼんやりしてると、黒ブチの野良犬が僕の横を通っていく。少し足を速めて僕を通り過ぎる。僕はなんとなしにその後を追う。犬は更に足を速め、僕も足を速める。犬はついにこちらに首を曲げ、軽く唸る。
うっうっう
犬はピョンと跳ねて、僕は頭を隠した。息を詰める。目も瞑った。
耳には遠くへ遠くへ犬が駆けていく音。
振り返ると、その犬の姿は何処にもいなかった。