そんな名前の女の子の話を書きたい。 気紛れに、唐突にふとそんな名前が出てきた。とにかく手を動かそう。 りんごビッチ、天涯孤独。将棋の駒で言えば、盤から離れてひっくり返った赤い駒。赤い花。赤い頬。 ガルシア・マルケスの「エレンディア」、それからアイヴィ・アンダーソンの「スイングしなけりゃ意味がない」、あとは理論上存在しないクォータートーンだろうか。 52枚目のカード。 ユーゴーの描く革命をバックにして。新宿、寺山修二、「毛皮のマリー」 あるいはバタイユ、「マダム・エドワルダ」 それは生身の女の子。かつて誰からも愛されたことがなかった女の子。彼女には一片の祈祷文しか持ち合わせがない。 小さな女の子。身の丈に合わない赤い傘。唄を歌う。舞台は常に雨。 「ヘドヴィク アンド アングリーインチ」 しかしそんなに強くはなれない。 顔の表情を曇らせると、すぐに俯いてしまう。彼女は裏口からしか出入りが出来ない。ナラ・レオンのレコードジャケットとそれから
母親。
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