チェルシーホテルに入ったのは六時半を少し廻った頃 客はまだまばらで、わりに高い天井ばかりが明るい。 それは人が増えるに従って暗くなった。
今日は特典など無く、通常料金で入場。 「彼」がいたならば、大概ロハなのだから このあたりの事情ばかりはよくわからない。
とにかく最初のビールを頼む。それから煙草を一服 バーカウンターに体を傾けて キラキラに磨き上げられた灰皿に最初に吸殻を置いたのは僕だった。
目の前をスックスックと頭を上下させながら、 ヒョロっとした男が。 ビールは意外に腹に溜まる。 こういうところでは何をするにも急ぎすぎてしまう。 それはビールだって免れない。
最初のバンドの演奏が終わると長いインターバルに入った。 どうやらアンプの調子が良くないらしい。 人の頭の向きは一様ではなくなり、すぐ近くやあるいは遠くの誰かに、 声は行き交う。 僕は段々肩に重いものを感じ始めていた。 目を瞑ってみて分かることが全て出尽くした頃にようやく演奏は再開された。 そして人はグッと増えていた。 僕は段々前の方に来ていた。丁度良く凭れかかれる柵が見つかったのだ。 お目当てのバンドは一番最後。 でもライブの雰囲気は悪くは無かった。 何かスクスクとパーティが進んでいくような むしろ闖入してきたのは僕なのだった。
ポーリーの出番が来た時、何故か僕は前から数えて三番目くらいの人 になっていた。 メインのバンドのときは少し下がるのが 作法なのかもしれない。 でもこれが見たくてここに来たのだからと、構わず居座る。
ポーリーはすごく良かった。 ライブも全然良かった。 ライブとシーディではまた少し違った。 何を言っても嘘になってしまうような すごく素敵だった。 ライブでこんなに気持ちが昂ぶったのも久し振りかもしれない。 とにかく翌日になっても残像みたいなものがチラチラしたのだから。 また是非行きたい!
|