秋はね、大嫌い。
大嫌い。
どれ程かというと、両手で描いても持て余してしまうくらい。
大好きで、大切なものを連れて来て、僕は。
その闇に溺れた。
秋の中で静かに静かに眠った空と。
創られてゆくその鏡。
僕は溺れた。
空は泣いた?
嬉しいと思ってしまった。
繋がれた場所からなげられて、貴方は僕を迎えに来てくれた。
遠すぎたはずで、もう二度と逢うことは無いと思っていた悪魔。
だけど貴方は僕を傍に置いて、とても淋しくさせた。
凍り付くような足音は、耳から今でも離れなくて。
そして、勝手になげて。
僕が愛した場所は、今は誰のてのひらの中にある?
寒空の下のベランダはまるで、温かい監獄だった。
水銀灯に群がる虫達はそれきりで幸せそうな光の闇に。
我よとばかりに集まっては、ひとのてで道路に堕ちた。
さようなら。
そればかり、僕は心で優しく繰り返す。
けれど僕のあしもとに触れたカタカナの毎日は。
だれも助けてはくれなくて。
僕は迷い込んだその場所で、階段で、新聞紙を千切った部屋で。
今でもあたしの帰りを待ってるから。
僕はもう帰れないのに、この場所で朽ちるのに。
乾いてゆく言葉を殺した毎日の渦の中で。
その部屋へ、あたしに浚われたまま置き去りにした。
大切な約束さえ粗末にして、僕は。
ひとりにして、さびしいでしょう?
ごめんね。
だけど、僕に馳せられた貴方の言葉を、今も見付けている。
その道を通るたびに、泣き腫らした傷で僕を探している。
もう水たまりに溺れないで。
今年もこの季節はやって来て。
僕はまだ何処への道も選べないまま、ひとりきりで在るから。
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