Coccoの曲で、星に願いを、っていう曲があるの。 その曲とオーバーラップする情景を良く憶えてて。 この曲を聴く度に思い出して仕舞う、不安定な或る夏だった。
あたしが高校受験の年の、夏休みだった。 あたしが反対したのを押し切って、祖母の居る自宅に帰った母親に。 あたしはひとつ、約束をさせた。 「帰るって云ったのはお母さんだから、もう絶対に出ていくのはやめて」 そう。 あたしだけが反対したの。 誰も聞いてくれなかった。 だからして、当然の約束をした。 夏休みが始まって2〜3日、母親が出ていくと云った。 あたしは咎めた。 あたしは受験生だった。 一緒に行こう、なんて云われても、どうしたら良いのか分からなくて。 考えれない頭になってたの。 その年には色々と用が重なっていて。 あたしは母親と妹と、暫く家を出る事にした。 居候するのは、母親の実家。 母親の兄弟はみんな学校の先生で、家庭教師代わりをしてくれた。
あたしは典型的な自然児だと、自分では思ってた。 夕立ちの雷と雨、月、闇、庭、森、そういうのがとても好き。 夕立ちが来たら外に出て、雨の中で遊ぶのが好き。 夏の夜は蒸し暑かったけれど、大概は晴れて月が綺麗だった。 皆が眠った頃、あたしは縁側に出て、月と暗い庭を毎日見ていた。 深い藍色の奥は沈むほど静かで、鉄塔と外灯の間に、決まって大きな月が出てた。 静かなのに何故か耳は騒がしくて、鉄の叩く音がするの。 そうすると無性に寂しくなって、泣けない。 本当に何処かが不安定な夏だった。 小さい頃の思い出も、大きくなってからの思い出も。 その縁側には染み付いていた所為かも知れないけれど。 今は、ひとりだと思った。 忘れられない日々だった。
そんな下らない情景が重なるの。 あたしは結局、受験をやめた。
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