⊂星に願いを。⊃
2002年04月23日(火)

Coccoの曲で、星に願いを、っていう曲があるの。
その曲とオーバーラップする情景を良く憶えてて。
この曲を聴く度に思い出して仕舞う、不安定な或る夏だった。

あたしが高校受験の年の、夏休みだった。
あたしが反対したのを押し切って、祖母の居る自宅に帰った母親に。
あたしはひとつ、約束をさせた。
「帰るって云ったのはお母さんだから、もう絶対に出ていくのはやめて」
そう。
あたしだけが反対したの。
誰も聞いてくれなかった。
だからして、当然の約束をした。
夏休みが始まって2〜3日、母親が出ていくと云った。
あたしは咎めた。
あたしは受験生だった。
一緒に行こう、なんて云われても、どうしたら良いのか分からなくて。
考えれない頭になってたの。
その年には色々と用が重なっていて。
あたしは母親と妹と、暫く家を出る事にした。
居候するのは、母親の実家。
母親の兄弟はみんな学校の先生で、家庭教師代わりをしてくれた。

あたしは典型的な自然児だと、自分では思ってた。
夕立ちの雷と雨、月、闇、庭、森、そういうのがとても好き。
夕立ちが来たら外に出て、雨の中で遊ぶのが好き。
夏の夜は蒸し暑かったけれど、大概は晴れて月が綺麗だった。
皆が眠った頃、あたしは縁側に出て、月と暗い庭を毎日見ていた。
深い藍色の奥は沈むほど静かで、鉄塔と外灯の間に、決まって大きな月が出てた。
静かなのに何故か耳は騒がしくて、鉄の叩く音がするの。
そうすると無性に寂しくなって、泣けない。
本当に何処かが不安定な夏だった。
小さい頃の思い出も、大きくなってからの思い出も。
その縁側には染み付いていた所為かも知れないけれど。
今は、ひとりだと思った。
忘れられない日々だった。

そんな下らない情景が重なるの。
あたしは結局、受験をやめた。



My追加
 << 足跡  すべて  糸 >>



由弥 [御手紙]