⊂悪い夢⊃
2002年07月27日(土)

寝れば恐い夢。
何時も恐い夢ばかり。

夕べみた恐い夢。
あたしがじいちゃんを殺した夢。
事故を起こして、じいちゃん死んだ。
あたしが殺したの憶えてる。
あたしが殺した、そればかり未だに繰り返す。

じいちゃんの死んだ日、今でも鮮明に思い出せる。
暖かい春の初めの早朝、夢の奥で聞こえる電話の音。
ひとつだけ開いていた雨戸。
そつない話し声のあと、お母さんの階段を駆け上る足音。
珍しく、妹よりあたしの方が先に起こされた日。
それだけで本当は満足だった。
そして、叱られても言い返せなかった哀しさ。
億劫に起き上がった時の布団の裾の皺、にぶい朝の光り。
味の無いピザトーストの匂い、慰めに過ぎないテレビの声。
急いだように支度を済ませるまでの、長い長い朝の日。
音無。

お葬式で泣かない代わりに、握りしめていた右手。
誰も気付いてはいなかった、ささやかな強がり。
暗い闇の中で閉じ込めた、思い出が溢れた。
そしてじいちゃんが死んだ現実を、未だ受け入れない躯。
だって在るもの。
いつも、階段を下りて。
庭に向かう砂利の上。
擦れ切った声で、生きていた。
あたしは、じいちゃんを殺したのはあたしだと云われた時。
無意識だった反面、其れに納得していたから。
忘れて仕舞う事に、封印された言葉に。
出口を見失って、予感と共に真実に成りかける。

恐い夢。
何が恐かったのだろう。
息が出来ないほど泣くくらい。
振り解ききれない夢だった。



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由弥 [御手紙]