眠れなかった。 恐かったから。 死ぬ事が恐かったから。 眠らなかった。
目を閉じると、息が止まって仕舞う気がする。 真っ暗になった瞬間が、最後の思い出のような気がする。 臆病なひとだ、あたし。 朝、テレビ観て。 うたうたいのひと達の、逞しい声を聴いた。 羨ましくて少し、元気になれた。 うたいたい。
一晩中、窓を開けてベランダに居た。 涼しい風がまるで秋みたいで、秋になったらどうなるのかと不安になった。 夏が終わって秋になる時、どれだけの思い出が押し寄せるだろう。 体中が痣になりそうな摩擦で。 息も出来ずにもがきそう。 夏は始まったばかり。 思い出は大切だけど、どうも上手く思い出にし切れなくて。 釣り針に掛かったように、脳味噌が引き千切れる。
今日帰ったら、友達に会える。 毎日、夕立ちが来る場所。 頭がおかしくなるほど静かで。 鼓膜の裏に、蝉が卵を産む。 誰も居ない毎日。
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