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はじめてのおつかい
どちらがはじめてのおつかいだったかは忘れてしまったが、印象に残っているのはふたつ。
ひとつは近所の八百屋さんに、ぶどうを買いに行ったこと。若いお兄さんが売っていたのだが、ぼうっとしていたら、「何買うの?」と聞いてくれた。ぶどうを買いにきたのだと答えると、「お嬢ちゃん、これおいしいよ」と、並んでいるうちのひとつを包んでくれた。いい人だなーと思って、家に帰り母に渡すと、「どうしてこんな半分駄目になってるようなのを買って来たの」と怒られた。上のほうは綺麗だったので気付かなかったが、下のほうは熟しすぎていたらしい。嬉しい、と思ったぶんとても悲しかった。
もうひとつは、近所のスーパーに、冷凍の枝豆(か空豆)と、ブイヨンとか調味料とかを頼まれたときだ。マメはずぐに見つかったのだが、ブイヨンだか調味料だかは、教わった位置にない。たまたま展示がえをしていたらしく、人に聞いてやっとみつけ、帰った頃にはだいぶ時間がたっていた。「なんですこしの買い物にこんなに時間がかかるの」と怒られたが、説明とともに商品をわたし、また怒られた。「マメが、とけちゃってるじゃないのー!」ああ、いわれてみればそうかも。母は仕方なくマメを調理しはじめた。
だから、というわけでもなく(大きくなっていくにつれ「家事より勉強しなさい」と言われるようになり)、だんだんそういったことはしなくなっていたが。現在主婦になり、ときどき買い物をするようになっても、あまりこころ楽しくない。幸い一人暮らしもしていた夫が、そういう家事だの生活だのを得意としているひとなので、大きな買い物は週末にしてくれて、なんとかなっているけれど。
いまだにわたしは、ひとりで買い物をしているとき、とても心細い、不安な気持ちになることがある。コンビニとかは恐くないんだけどね。
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