stray notes

氷砂糖

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この日になると思い出す
2002年05月02日(木)

数年前自殺した、某バンドのギタリストが大好きだった。過去形にするのは変かもしれない、今でも大好きだから。追いかけていたのは、大学に入ってからのこと。コンサートに行った。ファンクラブに入った。CDを買った。VIDEOを買った。彼について書かれた本を読んだ。雑誌を集めた。写真集を買った。グッズを買った。多分、精神的にも肉体的にも、他の人にそれだけの情熱を注ぐことはないと思う。彼は特別。ずっと好き。

彼の中で一番好きだったのは、狂気をはらんだような瞳。作る音楽。でも、知ってる範囲で全てが好きだった。髪の毛からつま先まで全て。インタビューで話してたことも、他の人が彼について話していたことも、どれも。直接知ってるわけではないけれど、大事だった。

あの年のGW、彼氏と別のバンドのVIDEOを見ていて、再生を停止したらニュースで流れていた彼。ひとを驚かすことが好きな人だったから、悪い冗談かと思ってしまった。ニュースを見て、わたしが早まったことをしないかと、昔の友人から電話がかかってきた。

葬儀の日、会社で「(行かなくて)いいの?」と聞かれながら仕事をした。よく考えると泣いてもいなかった。あの世まで追いかけて会えるなら、とはぼんやり思った。でも、できなかった。現世に多少の未練もあったし、逝って必ず会えるとも信じきれなかったから。それに何より彼の残した音楽が、まだ世に出る可能性があったから。

3枚目のアルバムがでたとき、嬉しかったけど、悲しかった。彼の手で完成させてほしかったと思い、残されたメンバーの努力を思い、これで最後だと思い、歌わなくてもこの世のどこかで生きててほしかったとも思った。よくできていると思うし、今でも大好きなのに、聞くのが最初はつらかった。彼が外国で作った、全て英語のアルバムもよかった。トリビュート版も、悪くはなかった。彼が話していた洋楽のロックもすこし聴いた。

それでもどこか悲しかった。こころのなかの、彼がいた部分は、持っていかれて戻ってこない。他の人では埋められない。一生、痛みと空白をひきずっていくのだと思う。彼の死の真相はわからないけれど、本人が自分を殺したかったならしかたがないのかな、と思う。だって彼がまだ死にたくないのに死んでしまった、というのは悲しすぎるもの。

このまま生き長らえていったら、わたしもいつか彼の年齢を越えてしまうんだな..



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