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勧誘の電話(旧コラムより)
昔、弟の受験期のこと。学習塾やら通信添削やら家庭教師やら、そういった関係の勧誘の電話がたくさんあった。母はそれらを全て適当に断っていたのだが、ある日連続で同系列の電話がかかってきた。母はもううんざり、というかげんなり、というかな調子で断った。
その、受話器を置いてすぐ。もう一度電話がかかってきて、とると先ほど断られた男が「あんた何様だと思ってんの?!」と怒鳴りだし、そばにいたわたしにもわかるほど大きな声で喚いていた。どのあたりで母が電話を切ったか覚えていないのだが、切ってからふたりで「こわかったねぇー」と話し合った。
とても神経質そうな、ぴりぴりした男の人の声だった。その仕事に彼も疲れていたのかもしれない。断られすぎてノルマもはたせなくて余裕が無かったのかもしれない。そこにこちらの態度が癇に障ったのだろう。に、しても。そこまで怒らなくても..と思う。
あれからエステの勧誘とか、家事の代行の勧誘とか、いろいろな電話を受けた。断ると、こちらを馬鹿にしたようなことを言い出す中年女性もいる。しかし、あれよりはましかな、と時々思い出す。少子化をたどる今、あの電話の彼はまだ、同じ仕事をしているのだろうか。
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