男の朝の儀式
降り注ぐ朝日の中、熱いシャワーを浴び、体を起こす。 ジャクソンブラウンなんか聞きながら、シャボンを顔に塗り髭をあたる。 熱めのコーヒーを胃に流し込みながら新聞を読み、今日着るスーツを選び、タイをキリッと締め、車へ。 というと、なんだか様になっているが、実際の髭剃りはこうはいかない。
そもそも髭を最初にそったのはいつだったか。 中学生の頃、おやじのマネをして、石けんをこすり、大人の気分に浸ったことがあったっけなぁ。もっとも、まだ、ろくに生えてもいない髭には、T字型の髭剃りでは、剃れずに、「貝印」のカミソリだった。当時、制服のスカートをチンタラ引きづった、同級生の女の子が持っていたような。ん?
いつ頃からか、毎日剃らねばならなくなった私の髭。私はどうもシェーバーが苦手である。 朝の車の中で、髭を剃っている人をよく見かけるが、あれができれば、どんなにいいだろうと思うこともなくはない。 だが、シェーバーは上手く剃れないのである。もっとも、カミソリでも上手いわけではない。というのも、私の髭は、散髪屋のおばちゃんに言わせると、袋ヒゲという種類になるらしい。うまく説明できないが、毛先が毛穴から完全に出ていないのである。 なら、剃る必要ないのでは?と思うなかれ。触るとしっかりゾリゾリしている。 これが、剃っても剃ってもなかなかツルツルにはならないばかりか、皮膚から血が噴出す。 散髪屋のおばちゃんはついに、この髭を目の敵にして、いつの頃からか髪を切ったときも、私の髭を剃っては、くれなくなった。(その分散髪代を300円引いてくれる) しかし、髭の主である私は、剃らないわけに行かないので、毎日2枚刃のT字カミソリでジョリジョリやる。これが、結構時間がかかるし痛い。毎日、顔のどこがで出血している。 いつか、貧血になるのではないかなどと心配である。 暑い夏の朝でも、お湯は必須。まず、お湯で髭を暖めて柔らかくしなければならないからだ。それに顔から小さなマグマのように吹いてくる血のお陰で、髭剃り後10分はシャツが着れない。そのために、私の朝は、若いネエチャンのように時間がかかる。 アフターシェーブローションは必需品。だが、これも選択を誤ると結構しみる。痛い。 今でこそなくなったが、冬の出張の時、朝、お湯の出ない旅館なんぞに泊まらされた日には、涙ものであった。そんなこんなで、日曜日、長期の休みの間は、私は肌を休めるため髭を剃らないことにしている。こんなに苦労しているのだが、日曜日にしか会わない人にとって、私は、無精ひげの人で通っているらしい。
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