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バスの中で。 70歳前後の女性が三人、近所の様子などを話していた。
その方達がおりる時 すぐ横に座っていた、これまた70歳前後の男性が一緒に降り 降り際に、何か言った。 大きな声で何か言ったが、滑舌が悪く 何を言ったのかはわからなかった。 が。 一言だけ、はっきり聞こえた。
「ばばあ」
その言葉に反応した、先の三人連れの一人が振り返り 「え?」と顔をしかめた。
その頃には、すでに4人ともバスを降りていたのだが 時間調整とやらで、バスが扉を開けたまま止まっていたおかげで ことの顛末が一部始終見て取れた。
どうやら、男性は「うるさい」と言いたかったらしい。
「ばばあ」に反応した女性が 「『ばばあ』って言ったって、おまえだって『じじい』じゃないか」と言い返す。 「何を!くそばばあ!ばかやろう!」と男性。
大した言葉も交わさぬうちに「ばばあ」「じじい」の応酬となり 最後には、それぞれが違う方角に歩き出していたにも関わらず 振り返りながら、大声で 「ばばあ!!!」 「じじい!!!」 と言い合っていた。
お年寄りは子どもに還るとは言うが どう見ても大人にしか見えない男性と女性が 大声で捨て台詞を吐き合う様は、ひどく滑稽であり悲しくもあった。
そんなやり取りを バスに乗っていたすべての人が気づいていたはずなのに 誰も、笑いもしなければ、何かを言ったりもしない。 「ばばあ!」も「じじい!」も聞こえないかのように 前を向いて座っているだけだ。 いかにもありがちではあるが その雰囲気が、何だかとても異常な気がした。
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