負けないように、強く。歩き続けられる強さを。
どこへ だれと みらいへ きみと

 

 

 
oOO 事故
2005年11月30日(水)

今日は午前中から学科教習で、2時間ほど受けてきました。
免許をお持ちの方はご存知であろう「事故の悲惨さ」の項目です。

「朝からテンションの下がる講義で申し訳ない。
 私もこの学科をするのは相当の体力と覚悟がいる、そんな話です」

以下、ちょっと事故とかグロいのとか苦手な人は読まないほうが
いいと思われマス。
この気分の悪さを伝染させたくはないのですが、
自分が覚えておくために書いておきたいので、
深呼吸を一つして今日の日記を始めようと思います。












教官の先生(42?)がしてくれたのは、
16の時に目の前で失った自分の友達の話と、
17の時に自身が遭った事故の話。



どちらも本当に辛かった。



特に友達の話は、26年前の事件であるにも関わらず、
ここ2,3年でようやくこうやって話せるようになったそうです。
聞いていて俯いてしまいそうになるのを、必死で顔を上げ
続けました。
目の前でトラックに巻き込まれ、タイヤで頭を踏まれて死亡した友達。
3ヶ月ほどは現場に行くたびに自分が壊れそうになり、
現場検証にも立ち会えなかったこと。
そしてこの間、自分の子供が彼と同じ年になっていることに
気付いてうけた衝撃。

「人間て、あんなに血が出るのかと思いましたね。
 今でも眼に焼きついて、離れない」



自分が撥ねられて半年ほど入院&リハビリした話も、
相手の人の様子が痛々しすぎて、自分の痛みが生々しすぎて、
どうしてあんな穏やかな顔で話せるのだろうと思った。

「死んだほうがマシだ、生きていくのには何て力が必要なのだろう
 と毎日考えていました」

「入院してた5ヶ月、相手のお姉さんが毎日毎日来て泣くんですよ。
 25年経った今でも付き合いがありますが、彼女は未だにそのこと
 を言って自分を責める。
 体の傷は治れば忘れられますが、心の傷は一生です」

「決して、生徒さんの誰ひとりにも、あんな思いをしてほしくはない」



そしてラスト15分のビデオ。

内容は、ニュースの事故映像よりもうちょっとナマの現場に近い
シーン・・・救急隊員が必死に働いていたり、被害者のうめき声・
叫び声がリアルに収容されているような、
つまりそういうもの。




だけど、私の心に残ったのは、
事故映像が流れている間の先生の様子だった。

椅子に座ってうなだれ、
前に突き出した両手の握りこぶしが額につきそうなほど
深く頭を垂れ、じっと目をつむったまま、
ビデオが終わるまで微動だにしなかった。

きっと黙祷しているのだろう。
確信めいたものが頭をよぎった。

ビデオの内容もそうそう目を離せるものではなかったが、
彼の厳しい横顔が普段のよく笑うそれと余りに違いすぎて、
心臓を冷たい手で掴まれたような気持ちになった。





そして、学科が終わり。
普通ならば、教官は教官室に、生徒は階段へと出て行く。

けれど今日は違った。
なんと笑顔の教官が教室の外におり、
生徒ひとりひとりに「ごくろうさん」と声をかけているのだ。

なんて強い心の人だろう、と思った。

なんだろう、なんでこんなに感動したんだろう。
ごくろうさん、って、ただ一つの言葉がどうしてこんなに
胸を打ったのだろう。




「事故しないようにしよう」とか「安全運転大事だね」とか
そんなものはスキーでだって同じだし、いまさら覚悟しなおす
ものでもない。

彼がどんな思いで教習所の教官になったのかなんて
推し測るべくもないが。
ただ、いつも笑顔で私たちに安全を促すあの教官の心の強さが眩しかった。


   
現在 今まで
 

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