縁切り神社 - 2002年08月22日(木) 田口ランディ氏の恋愛小説集。 文庫オリジナルらしいので、知らなかった人も多いかもしれない。 「縁切り神社」とは題名でもあるし、12の話のうちのひとつでもある。 それぞれ、なかなか興味深い文章が並んでいると思う。 僕にとっては彼女の文章も読みやすくて、 あっという間に読み終えてしまった。 12の話の中に「島の思い出」という話がある。 すこし抜粋してみたいと思う。 父と母は、なんのために私を産んだのだろう。 きっと何も考えていなかったのだ。 だとしたら私はなんのために生まれてきたのだろう。 いつか父や母のように死んでいくのに、 その死に向かってなぜ人は生きていかなければならないのだろう。 何を伝え、何を残すために生きていくのだろう。 伝えるべきもの、残すべきものが、この世界に本当にあるんだろうか。 決意しないととても母親の元になんて帰れなかった。 母は退院して家に帰りたいと言っている。 家で死にたいと言っている。 その母を見捨てることなんてできない。 でも、ずっと病気の母と二人きりの生活なんて、 私には耐えられないって思った。 母は、病気のせいで頭が少し変なの。 ひどく口汚くて、猜疑心が強くなって、ひどいことを平気で言うのよ。 でも、それでも私の母だもの。 同じ血が流れた唯一の人間なんだもの。 だから、私は一度死んだんだって思うことにした。 そうすれば諦められる。 前の私は父親といっしょに一度死んだんだ。 母といっしょにいる私は死んだ私なんだって。 そうやって、全部捨てないと、決意できない。 全部捨てないとダメになっちゃう。 どうして人間は、せっぱつまると一か八かの決断しかできなくなるんだろう。 いくつもの方法があるはずなのに、あるに決まっているのに。 でも、今この瞬間がものすごく苦しいと、別の道を探す余裕がもてないのだ。 苦しみだけが永遠に続くように錯覚してしまう。 第三の方法を求めてさまようくらいなら、 白か黒かはっきりさせて、自分を殺してでもこの現状から逃げたいと思う。 でも、そういう決断は、自分にとっても家族にとっても、いい結果を生まない。 みんながお互いの首を絞めあうのだ。 わかっているけど、いつ果てるともない心の悩みを生きることが、 できなくなるときが人にはある。 「あなたのために、私は恋人とも別れたのだ、仕事も辞めたのだ」 そう母に無言で言い続けてきたように思えた。 まるで母に当てつけるために私は自分の人生のいろんなものを捨てたのだ。 その恨みの力で、母と向きあってきた。 かなり長くなってしまいました。 今日はここで終わり。 ...
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