風の行方...深真珠

 

 

ここ2日間の日記は、まるで小説だ。 - 2002年10月25日(金)

読み返してみて、そう思った。
そして、今から「小説」の続きを書こうとしている。

僕の別れ話に彼女はあっさりと同意した。
「やっと言ってくれたのね。ありがとう!」
という気分だったのかもしれない。

それから2ヵ月後、僕は関東へ行くことにした。
表向きは違う理由だったが、これが彼女に会う最初で最後のチャンスだろうと思った。
なぜなら、彼女は就職しようとしていたからだ。
その前に会っておきたいと思った。
会っておくべきだと思った。

東京に行くと告げて、予定を合わせて会うことが出来た。
彼女は聞いていたよりもずっと細かった。
小さすぎたかなぁと思った(おもちゃの)指輪もスカスカだった。
何か欲しいと言われ、露天で指輪を買った。
中学生の女の子がつけるような安っぽく(本当に安いが)軽い指輪だった。
それを彼女は喜んでくれたし、
別れて2ヵ月後に初めて会ったときに持ってきてくれたのだ。
僕には理解しがたいことだった。

映画を見て、食事をして、公園で話をした。
とても寒かった。
白くて細すぎる彼女の手を握ると驚くくらい冷たかった。
そして、僕は汗ばんでいた。
汗ばんでいるのがバレないようにと思うたびに、汗は吹き出してきた。
もう暗かったが、親子連れの子供が遊んでいて、少し恥ずかしくて、
僕がしていたマフラーでその手を隠した。
「寒いでしょ」
というのは言い訳で、本当に恥ずかしかった。
そして、僕の手は余計に汗ばんだ。

あのときの、あの手の白さと細さと冷たさを今でも覚えている。
鮮明に感じることができる。
手を繋ぎながら、未だに僕は彼女のことが好きなんだと思った。
でも、今日で忘れるべきだと思った。
「これ以上ひっぱるべきじゃない。」

彼女が改札を抜けて歩いていくところを、僕はずっと見ていた。
彼女の姿が見えなくなった時、僕の中でひとつのことが終わったのだった。

冬の東京で、彼女と交わした会話のほんの少しも僕は覚えていない。


...




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