風の行方...深真珠

 

 

パズル2 - 2008年11月22日(土)

ある日、僕はパズルを学校へ持っていったことがある。
パズルをしたくてウズウズしていた。
前日の夜はパズルをするはずだったのに、なぜか気づいたら寝てしまっていて、結局封を切ることすらできなかった。
朝、どうしようか迷ったあげく、学校に持っていくことにした。
箱自体はそんなに大きなものではない。

授業中も、バックの中にあるパズルのことが気になって仕方が無い。
僕は、バックの中のパズルの1ピース1ピースについて考えてみる。
一つの作品の中で、何千とあるパズルピースの中で、一つのピースの凹凸に完璧に当てはまるピースは一つしかない。
もっと正確にいえば、ピースにある4つの凹凸の中の一つに対して、他のあるピースの凹凸の1つしか当てはまらない。

僕にとってこのことは、奇跡のように思えた。
まさにこれこそが巡り会いだと思えた。
きっと、1つ1つのピースは、自分に合うピースを求めているのだろう。
僕もそんな風に、「この人しかいない」といえる出会いができるのだろうか。
僕の妄想は次第に、現実的になっていった。

そのときチャイムが鳴って、昼休みになった。
ご飯を速攻で食べ終え、僕はバックからパズルの箱を取り出す。
まだビニールで包まれている箱を僕はじっと見つめる。
中のピース達のざわめきを感じることができる。
思わずここでやりたくなるが、ぐっと堪える。
目をつぶってぐっと我慢する。
でも我慢できる訳が無い。
ビニールを破くだけならいいんじゃないかと妥協する。
そうでもしないと、ピース達の興奮を抑えれそうにない。
ピース達は、早く運命の相手と出会いたがっている。

僕はついにビニールを静かに破く。
破れたところから、熱気が溢れ出てくる。
それでも僕はあくまで冷静でいようと思う。
ゆっくり席を立ち、ゴミ箱へビニールを捨てにいく。
ビニールを捨て、振り返ると、机の上に置かれた箱をじっと眺めるクラスメイトがいる。
今にも手を触れそうな感じに見える。
僕は慌てて席に戻って、箱を確保した。

「◯◯ってパズル好きなの?」クラスメイトが尋ねてきた。
僕は曖昧な返事を返す。
「ちょっと開けて見せてよ。」
僕は驚く。(コイツは何を言っているんだ)
そのクラスメイトとは特に仲がいいというわけではない。
僕より成績は下だ。
僕はどちらかというと、彼を少し軽蔑していた。

そのクラスメイトはしつこく言い寄ってくる。
僕は(嫌だ)という空気を出し続けた。
それでも彼は言い寄ってくる。
自分の中に早く開けたい気持ちもあったせいか、結局は僕が根負けして開けることになった。

僕は箱を開け、ピースを机の上にすべて置いた。
今回のパズルはピース自体が小さいやつなので、ピース数が多い割に場所はとらない。
十分机の上に置けた。
そして、いつも家でやっているように(しかるべき方法をなぞるように)
まずは一辺か二辺は直線になっているやつを選び分けようとした。
10ピースほど選んだとき、そのクラスメイトが突然
「何やってるの?」と聞いていた。
僕はその質問の趣旨がわからなかった。
きょとんとしている僕を横目に、彼はピースを1つ拾い上げてはしばらくまじまじと見て、
何か納得がいったような顔をすると、また違うピースを拾い上げ、まじまじと見ていた。
それを何ピースか繰り返すと、今度は箱に書かれている完成図を15秒ほど見つめ、
「なるほどね」
とつぶやいた。
僕はそんな彼のしぐさや態度をじっと見ていた。
彼が今から何をしようとしているのかまったくわからなかったのだ。

すると彼は
「ちょっとやってみていい?」
とイスに座っていた僕を強引に押しのけ、自分が座った。
そして、ピースを一つ持って机のあるところにおもむろに置いた。
すると、また次のピースを持ち、今度は前と全然違うところにピースを置きはじめた。
彼はその作業を繰り返す。
僕はしばらく、彼が何をしているのかまったくわからなかった。
でも、50ピースほどおかれたところでやっと気づいた。
彼はすでにパズルを作っていたのだった。
しかも、直線を選り分けることも無く、同じ柄をあわせようともしていない。
そのとき偶然に持ったピースを、そのピースがあるべきところに確実に置いていっていたのだ。
だいたい50ピースを置くまで、彼はほどんど迷わなかった。
ときどき、数秒止まることはあったが、ほとんど一定のペースで置き続けた。
もちろん、置いている場所は的確だった。

彼のその行為は僕にとって、これ以上無い衝撃だった。
僕は猛烈に泣きたい気持ちをぐっと堪えていた。




...




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