かめの日記

2002年10月08日(火) いきなりですけど加賀×今日子

Wordを整理してたら
以前、日記で触れてた加賀×今日子が出てきた!
コレ、頭の中では完結してますがこの先の文章化は
難しいかな〜とか思ってて・・・。
(まあ、コレはコレでENDでも良いんだけど。
 オチが無いッスね、このままじゃ)
本編で語られなかった、加賀の内面ってイメージで書いてました。
終わってないのに、しかも続きを書く可能性がほぼ無いのに
何故掲載するかっていうと、ある一文が自分で気に入ってるから!
うふふ、エゴイストなのです。
あ、タイトルはGLAYから。大好きな曲です。

例によって、必要は無いでしょうけど
無断転載、禁止。

ALL STANDARD IS YOU

ACT.1 
煌々ときらめく太陽にアスファルトが照らされ、
視界の向こう、遙か遠くに揺らめく蜃気楼。
鳴り響く、エンジンの轟音。巻き起こされる、熱風。
それにかき消されぬよう、懸命に発せられたスタッフの真剣な怒声の中。
目を醒ます、紫の車体。
誇り高く、凶暴な、あのマシン・・・・・・鳳牙。
加速・・・高速。流れる視界はやがて光に溶けて。
ある一点を超えた瞬間、唐突に突きつけられる、肉体の限界。
・・・ブラックアウト。
タイヤと路面との摩擦に、耐えきれず悲鳴のようにあがる火花。
幾度と無く駆け抜け、既に熟知しているはずのコースだというのに、
まるで出口のない螺旋を巡り続けているかのような、そんな錯覚。
マシンと自分、互いに相容れず、ねじ伏せようと繰り返される、格闘。
けれども交わることなく、主張は平行線を辿るばかり。
その消耗によって、混濁してゆく意識。
日が傾き、指が震え、オイルが無くなり、
強引に引きずり降ろされるまで・・・今日も。



圧倒されるほどの、まばゆい夕焼け。
心配するAOIのスタッフ達、そしてフィルやグレイを半ば無視するような形で強引に振り切り、加賀は一人、富士岡に残っていた。
ぽつんと、一つだけ長く伸びた自分の影が、いやに目に付く。
日中の熱い喧噪を徐々に失ってゆくテストコースは、どこか物悲しげで、加賀の一向に晴れない鬱な気分に拍車を掛ける。
乾いた唇をそのままに、ポケットから取り出した煙草に火を灯し、ため息とともに乱暴に肺から吐き出した。
通常なら、常にその場に居合わせていた人物が現れなくなってから、一体、何度目のテスト走行になるだろう。
「・・・ま、あったりまえの、事だよな」
彼女の思いを踏みにじって。そして、今もなお、踏みにじり続けているのだから。
つまり、そう言うことなのだ。鳳牙に・・・名雲のマシンに乗り続けるということは。
それでも、走り続けねばならない、止まることなど考えられない。
どうしても決着を付けたいという自分の、身勝手なこだわりの為に。
未だ、分かり合うことも、認め合うことも出来ては居ない・・・あのマシンで。
例え、それが彼女を泣かせても。

もうずいぶんと長い間、憔悴し、表情を曇らせている今日子の事を思いやると、心臓が痛くなる。
強気で、凛とした美女。けれどもどこか抜けていて、目が離せなくて・・・そこが思いがけず可愛くて。
誰もが認めていた「AOIの女王様」。
そんな姿は、今はすっかり影を潜めてしまっている。
視線を合わせようともせず、思い詰めたようにため息を繰り返し。・・・儚げで、今にも壊れてしまいそうで、見ていられない。
けれど、そうさせているのは、紛れもなく自分なのだという自覚はあった。
「・・・クッソ、何でだよ・・・」
決着を付けるために走り続けることには、なんの迷う理由も無い。
それによって、自分の体が例えどうなろうとも。命、さえも・・・本望だとすら、思う。
けれども、こんな風に今日子を追いつめてしまうのは、どうしようもなく不本意だった。


・・・あの日。舞い散る桜、春の風。
吹きこぼれる花びらの中、自分の前で、はらはらと大粒の涙を流した今日子。
その涙がたった一人、名雲のためだけのものだという事実に、息が詰まった。
奴は確かに今日子に傷を負わせたというのに。
目の前で流れる涙は、傷つけられた自分を悲しんだり、傷つけた名雲を責めたりする類のものでは決して無かった。
今日子はただ・・・名雲の悲しさを思って、静かに泣いていた。
まるで、泣くことの出来ない、彼の代わりにでも、泣いているかのように。
それはあまりに、美しくて。
桜の花びらを落としながら降りしきる・・・どこか優しい、春の雨を思わせるような、そんな涙で。
そして、強烈に、否応なく、自覚した。
この瞬間、今日子のなかの全てを占めている名雲に対してこみ上げて来る、目が眩む程の嫉妬と、そして。
・・・このまま抱きしめてしまいたいという欲望。
自分が、彼女を泣かせ、苦しめ・・・その思考を独占するものに憎悪とすら呼べる感情を持つのだと思い知らされた、あの日。
もう二度と、彼女をこんな風には泣かせないと。守りたいと心底、願ったというのに。


・・・今の自分が、今日子にしている仕打ちときたら。
「サイッテー・・・だよな、タチ悪すぎるぜ・・・」
それでも走っている間は、強引に頭の中からから追い出してしまえるのだが、ひとたび地に足が着くと、どうしようもなく責め苛まれるのだ。
その事実と・・・他ならぬ、自分自身に。
遣りきれなくなって、再び煙とともに深いため息を吐き出す。
今頃、彼女はどうしているだろう・・・何を思っているのだろう?
ひとつづきに繋がっている、この空の下で。

・・・・・・・心は、絶望的なほどに、遠く。


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岸本かめ [MAIL]

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