カウントシープ
index|past|will
去年のクリスマスに大きなテレビを買った。でも本当は相方にプレゼントするものは別のものを決めていた。プレゼントする予定だったのは、ヴァイオリンだった。
2年前、今の家に引っ越すときに、何か音楽を始めようかなと相方が言い出したので「ピアノにしたら?」と言った。相方は子供の頃にピアノを習っていたので軽い気持ちで言ったのだが、相方はさっと顔色を変えて「嫌だ」と言った。
そのときまでボクは、ピアノ・レッスンという世界の凄まじさを知らなかった。子供がやりたくなくても嗜みのひとつとしてやらなくてはならない時代だったのか?(ボクも同世代のはずだが)鬼と化した母親が傍に付いてのレッスン。発表会には子供のでき比べ・・・母親同士の水面下の競争がそこには見え隠れするドロドロの世界。
ボクはそれ以来、相方にピアノを弾いてみてとは言わないことにした。そして、ヴァイオリンを買ってあげようと思ったのだ。だがボク達の人生において、今までヴァイオリンに触れる機会など皆無。そもそもボク達にヴァイオリンが弾けるのか・・・?そうこう考えているうちにクリスマスは来てしまい、ヴァイオリンはテレビに化けた。
相方が入院しているとき、ヴァイオリンを買ってあげようと決めた。手術が終わって落ち着いた頃には、ヴァイオリンの動きもリハビリになるだろうし、何かに一生懸命になることは、きっと生きる力を増幅するだろうと思った。音が免疫細胞を増やしてくれるかもしれない。殆ど藁にもすがるような気持ちだった頃、そんなことを考えた。
主治医の先生に相談したら、是非と薦めてくれた。こうしてボク達のヴァイオリンの旅が始まった。
ロビン
|