カウントシープ
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2005年04月16日(土) |
賑やかなサルとウサギ |
子供の頃、ボクの家(正確には親の職場)は、オモチャ屋の2階にあった。ボクは学校から帰るときにはその職場に帰り、親の仕事が終わるまでそこで過ごして、夜の8時や9時になるとバスに乗って自宅に戻った。
オモチャ屋の入り口にはいつも、2つのヌイグルミが並んでいた。ひとつはピンクのウサギで、口には笛、手には太鼓を持っていた。もうひとつはサルで、口には笛、手にはシンバルのおなじみのやつだ。兵隊帽子に紅いチョッキを着て、どちらも往来の埃に少し汚れながらも毎日せっせと働いていた、すこしセツナイ2匹だった。
子供の頃のボクはこの2匹がなぜか嫌いだった。どちらもそんなに好きじゃないけれど、ウサギのほうが余計に嫌いで、サルはそれよりマシだった。職場が近づいてくると、ボクは小走りになって、なるべく音を聞かないようにして階段を駆け上がる。とくに、笛の音が聞きたくないから、シンバルを叩いている間を見計らって、ドアに飛び込むのだ。
一体ウサギの笛の何が嫌だったのか、わからない。子供の頃に聞かされた、夜に聞く笛の音は悪魔を呼ぶ…が原因かもしれないし、音が嫌いだっただけかもしれない。その頃のボクには、聞いてはいけない音や、見てはいけないものや、嗅いではいけない匂いが沢山あったから、そんなに特別な“嫌”じゃないけれど、もうオモチャ屋もなくなってしまったから、小走りで逃げる必要もなくなった。
ロビン
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