カウントシープ
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2005年06月12日(日) 橋の上の女の子

ずっと忘れない橋がある。

小さな頃、ボクは他所の家に預けられていて、その家のおばさんが、半分ボクの母親代わりだった。その時代のボクの思い出は、実の両親よりはそのおばさんたちと過ごした思い出が大半だ。
そのおばさんと、時々バスに乗った。田舎なので、バスに乗る時間も長かったが、いつも通る道は、大きな川と併走していた。

川には所々橋が架かっていたが、その中のひとつの橋は、両岸に橋らしきものが作ってあるのに、真ん中には何も掛かっていなかった。まるで真ん中だけ抜け落ちた橋だ。
ある日おばさんが、その橋にまつわる話をしてくれた。その内容は、

「ある大雨の日、1人の女の子が橋を渡ろうとした。端の向こうには女の子の家があり、家では母親が待っていた。
女の子が橋の中央まで歩いたところで、増水した川の水に橋が流された。音に驚いた母親が家から出たところで、娘が流されていくところを目撃したが、なす術もなく、数日後娘は遺体となって返ってきた。橋はそれから掛け直されず、残った部分も取り壊されることないままになっている、それがその橋だ」

それ以来ボクはその橋を必ず見るようになった。見ないといけない気持ちになったのだ。そして、その橋の中央に傘をさした女の子と、彼女を待っている母親を想像した。

今もうそのお母さんが亡くなっていたとしたら、母子は天国で再会できただろうか。


ロビン