読書日記

2001年10月20日(土) 佐伯泰英の新作に驚く、しかし・・・光瀬龍を読む。

 ハルキ文庫に佐伯泰英の新刊がでていて、驚く。が、よく調べてみると「瑠璃の寺」の改題文庫版。11月12月続けて文庫の書き下ろし新刊が出るのは、ケイブンシャ文庫によって知っていたのでかえって驚いたらしい。
光瀬龍「秘伝・宮本武蔵(下巻)」(徳間文庫1982.7)読了。いわゆる剣豪ものと歴史ものを融合して伝奇ものを加味した時代小説である。主人公を扱う視点が明瞭でなく、つまり宮本武蔵、佐々木小次郎、申、松山主水、柳生一族、真田幸村、服部半蔵のいずれでもなく歴史そのものが主人公というべき物語となっている。読み手の感情移入がしずらかったり、はぐらかされたりするのは、作者の意図である。娯楽的な時代小説とは根本から異なる作品なのである。しかし、最初からそういう意図で書き始めたかどうかは疑問で、途中から作者の関心が標準的な時代小説を書くことから大きく離れていったような気もする。
 佐伯泰英や鳥羽亮を読んでいる眼で見ると首尾一貫していないので、安心して物語の展開を楽しむことがアホに思えるスリリングな作品とも言える。
 中村真一郎「小さな噴水の思い出」(筑摩書房)の第4章の題は「九〇年読書五点」で五冊の本を取り上げている。どれも海外(パリと中国)で刊行されたもので原書である。近代文学に対する解毒剤として精神衛生上いいそうである。また、毎日、一冊必ず未見の本を開く習慣を強情に守っていると最後に述べている。
 第5章は「九〇年、私のベスト3」これは早川書房のミステリマガジンのアンケートへの回答。クレイグ・ライス「死体は散歩する」キャロライン・グレアム「闇の告発」ウンベルト・エーコ「薔薇の名前」これらを本当に読んだのだろうか。少し疑った。
 最近購入した本は以下のとおり。
ヴァン・ダイン「ベンスン殺人事件」(創元推理文庫)
鳥羽亮「穏猿の剣」(講談社文庫)
鳥羽亮「剣客同心・鬼隼人」(ハルキ文庫)
 


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