| 2001年11月09日(金) |
ベニオフ「25時」(新潮文庫)は驚愕の現代的寓話。「異風者(いひゅもん)」は佐伯泰英的江戸年代記の誕生を告げる。 |
ベニオフ「25時」(新潮文庫)は驚愕の現代的寓話。「異風者(いひゅもん)」は佐伯泰英的江戸年代記の誕生を告げる。 まず、「25時」のことから。淡々と主な人物たちの言動が語られていく物語は、結構疲れる。はっとする挿話もある代わりに退屈するものもある。救いは主人公の愛犬ドイルが登場する時と中学校か高校の教師ジェイコブズの場面。終盤になって主人公の持ち時間が限界に近づき始める頃からどういうふうに終わるのかという興味から読みに集中力がついて物語の輪郭がはっきりと見えてくる。そして結末。最後の方のひとまとりの文章を心地よい語りに耳を澄ませるようにして集中して読み続け、読み終わる。読み終わるときつねにばかされた気分になり、しばらくしてもう一度最後のところを読み直した。そして、また読み直した。信じられない結末のつけ方だった。そこに確かに快感はあった。 それにしても「全米が瞠目した」はないだろう。「輝ける青春小説」もわからない。ある意味これは老人小説なのだし。 正直、翻訳物は読みにくい。同じ日本語なのにすっと頭に入ってこない。こちらが馬鹿なのだ、と言われそうではある。 今日、佐伯泰英の新作がでた。「妖怪狩り」である。次は何を「狩る」のかと期待していたが「妖怪」だった。大物中の大物の登場を予想して楽しみだ。 で、去年の作品「異風者(いひゅもん)」を口直しに読んでみた。題名で損しているが、他の作品に劣らぬ傑作である。60ページまでで既に冒険小説であり、西部劇風であり、剣豪ものであり、と炸裂につぐ炸裂で勢いが凄い。 京都の小電気街にある小さな古本屋で買ってもう1カ月。このブランクを悔やませる大傑作の予感がする。開巻時代は明治であった。 佐伯的江戸年代記はすでに18世紀19世紀を網羅していた。
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