| 2001年12月18日(火) |
ディック・フランシス作菊池光訳「黄金」(早川書房)はやはり面白い。 |
ディック・フランシス作菊池光訳「黄金」(早川書房)はやはり面白い。1993年の文庫版(ハヤカワ・ミステリ文庫)がこれなので一度目はその何年か前の単行本で読んだことになる。その時に大いに面白かったので文庫版になった時に一種の懐かしさから購入した。一度読んだものをもう一度、ということにはなかなかならない。で、2001年の末になった。10冊ほど積み上げた中ほどにはさまったままいつからそうなっていたかわからないぐらいの日々が過ぎた今日なぜか抜き出して手にとった。今日は「ゼノサイド」の続きを読むはずだった。 面白い本は野暮用を蹴飛ばす。教師の目を気にしながら机の下に隠して本を読む学生のように野暮用を意識しながらも読むのをやめるのは難しかった。 結局、一気に76ページ読んでしまった。 本当に面白い本は言い訳を許さない。浮気をさせない。 久しぶりに読み始めた「黄金」は時間を忘れさせた。 現実離れした大金持ちの父親とアマチュアの騎手をしている息子(主人公)がかつて断裂した親子の信頼関係を修復していくというのが物語の核だが、普通小説ではないのでスリルとサスペンスで存分に味付けされている。例によって主人公の一人称による語りが読み手を物語に引き込んでいく。この洒落た感じでやや思索的なおもむきの語り口は妙にこちらの気持ちをくすぐる。 「私は父の五番目の妻を心底から嫌っていたが、殺すことを考えるほどではなかった。」これは一番最初の文章。ディック・フランシスは冒頭から核心に入るのだ。相当きざな書き出しである。 しかし、読み手は変なところで興味関心を抱く。かつては犬を飼っていなかったので「ペンブロゥク」という主人公の名字には何の感興も湧かなかった。しかし、今は、違う。ウエルッシュ・コーギー・ペンブロゥクを連想して何かしらうれしくなる。「犬」と書いてあるだけでも気がひかれるのと同じだ。 そんなこんなで小一時間読み続けた。反動はその後来た。 まあいいか、という感じである。
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