読書日記

2003年01月07日(火) 山田太一『彌太郎さんの話』(新潮社)をやっと読んだ。

山田太一『彌太郎さんの話』(新潮社 2002年3月15日発行 1600円 277P)
こういう不思議な魅力を持った人物は現代では存在しないのではないか。戦前、戦中、戦後直後までは隣近所に一人くらいはいたような人間としての色気を備えた人物が今はいないような気がする。
ちょっとやくざで気っ風がよくて話し上手な兄貴分的な人物の代表選手としてこの話の「彌太郎さん」が登場して、今の日本にこんな人間はいなくなったと語って消えたという感じ。

初出はすべて「小説新潮」で平成11年7月号から平成13年10月号まで8回に渡って掲載された。
順番に「彌太郎さんの話」「二十七人」「銀龍」「小さな夜祭」「一歩前」「八億四千」「思い出がない」「天国の周辺」の八編からなる。

こんな怖い空想小説を書くことのできる山田太一はただものではない。オリジナリティのおいて一番。

これは映画化すべき小説である。だれが適任か思いつかない作品こそ映画化すべきだ。
うまく作れば観客は喜怒哀楽プラス恐怖の世界で右往左往するにちがいない。怖いわい。

 本日入手(大袈裟!)の本。
大江健三郎『取り替え子(チェンジリング)』(新潮社 1900円)
エドワード・ケアリー(訳=古屋美登里)『望楼館追想』(文藝春秋 2571円)
舞城王太郎『熊の場所』(講談社 1600円)
三津田信三『作者不詳(ミステリ作家の読む本)』(講談社ノベルス 1500円)
飯島耕一『暗殺百美人』(学習研究社 1600円)
飯島耕一『小説平賀源内』(砂子屋書房 3000円)
嵐山光三郎『美妙、消えた。』(朝日新聞社 1800円)
伊坂幸太郎『ラッシュライフ』(新潮社 1700円)
阿部謹也『学問と「世間」』(岩波新書 680円)
アントニイ・バークリー(訳=藤村裕美)『ウィッチフォード毒殺事件』(晶文社 2000円)
高橋克彦『火怨(北の燿星アテルイ)上』(講談社 1800円)


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