2003年01月24日(金) |
大江健三郎『取り替え子(チェンジリング)』(講談社) |
大江健三郎『取り替え子(チェンジリング)』(講談社 2000年12月5日 第1刷発行 1900円 342P) 大江健三郎が久々に一気に読める小説を書いた。もともとエッセイや評論的な文章はきちっとしていて読みやすく面白かったがいざ小説に向かうと妙に難渋な感じがして読み続けるのが苦痛で挫折が多かった。 それは私の修行不足。大江健三郎が文章に刻みつけた思いやイメージはなまじっかの覚悟では読み解けないようにできている。 今回この作品を読んでそう思った。 一気に一度読んでおいて、後でまた全8章を1章ごとにじっくり読み直す。 ある意味モデル小説でとっかかりがよさそうだが、主人公の気持ちからか徐々に息苦しくなっていく。それを救うのが主人公の妻や息子の存在である。その話題のページや文章は私たち読者の救済となっている。 大江健三郎健在の一冊。
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