川底を流れる小石のように。  〜番外編〜  海老蔵への道!
もくじを見てみるひとつ前現在に近づいてプチ画像日記


2004年02月28日(土) 眠り王

 正式タイトルは
 「TEPCO・一万人コンサート15th 新かぐや姫伝説 世界劇 眠り王 ー愛とまごころの約束ー 」
 チケットは葉書の抽選ということだったので、せっせと頑張った。
 
 作・作詩・演出・芸術総監督 なかにし礼

 先日みた旅番組で、なかにし礼ご夫妻が京都を旅しており、
 未だにとてもダンディーで、さぞモテルのだろうなーと思われる氏と、
 チャーミングで綺麗な奥様との間で、
 スパイシーな会話がなされているのを、好ましく思った。
 長年連れ添った夫婦だというのに、
 やんちゃなご主人のおかげで、さぞ泣かされたことも多かったろうに、
 そんな大波小波(?)もなんのそので、今の二人があるというような。
 その二人にしかない、ずっと恋愛が続いているような雰囲気や、
 所詮奥さんの手のひらの中よ、みたいな駆け引きもあったり。

 またなかにしさんは、大の成田屋贔屓でもあり、
 襲名披露パーティーの発起人にも名を連ねておられる。
 どんな世界を見ることができるのだろう・・・。

 見慣れた歌舞伎座がだいたい2000人収容だけど、武道館は一万人。
 歌舞伎とオペラとダンスと和太鼓、4000人の合唱。
 むうん。

 月の大王の団十郎は、「眠り王」ならではのれいの扮装で、とても大きく見える。
 
 勘太郎のかぐや姫は、女形ではない彼が何故姫を?と予備知識の少ない私は思ったのだけれど、
 物語が進むにつれて、なろほど・・・と納得。
 月の大王の娘であるところのかぐや姫は、実は竜の化身であったのだ。
 
 つぎつぎやってくる男達の求愛に応えないかぐや姫。
 それでも残った5人の貴公子に、無理な願い事をし、まごころを見せて欲しいと云う。
 ここは私も知ってるかぐや姫と同じ。
 「金銀の実がなる蓬莱の木の枝」や「竜の首の玉」や、一体どんな宝物なのだろう。

 一人、また一人と脱落し、ウソを見破られていく男達の中、
 一人、新之助演ずる大伴の大納言だけは、あてもなく竜を探して旅を続ける。
 そんな大伴の大納言の心に応えようとするかぐや姫。
 姫は彼に恋をしてしまったのだった。

 人間に恋をしては生きてゆけない竜の娘だが、
 娘の気持ちを知って尚、思うように生きなさいと送り出す月の大王。
 このあたり、団十郎の大きさと愛の深さにぐっときてしまう。
 そして、愛の為、竜である自らが、大伴の大納言の前に姿を現そうとする姫の心。
 竜と姫と悲しさと愛とが絡み合う気持ちを、勘太郎君は見事に演じてた。

 一方、姫への一途な気持ち1つでひたすら旅する新之助大納言。
 真っ直ぐで、キリリと美しくて、それはかぐや姫も惚れることであろ。
 どこまでも透明に輝いていて、大海原での見得も極まって素晴らしかった。
 
 かぐや姫の竜と、新之助大納言との対決。
 美しい竜に魅入られながらも、姫のためにひたすら立ち向かう大納言。
 心の中で、だめー!その竜を倒してはだめだー!と叫んでしまった。
 竜が姫だと知った時の、彼の気持ちを思うと悲しすぎる。
 命を捧げても、大納言の気持ちに応えようとするかぐや姫の想いが切なすぎる。
 
 竜の姿で宙乗りで消えてゆく勘太郎。
 絶叫の新之助。
 大声で叫ぶ新は、ジャングル大帝レオのようであった。(ほめてる)

 オペラのアリアも、4千人の合唱も、和太鼓もダンスも、
 どうなることか?と思っていたのだが、それぞれの持ち味が1つにまとまっており、
 随所に工夫がなされていて、面白かった。

 お馴染みの歌舞伎俳優さんたちも、大きな舞台で、別の持ち味を発揮していた。
 阿倍の右大臣の坂東弥十郎さんなど、大きく男くさくみえたことよ。
 市川右之助さんの竹取の女房なぞ、最初は女優さんが演っているのかとおもってた。
 それくらい小さく優しい、かぐや姫の母っぷり。

 そうして大団円のフィナーレ。
 出演者全員がステージ上で「陽はまた昇る」という歌を合唱するのだけれど、
 これがミーハー心を刺激する舞台模様。
 おおー、あの振り付けで新之助も歌っておるうー!
 なかにしさんも壇上にあがり、団十郎や新之助とも握手。
 なかにしさんと新之助が二人言葉を交わし並ぶ2ショットは、なかなかの眺めであった。
 恋する同士であった勘太郎とも良い笑顔で握手。
 勘太郎の竜の姫の扮装の頭のツノ(?)が新の頭に突き当たって(?)
 あわわと笑い会う二人も微笑ましい。わはは。

 ともあれ、幸せな気持ちで幕。
 これで新之助は本当に最後なのだろうか。
 なんだか少し表情がすっきり大人びたような気がした。

 ご一緒してくださったSさんに、「ずっと新之助ばっかり見てたでしょう!」と笑われてしまう。
 そうかな、そうかも。
 一応全体は見ていたんですけれどね、
 一度きりしかない舞台だし、新之助最後だしと思うとつい。

 武道館を出ると、横を歩いていたのは横尾忠則さんであった。
 ほほー。
 Sさんの提案で、サクッとタクシーを拾い
 ワンメーターほどで神田のやぶそばへ。
 古びた趣が好ましく、何を食べても美味しかった。
 ビールと牡蠣の香味焼きがとてもいける。
 注文を聞くとおねえさん方が、何とも言えない不思議な節回しで復唱するのが面白い。
 さらに近くの風情のある甘味屋「竹むら」で、みつ豆をデザートにいただく。
 ぶらりと神田駅まで歩いて、帰路につく。

 


 ○○追記○○
 五月のチラシが出ましたねえ!
 おおー待ち遠しい!

 三月は幕見で一度くらいは行きたいと思っておるのですが、どうなることやら。
 


2004年02月18日(水) ☆たとえ小さくても☆

 こないだの日記に書いた、「開運の小槌」ですが、
 あれはもしかすると「知る人ぞ知る歌舞伎座名物」だったのかもしれません。
 こんなページを見つけてしまいましたよ。
 ね、ねー!ちっちゃくて可愛くて、ぎっしり幸運がつまっていて、目出度い感じでしょ?
 
 それにしても、もう2月。
 おまけに、このところたいへん暖かくて、あちこちで梅が満開。
 風のない夜道など歩いていると、ふんわりと梅の良い香りがして、
 すぐそこまで春が来ているようです。
 もう春がくるということは、
 もうすぐ海老蔵襲名披露の色々な行事が始まるということでもあり、
 なにかひとつ、お祝いの気持ちを形にしたい!と思いたって、
 こんなものを作ってみました。

 成田屋さんゆかりの三升と海老蔵のエビをあしらって、
 へっぽこではありますが、一生懸命作ってみたのです。
 これを携帯にでも付けて、毎日持ち歩くのもいいなーと思っています。

 ご贔屓の方々の中には、海老柄の着物や帯やかんざしや、
 色々な物に趣向をこらして、五月を待ちわびてる方も多いと聞きます。
 そういうのも楽しみの1つですよね!
 私はまあ、こんな小さな海老ちゃんではありますが、
 この世でたった1つのお守りと思うと、ほんのり嬉しい気持ちです。
 あんまり嬉しくなってしまって、こうして日記を書いています。
 

 これから時々、観劇日記以外にも「おまけ」として☆のマークをつけて、
 歌舞伎座お気に入りスイーツ特集や、
 歌舞伎にちなんだ「ぐっとくる小説」特集など、
 勝手に銘打って書きたいなーなどと思っています。


2004年02月15日(日) 二月大歌舞伎 昼の部 「毛谷村」「茨木」幕見

 先日、三味線のお稽古をはじめたばかりのにごちゃんと幕見デート。
 彼女は歌舞伎を10年くらい前に一度観たことがあるけれど、あまり記憶にないとのこと。
 なので、だったら今回は楽しんでくれるといいなーと思う。

 歌舞伎座前にいつも出てる、甘栗売りの屋台の前で待ち合わせ。
 春がもう来たかのような良い天気で、地下鉄の階段を見下ろしながら待つ。
 すると、階段を登る大勢の人の中で、一人だけクルリとこちらを振り向いた女性がいた。
 あーにごちゃん!
 まるで私がそこでワクワクしながら待ってるのを知っていたかのような彼女の笑顔に会えてビックリする。
 「なんだかそっちから呼ばれてる気がしたよ」とのこと。
 気持ちの良い待ち合わせだった。

 今日は「だんまり」「毛谷村」「茨木」と、幕見とはいえ盛りだくさんなので、
 ちゃんとお弁当を手に入れましょう。
 「まるうめ歌舞伎おむすび」と、伊まさとの「ぼたん海老寿司」を買って半分こすることに。
 どちらも自ら試して、おすすめの味。
 並んで待つ間も、三味線「しま吉」の話などあれこれ聞いたり、
 可愛いお土産をもらってしまったり、楽しいひととき。
 
 「だんまり」
 
 だんまりというだけあって、台詞は殆どない。
 けれど幕見でもイヤホンガイドが借りられるようになったので、助かる。
 ウォーミングアップに調度よかったようで、
 左団次の鬘すごいーとか、
 玉太郎の足の親指がきっちり反ってる!とか私がこしょこしょ言ってるうちに、
 にごちゃんも、4階からの眺めやイヤホンから聞こえる声や、
 あっちの方から聞こえる大向こうの声や、
 歌舞伎座の匂いに慣れたみたいだった。
 

 「彦山権現誓助剱」(ひこさんごんげんちかいのすけだち) 毛谷村
 
 なにしろ時代劇好き、マゲ好きのにごちゃんは、
 夜の部と散々迷っていたが、吉右衛門見たさに昼の部に決定。
 私も吉右衛門は久々で、楽しみだ。

 吉右衛門演じる六助は、気は優しくて力持ち、親孝行でしかも武芸の達人。
 出てくるなりの大らかな笑顔が、どーんと力強くて優しくて、
 感動してしまう。
 にごちゃんと「きっちーいいねー!」と目と目で会話。
 
 そこらの男には負けない女武芸のお園を時蔵が演じる
 六助お園のラブコメディー(?)。
 小さな子役もかわいらしく、
 楽しい演目であった。


 幕間にお弁当。
 美味しいねーとパクつく。
 売店も絵のコーナーも、食堂も喫茶店も、何にもない4階席。
 でも、そこがまた楽しくもあり、
 ここも楽しんで、一等席も味わうと、きっとまた格別。

 「茨木」

 玉三郎の鬼婆、茨木童子の初役が話題なので、
 幕見の人が急に増えた。
 長唄三味線、九丁九枚。(字はこれでいいのでしょうかしらん。九挺?)
 にごちゃんが習ってるのも、長唄三味線だと聞いてる。
 長唄って心地よい。
 渡辺綱を、こちらも初役で団十郎。
 稲妻の柄の黒の衣装。
 団十郎のやる役は、いつか新もやるかもしれぬ・・・と思うと、見ていても力が入る。

 前シテ、老いた綱の伯母真柴の玉三郎、
 ヨロヨロゆっくり花道を進んでくるのか、4階からはしばらく姿が見えない。
 この、階下では何かが起きているらしいのに、ぽかーんと待つしかない気持ちも
 4階ならではの楽しみと、二人で苦笑い。

 美しい女形の時もそうだけれど、
 慣れない盗賊お嬢吉三の時も、こんな白髪のおばあさんの時も、
 玉三郎はいつだって、透明なマイナスイオンの球形に被われてるように見える。
 その中には、玉三郎独自の緊張感や美意識や、張りつめた澄んだものがあるような。
 今日は、そんな事を感じた。

 とはいえ長唄と松葉目物の踊りと、お弁当でお腹いっぱいとで、
 二人とも仲良く少しだけ気を失う。てへへ。

 真柴が鬼の本性をあらわし、歯をむき出し目をむき、悪鬼の形相。
 どよーっとしたざわめきがおきる。
 こんな顔の玉三郎は、めったに見られないからだろうか。
 私がもし、玉命!なファンだったら、
 ひー!玉さんがーとか言って、騒ぐかも。
 
 中学生の時、玉三郎の舞踊公演のチケットをいただいて見にいったのが、
 今思えば、生まれて初めての歌舞伎体験であったと思い出す。
 ほえーっとなるほど美しかった。

 茨木童子の踊り。
 いよいよ誰だかわからぬ鬼の隈取り。
 カーっ!と開いた大きな口は、赤く禍々しく、
 ひたすら綱が追い戦うが、時すでに遅し。
 幕切れの綱の、茨木を追う、大きく口を開きぐっと足を開いた見得に、
 こんなの見たことないー!と驚く間もなく、
 幕外、花道の鬼の引っ込み。
 おわーここからはあまり見えなかったが、
 鬼のすごい引っ込みだったのだろうねーと話す。


 外は気持ちよく、歩きたいねということに。
 我が儘を言って、歌舞伎専門古本屋「奥村書店」に付き合ってもらう。
 おかげで欲しかった本を見つけることができた。
 ついでに鳩居堂ものぞき、こまごまと買い物。
 新橋から地下鉄に乗り、にごちゃんちへ。

 そこには三味線「しま吉」が待っていた。
 にごちゃんの三味線は、思った以上に上手で大喜び。
 後は色気だねえ、などと笑う。
 お師匠さんのお手本のMDが、艶っぽくていい音で、いい声で、
 いいねーいいねー!と何度も聞かせてもらってしまった。
 すっかり益々長唄のファンになる。

 このあたりから、ちょっとビールがまわってきて、いい気持ちに。
 最近の私の成田屋熱を、そんなに夢中になれて楽しそう!と言ってもらって、
 でもさあ、これも結構つらいのようーなどと甘えた愚痴も言ってみたり。
 わはは。

 朝から目一杯、楽しかった日曜日。


 
 ○○追記○○
 次の観劇は、28日の「眠り王」です。
 新之助としては本当に最後の舞台。
 抽選でご招待とのことで、葉書たくさん書きました。
 無事に当たって、嬉しかったっす。

 こういうチケット確保に一喜一憂したり、時間やお金の工面、
 オノレの心の暴走との戦い。
 (今日も、にごちゃんには沢山呆れられたかもしれません。)
 好きな俳優さんの襲名の年に立ち会えるヨロコビは、ちょっと苦しみ混じりでもあったりして、
 最近友達みんなに「楽しそうー!」と言ってもらえて嬉しいのですけど、
 愚痴もちょびっとこぼれます。
 励ましてもらったりして、贅沢な悩みですね。


2004年02月04日(水) 二月大歌舞伎 夜の部 はかなく軽い・・・。

 先日分で書ききれなかった感想など。
 
 「三人吉三巴白波」

 筋書の「今月の役々」というコーナーのインタビューで
 団十郎がこんなことを言っている。
 「昨年の四国こんぴら歌舞伎で(三人吉三)をやらせていただいたとき、
  金丸座という狭い空間のせいか
  江戸時代の死生観はかなりちがうことを実感しました。
  私たちは命は地球より重いと教えられてきましたが、
  江戸期は死が身近で、命がはかなく軽いものだったという事がわかったような気がしました」

 これを読んで、なんとなーくではあるが、そうか・・・と腑に落ちるところがあった。
 先月の十六夜清心にしても、今月の三人吉三にしても、それから他の演目でも、
 生きてることと、死んでることの垣根が低くて、
 ひょいっと大きく跨げば越えられそうなかんじ。
 なんとなく漠然と、納得。

 それから、この演目、本郷火の見櫓の幕は特に、三階から見るのが素敵だと思った。
 回り舞台がゆっくり大きくグルーリと回ってゆくときに、
 なんというか生きて動く、精巧なジオラマを眺めているようなうっとりを体験できた。
 例えば荒れ寺・吉祥院。
 死を決意し、手に手を取り合う仁左右衛門と玉三郎。
 一幅の絵のような二人の場面がぐるーりと巡ると、現れてくるのは寺の裏手の墓地。
 荒々しい形相で、二人の男女を今まさに斬りつけようとしている団十郎。
 どちらの場面も美しい形になっており、それぞれが演じたまま回るのが、
 三階からは、ずっーっと奥まで見渡せた。
 これは立ち回りの場面でも素晴らしい効果を見せ、
 3Dなんぞなくても、こんなに美しくスペクタクル。

 黙阿弥をもっと知りたいと思ってこんな本を買ってみた。


 幕間。
 この日は節分だったが、あちこちの売店ではお雛様も並んでいた。
 可愛らしいのを見つけて、思わず買う。
 (プチ画像日記更新しましたー)

 「仮初の傾城」
 時蔵の踊りだったのだけれど、先ほどの吉三の興奮がさめやらず、
 ぼうーっとしてしまって記憶があまり無い。。

 「お祭り」
 三津五郎のいなせな鳶頭がかっこよい。
 大向こうの「まってました!」の声に「待っていたとはありがてえ」と応える三津五郎。
 今ちょうど読んでいた松井今朝子「奴の小万と呼ばれた女」に出てくる男って、
 こんな感じ?とちょっと思った。
 三階さん達の若い衆の力のこもった動きに、思わず、うーっんと小さく声が出てしまい、
 お隣のおばあちゃんと顔を見合わせて笑う。

 そんな福は内な気分で幕。


 ○○追記○○

 今度は昼の部を、三味線を習い始めたばかりの友達と幕見で見てきます。
 楽しみっす。
 
 


2004年02月03日(火) 豆まき@歌舞伎座 三人吉三

 歌舞伎座夜の部。
 「三人吉三巴白波」
 玉三郎、団十郎、仁左右衛門の演じるキャラの立った三人の泥棒たち。
 この三人が節分の夜に出会い、物語は複雑に絡み合う。
 私は火曜がお休みなので、ちょうどチケットをとっていたのだけれど、
 今夜は節分!
 三階席一列目。

 いつもは完全に女形の玉三郎さんなので、己の男性的な部分というのは完全に殺してると思う。
 一方今回の役お嬢吉三は、旅芸人の女形で姿は娘でも心は男という役。
 普段は菊五郎などの立役もやる「兼ねる」役者さんの役なので、
 もちろん玉三郎は初役。
 どんなお嬢を見せてくれるのか楽しみだった。

 黙阿弥の台詞はとにかく凄い。
 ずっと七五調のリズムが続く。

 玉の名台詞
 「月もおぼろに白魚の、かがりもかすむ春の空、
  冷てえ風もほろ酔いに、心持ちよくうかうかと、
  浮かれがらすの只一羽、ねぐらに帰ぇる川端で、
  棹の雫が濡れ手で粟、思いがけなく手に入る百両、
  ほんに今夜は節分か、西の海より川の中、
  落ちた夜鷹は厄落とし、豆沢山に一文の、銭と違って金包み、
  こいつぁ春から縁起がいいわえ」
 この名調子を、ほんに節分に聞けるヨロコビ!
 
 物語はすすみ、三人の吉三のそろい踏みで序幕の大川端の場は幕。
 するとスルスルともう一度幕が開き、
 三人の吉三をはじめ今月の出演の三津五郎や時蔵も袴姿で登場。
 団十郎の「本日は節分に当たりますので追儺(ついな)式を執り行います」の挨拶とともに、
 豆まきの開始ー!

 わーと三階から眺めていたら、ちゃあんと三階にも歌舞伎座の職員さん達が撒きにきてくれた。
 とはいえ、後方からまくので最前列にはなかなか飛んでこない。
 勢い余ったいくつかの袋の1つが、ちょうど私のとこに飛んできて、
 首尾良く福豆ゲット!
 はっと気がつくと、一階席の豆まきもほぼ終了しており、
 己の豆に走って、ちゃんと見てなかったぜと反省。

 幕間にお隣の席のかわいいばあちゃんが、豆をもらえずに残念そうにしてたので、
 一緒に分けてポリポリいただく。
 このばあちゃん、可愛らしくて本当に喜んでくれて、
 福をわけていただいたわーありがとねーと何度も言われて恐縮してしまう。

 団十郎はさすがの貫禄で、兄貴ー!であったし、
 久々に見られた仁左右衛門もいい男だった。
 男役の玉三郎は、殺陣や立ち居振る舞い(ちょっと外股開きとか)が手探りっぽくはあったけれど、
 それもホホーと見てしまう。
 例えば暮れにテレビで見た、玉のお染の七役の立ち回りなんて、
 きっぷのいいねえさんらしく、きっぱりと小気味よかったのに、
 男役の殺陣となると勝手がちがうだろうなあ。
 いずれにしても華のある三人だ。

 雪の本郷火の見櫓の幕切れ。
 一面真っ白の雪の中、両花道をフルに使い、この三人が追っ手に追われて立ち回り。
 豪華だねえ。
 江戸末期の庶民になったような気持ちでワクワクと見た。

 今月は、あとは来られても多分幕見になる。
 なのでずっと気になってた「伊まさと」のぼたんエビのお寿司を買ってみた。
 (またしてもこの方の日記のおかげです。はい)
 ぼたんエビが甘くてプリプリで、もうウットリするくらい美味しい。
 お弁当にしてはお高かったけど、後悔無し。(1800円!)
 全部がエビって飽きたりしないかな?と思ったけど、そんなことは全然なかった。
 プチ画像でご覧ください。
 これを待ってる間にも、伊まさとには次々と太巻きをもとめる人がきた。
 さすがは節分。
 けど、ちょうどよい大きさに切ってもらうか、
 切らずにそのままがいいかで揉めるご夫婦もあり、クスっとしてしまう。
 かなりの太巻きではあった。
 
 すっかり気に入ったぼたんエビ。
 新之助が海老蔵になったら、エビを食べたらファンとはいえなくなるのか?
 そしたらこの弁当も、もう食べられなくなるのか?


 ○○追記○○
 今夜のことろはこのへんで。
 もうちょっと観劇のほうも書きたかったのですけど。


しま |てがみもくじを見てみるひとつ前

いわゆる投票ボタンです。ぽちっ?

My追加
「エンピツ」な方々用、新鮮お届け。