いつもは 帰りが心配だから と 見送らせてくれなかったあなたも あの日はなにも いわなかったね
ふたりで並んだホームのベンチ 着替えと想いがつまったバッグ 急行が止まる駅だけど 各駅で行こうと あなたが言う
何本も見送って 腰をあげた どちらからともなくつないだ手
ターミナル駅の改札で これ以上は送らないでとあなたが泣く 別れた理由もなにもかも いまも想い出になりきれずにいる
コンコース 人に紛れて いまと同じ 短い爪を すこしだけあなたのほほに立てて 長いながい キスをした
爪を切る音すら いまもせつない ひとりきりの冬の夜
2001年05月30日(水) |
Crying Alone |
ひとりきりで泣いているこの雑踏のなかで あたしはそうやって泣くのがいちばん落ちつく
Woman in helpless depth だれもあたしの涙に気づかない 優しいことばもかけない 同情も愛もない
攻撃もない
アパートの鍵を開けて最初に確かめる 留守番電話がきょうも点滅してないこと
Crying Alone in helpless depth だれもあたしの涙に気づかない 昨日まで親切だった電脳の友も 昨日まで幸福だった現実のあなたも
Woman Keeping on Crying in the dark Woman keeping on Crying Alone
助けてくださいと叫んでみても 本当は判り過ぎているのさ まして雨がしとど濡らせば 荷物が肩に食い込む
坂は下りのほうがきつい 膝にかかるあたしの命 とても重くてとても痛くて 駆け下りたいのも道理でしょ ねえ
それでもあたしは生きていく 噛み締めた奥歯が欠けても 涙がまぶたを腫らしても こころがだれかを呼んでも
ねえ使い古されたことば だけど 誰が生んでくれと頼んだよと それもわかる気がするのは あたしだけなのか 教えて欲しい
下りの坂はまだまだだらだら 続いた先には梯子がぶらぶら 命の重み支えきれないあたしを 笑っているように見える
それでもあたしは生きていく どんなあたしでも生きていく 雨の日には腰をおろしてそして 無理やりに目を閉じて眠る
それでもあたしは生きていく どんな砂も噛んで生きていく あたしがそう決めたから 理由なんて それだけできっと十分
あたしは醜悪なあたしを抱いて いつのまにやら待っていたよ 太陽の気まぐれな一瞥を待って ひたすらに泣き続けてたよ
だけど
あたしは歩いてく
要らない荷物 毎日 棄てようか棄てまいか迷いながら
地を這いずり 足をひきずって
あたしは・・・ 生きていく
幸福の種を植える場所を さがし歩きつづけるのさ
きょうも
孤独という名の病に冒された 生まれ落ちて最初に知ったことが多分それで これから一生この病と転がり続けるのだと 無意識のなかにあたしは覚悟を決めた
スタート切ったからには 止まることできない 降りること許されない そういうルールのゲームとも知らされず
壊れゆくものがいつも かぎりなくいとおしい 自分のなかから生まれた それは片割れのような
壊れゆくものがいつも なによりも親しい ちいさな手のひらに 握り締めたあの日の決意
孤独という名の病は 坂を登りつづけよと命じる 登りきればそこに緑の大地が 広がっているとうそぶく
その声の命ずるままに 血の味の唾を吐き捨てながら あたしは駆け上ってきた 岩に脚を切り裂かれながら
壊れゆくものよ きっと 君も知るのだろう 孤独の病に冒されたものに 安息の地など見つかりはしない
孤独の病に憑かれて 自分だけの地平目指しても そこに続くのはただ 壊れゆくための断崖
壊れゆくものよ 君は 孤独の病を背負い どこまでゆけるのだろうか 砂漠の雨に 束の間の 渇きを癒され むしろ旅路が 続くことを恐れながら 君は雨を待っている
壊れゆくものよ
虚しさが残るまでどうぞ愛さないで 出会えた運命に微笑めるうちに ねえ どうぞほかの誰かを愛して
そしてわたしを思い出の中 閉じ込めてください 色褪せない永遠の輝きに あなたのなかで生きていたいから
見つめあえばきっと なお遠くなるはず 本物もまがいものも せつなさは同じ どんな夢も見てる間は 消えぬリアリティ 消せぬ痛み
叶わぬ想いと知っていても それでも愛せていたのだと 無償の愛を信じ微笑って
ねえ どうぞほかの誰かを愛して わたしの時間を あなたが止めて あなたを愛した輝きのまま 凍らせて 眠らせて
虚しさが残るまで どうぞ愛させないで わたしの想いを終わらせて
眠らせて
書類をファイリングしながらふと考える
綴り穴にシールを貼るように 自分のこころにも パッチを当てられないかな
破れやすい一角を ささやかにでも守れるように
こんなにも美しい秋の日に 雨を感じながらわたしは生きている
自分てもしかして 孤独なんじゃないかとか ふと思ってみたりまた 打ち消してみたり
ファンレター書き終えて 便箋も封筒もやたら余ってる 買いすぎたなと笑ってみたり 凍りついたり
ねえ まるでレターオープナー買っても ダイレクトメールばかり 開けては捨てる様 それがまた結婚相談所とか独身女性向けマンション おかしすぎて涙でそう
誰か誰か誰か いませんか 誰かというか名の特定人
自分てもしかして 幸せなんじゃないかとか 思い直してはまた打ち消してみたり
うっかり 打ち消しそうになったり。
なんどもなんども魂が 叫べと命じた なんどもなんどもこころが 如何して、と応酬した
魂とこころ 頭とからだ せめぎあう己を抱いて 懊悩の日々を生きるひとよ
もれ聞こえる涙声を 見えないこころの内を 無力なる自分を 感じながら一緒に歩くよ
背中の重たいランドセルを 手で支えるように ひとり走れる日まで 自転車の荷台に手を添えるように
わたしにできることは そんなことしかないけれど 妹よ あなたがとてもとても大切だと いつか思い出してくれたら
大切なものに気づくのは いつも通り過ぎたあとで
2001年05月21日(月) |
Collapsing |
さしのべた手はなにを 求めていたのだろう?
わかってあげられなかった報いに いまわたしの手は 誰にもあたたかく握り締められることも無く 爪を食い込ませたてのひらがただ痛いだけ
ひとりを支えているだけ
助けてほしいと口に 出せるうちはきっとまだいい 弱いからどうか助けてと すがれるうちはまだ生きられる
いつの日か多分ことばを失い 無言のうちにひっそりと 水底に沈むのだろう 本当に逝く者はああ ひとりきりで
本当に逝く者はああ ひとりきりで 音もなく静かに 壊れてゆくのだろう 壊れたことさえ悟らせぬように 笑顔でただはるか遠くへゆくだろう
笑顔でただはるか遠くへ
2度と戻れない遠くへ
気の早い風が 夏を連れてくる 窓を開けて呼び込んでみた
あわてて出した ノースリーブのシャツを すりぬけてどこまで行くの
またくるよ ねえそれだけ? ほんとにせっかちね
今度はちゃんと アイロンかけて待ってる だから
迷子にならずに迎えにきてね わたしを連れて行ってね 新しい季節へ
閉館まぎわにかつん こつん ふたつの靴音 遠くから聴こえてる でも絶対に 振向いたりしないんだ
同じ絵のまえで聴こえた ため息たどったら ああ あなただったんだね なんだか笑ってしまった
なんだかしあわせに なってしまった
この頃すこし淋しいみたい 終わった恋の抜け殻を そっと拾い集めては 涙流しても 目をそらせない
ニュースのバックに 見覚えのある あの場所が映る ただそれだけで ずしりと重い手応えに ふらつく胸を支えきれず
あのときもしもこうしてたら なんて 何の意味もないと 知っていても 人は 苦く泣く眠れぬ夜がある
あんなに大切だったあのひとの 名前が思い出せない 深夜のバスルーム 愕然とする 再生できないビデオを抱えて
通勤ラッシュに目を閉じて ひたすら耐える その刹那 ふっと浮かんだそれは 二度と呼べない名前 かなしすぎる 朝
あんまりきれいで 大切で 両手のひらに そっと包んでた そんな時間を一緒に生きた あのひとの名は二度と呼べない
忘れなければかなしすぎて こころがくだけてしまうほど 愛しかったあのひとの 名前は二度と呼べない
いつもと同じ 朝
こうとしか生きようのない道を 選びとって生きてきた これからも多分
ほんとに大事だったから 大好きだったから 迷わずに叫びたいよ 「あなたに出逢えて よかった」
ほんとに大切だったから 愛してたから 簡単には口に出せない 「あなたに出逢えて よかった」
全身で恋うている 背の君は 遠く離れてより 幸福になったと聞いた
春はじきに終わる 激しい季節が来る 心も体も 泣きながら求める
きょうも あのひとを
背の君を思えば 甦る甘く苦く 季節はいつも夏 疼く傷と心とからだ
疼く傷と疼く性 そのすべてを求む
きょうも
我侭なあたしの こころとからだ
夕暮れの波打ち際に あたしははだしで立つの スカートのすそ つまんで つめたくしめった風のなかで
ねえ はやく迎えにきてよ あなたがいないと 滑る砂に足をとられて あたしは海にさらわれる
足のうらをぴたぴた 翠色の波がひたすと あたしは叫び出す寸前 あたしをつなぎとめるため
ねえ あなたがいないと とてもさみしいよ この気持ちなんていえばいいの? ねえ もしこれが 愛じゃなくても それでもあたし かまわないよ
名前のない想いひとつ 抱きしめて隣を歩くから ねえ そばにいて ねえ 寄り添って この浜辺にあたしを引き留めて
ねえ
2001年05月13日(日) |
うそつきな笑顔の君へ |
”大丈夫わたし強いから”
そうやって いままでいくつのうそを きみはついてきたの
ほんとに強いひとは そんなふうに笑わないよ いまにも泣き出しそうな顔で 唇の端だけをきゅっとあげて
ぼくがきみの代わりに たくさんうそをつくから きみはしばらく うそをついてはいけません
ほら 春風に吹かれるままに 涙の珠が飛んでゆくよ
それでもわたしは うたうことをやめないだろう
愛することをやめないのと おなじように 生きることをやめないのと おなじように
あいたい あのひとに もういちど
あいたい あいたい いとしい あのひとに
唇から息がもれれば それはあのひとの名になる
あいたい あいたい あのひとに あいたい もういちど あいたいの あいたいのよ
このいのちをさしだすから ねえ だれか
雨の休日のおわり 夕暮れが降りてくる わずかな霧雨をのこして
洗いたての空気
気持ちだけじゃ届かない でも 気持ち棄てたりしない
病んだからだを横たえる 連休もいつしか済んだ 祭りのあとの淋しささえも 味わえない この身の侘しさ
いわゆる「待ち合わせスポット」なるものは要するに人込みだ。まるで東京都内から大きな箒で掃き寄せられたかのように人がわらわらいる。 だから、待ち合わせの日だけは、雨がきらい。 傘にまぎれて、大切なひとを見つけられないかもしれない。
人波のなかでも、たとえ傘に隠れていても、どうかわたしを見つけて。
紙マッチの擦り方と 美味しい珈琲と
言い訳抜きの恋を教えてくれたひと
時間がたってもきっと
マッチを見たら思い出すよ
あなたの 長い指
いつになったら おとなになれる いつになったら わたしになれる いつになったら 幸福なおとなに 幸福なわたしに なれるのかな
おとな って何 わたし って何 幸福 って何?
曇りの無い空の下に 雨が降っている 降らせているのは誰
両手のひらを天に伸ばして 木を森に隠すように 涙を雨に隠すのは 誰
窓辺で貴方が云う 月が氷の様だね まるで君の様だ
もしもわたしが 氷の月ならば そのやさしさで 壊してほしい
不安が溜まってゆく 澱のように こんな日は 誰かにそばにいてほしくなる
雨音を聴きながら よけいに心は乱れている 誰かの救いを求めている
誰か 誰か と 声もなく叫びながら 本当はただひとりを待っている あてもなく
錐のような思いが 胸を鋭く貫く あの人は 決して来ない
雨音を聴きながら とりとめもない不安は やがてひとつの哀しみに変わる
凍りつく
嘘吐きなのは誰なの 嘘吐きになったのは誰の所為なの 嘘吐き始めたのは何時からなの 何の為に嘘を吐き続けるの
ここにいてもいいですか いつまでいてもいいですか 邪魔にはならないですか 無理していませんか ねえ
嘘吐きなのはあたしで 生まれついての嘘吐き 誰の所為でもない あたしは 生きてくために嘘吐き続ける
ここももういけませんか 時間が経ちすぎましたか 息ができなくなるのは いつもいつも ねえ何故ですか
あたしは嘘吐きだから これも嘘かもしれないから 信じなくてもいいから 抱きしめてくださいませんか
朝あなたが居なくても あたしは恨まないから 嘘吐きなあたしだから そんなのもきっとありだから
ねえ ほら 嘘吐きを抱きしめてよ
ねえ 早く 嘘吐きを愛してよ
ねえ 早く 愛してるって嘘を吐いてよ
ねえ 早く 息が 止まるまえに
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