2004年09月08日(水) |
ジンクス、ジンクス。 |
僕だけは、知っていたよ。 その日がいつか来る事を。 それが今日だとは、思わなかったけれど。 静かに、その時を迎えたね。 日常と同化していて、流してしまえそうな程。 静かに、静かに訪れたね。 あの後に残された彼女は肩を落として。 何も知らずに居た自分を恥じていた。 僕は、かける言葉も無く、並んで歩いた。 僕だけが知っていた事。 それは、誰にも言わないでおこうと思ってる。 特別なのは、人知れず持っていればいい。 一片の雲も無く輝く夕日が、とても綺麗だった帰り道。 彼女は変わらず、肩を落としていたよ。 僕は一言だけ「寂しいね。」ただそれだけ。 残された時間は少ないから。 彼女には、もう殆ど残されていないだろうから。 少しでも長い間、笑い合えるように。 僕の事なら、何も心配しなくて良いよ。 初めから覚悟はしていたから。 解けかけていた遮断が、また少し強まってしまうだけ。 失う恐怖は、正直あまり無い。 引き寄せたのは自分ではないかという恐怖が大きくて。 恥じるべきは、僕の方かも知れない。 それでも、彼女が思うより普通に、時は刻まれてゆく。 彼女の寂しさも薄らぐ程に。 僕が、そうあれば良いと望んだように。
言葉に表してしまうのが怖い。 その瞬間に本物になってしまいそうで。 逃れられなくなってしまいそうで。 ずっと、感じ続けてきたジンクス。 君は、こじ付けだと笑うだろうか。 こんな僕が、笑い飛ばす事も出来ずにいるのに。 でも出来るなら君が笑ってくれたら良い。 僕は、そう思っているんだ。 そしたら、君が笑ってくれたら、あるいは。 本当に笑い飛ばせるかも知れないだろ? 全てを招いているのは、僕の方なのかな。 あまりにも、捕らわれ過ぎたのかな。 身動き一つ取れなくなってしまったよ。 まるで、意志を持っているかのように。 僕に纏わり付いて離れない。 『それ』は音も無く地を這い、僕の背後に迫る。 油断すると足元から崩される。 ぬるり、纏わるのは空気より重い。 タールにも何処となく似ている。 口から入り、喉を焼こうとする。 吐き出そうとすると既に内は侵されていて。 肺も、心臓も、ゆるゆると捕らわれていて。 奥から染み出した『それ』が外と交わって。 『それ』と『僕』が交わって。 僕は声も無く打ちひしがれる。 それは絶望すら飲み込み、くつり、嗤う。 大切なものは、失ってから気付く。 それは本当なのかな。 だとしたら、僕の大切なものは偽物なのかな。 大切さに気付いた途端に失ってしまう。 砂の城や水面の泡沫に等しく消えてしまう。 それは、偽物なのかな。 僕が何かを大切に想うのは、許されない事なのかな。
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