シュガーボーンというお菓子が流行っていた。随分昔になるけれど。白いラムネの白墨みたいなお菓子。三本入って40円。ランドセルを下ろして次にすることといえばシュガーボーンを買いに駄菓子屋に走ることだった。メロン味とイチゴ味、レモン味の三種類があったが、私はメロン味にしか浮気をしなかった。いつもレモン味。シュガーボーンを舐めながら読むSF小説は最高だった。勿論、手打ち野球や鬼遊びも。誰の手にもシュガーボーンがあった。シュガーボーンは全ての子供の右手を独り占めしていた。夏にはシュガーボーンを買いに来る幽霊の話が盛り上がった。自分の子供にシュガーボーンを食べさせるために駄菓子屋の戸を叩く幽霊。嘘みたいだけれど、毎年その話は子供たちの間で盛り上がった。駄菓子屋の名前を変えて。昔は駄菓子屋が多かったのだ。
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