読書日記

2003年01月31日(金) 恩田陸『ねじの回転』(集英社)

恩田陸『ねじの回転』(集英社1600円 2002年12月10日 第1刷発行 444p)
未来の地球世界から奇病HIDSの蔓延を防ぐために、歴史を正しく再生するプロジェクトが組まれた。
その国の歴史にとって転換点となる時を選び、自覚的にその時を正確にたどり直させる。それが不思議な伝染病HIDSの発生を防ぐ方法なのだという。読んでみないと何のこった的話で雲をつかむしかないが、この病気についてはもしかしたらこの著者のオリジナルではないのではないかという気がしてならない。この病気に対する著者の一つの解釈がこの物語であって、HIDSそのものは借り物なのでは。
あの宮部みゆきも7年くらい前に同じ時の事件を扱ったSF風のものを発表して評判を得た。
続編を期待したい。長い割りには終わった気がしないので。





2003年01月30日(木) 鷲田小彌太・中澤千磨夫・�標蕎耋臓ゞγ�『大江健三郎とは誰か(鼎談:人・作品・イメージ)』(三一新書)

鷲田小彌太・中澤千磨夫・�標蕎耋臓ゞγ�『大江健三郎とは誰か(鼎談:人・作品・イメージ)』(三一新書850円1995年8月15日第1版第1刷発行 280p)
先だって読んだ『取り替え子』から大江健三郎に対する興味関心が高まっているところにそのものずばりのタイトルの本が出現。ノーベル賞受賞に当て込んだ本であるにしても自由にものを言っている面白さを感じた。三人の著者が北海道の大学の先生のせいか恐れるものがないらしく言いたい放題。文壇ゴシップの香りも高く大江健三郎とその作品を切っている。
どこまで本気なのかと眉唾状態で読み終わった後、それなりに大江健三郎のひととなりが形成されているのが怖いというか面白いというか。
巻末には三者三様の大江論・作品論を掲載。最後はまじめに決めている。さらに索引もあり。



2003年01月29日(水) 池永陽『コンビニ・ララバイ』(集英社)

池永陽『コンビニ・ララバイ』(集英社2002年6月30日第1刷発行8月6日第4刷発行 1600円286p)
これもまた一気に読了した。この全七話からなるコンビニを舞台にした連作短編集はあの『本の雑誌』2002年度前半ランキング第1位総合第7位ということで読んだ。
すべて『小説すばる』連載の作品。「カンを蹴る」「向こう側」「パントマイム」「パンの記憶」「あわせ鏡」「オヤジ狩りの夜」「ベンチに降りた奇跡」の7編。どれにも確信のない愛というテーマが貫かれていて強い印象を残す。その中でも特に「あわせ鏡」が強烈で力作である。自分のこころというか気持ちに気がついた時人間は確信を持った行動をすることがよくわかる。
ある意味浅田次郎好みの作品でもある。



2003年01月28日(火) ダン・シモンズ(訳=嶋田洋一)『鋼』(早川書房)

ダン・シモンズ(訳=嶋田洋一)『鋼』(早川書房2002年5月31日初版発行 1900円257p)
またまた一気に読了す。あの超傑作SF(もちろん小説としても大傑作)『ハイペリオン』の作者の非SF作品だけに期待していいのか悪いのか、落ち着かない気持ちで読み始めたが、ノン・ストップ・アクション映画ののりで一気に読み終えた。
主人公は刑務所帰りの元探偵クルツ。クルツの獅子奮迅の冒険的活躍は最近珍しいものなので呆気にとられているうちに話が終わっていた。重要な振る舞いをする「デンマーク人」にあのジャック・ヒギンズを見た。
ダン・シモンズは裏切らない。



2003年01月27日(月) 伊坂幸太郎『ラッシュライフ』(新潮社)

伊坂幸太郎『ラッシュライフ』(新潮社1700円新潮ミステリー倶楽部2002年7月30日 266p)
これも一気に読了。五人の人生が見事に絡まって見事にほぐされて見事な大団円を迎えるB級映画的なノリのいい、快作。
昨日の乙一といい今日のこの作者といい妙な面白さを狙う小説家が最近は増えているのだろうか。
映画向きの軽快なテンポと謎の絡まり具合が絶妙な快感を生み出す、この軽ミステリーもだまされたと思ってひとつとひとに薦めたい一冊。




2003年01月26日(日) 乙一『GOTH(ゴス)リストカット事件』(角川書店)

乙一『GOTH(ゴス)リストカット事件』(角川書店1500円2002年7月1日初版発行332p)
一気に読了。新しいタイプの、そう闇の眷属に属していても不思議でないような探偵の登場。ストレスのかからぬ無駄のない語り口に誘われてどんどん読み進むしかなく、そういう意味では宮部みゆきの文章と共通する魅力にあふれている。男子高校生の語りとその他の者の語りが輻輳して、読み手の頭脳を心地よく刺激する快作。だまされたと思って読んで下さいと薦めるのに適した一種のミステリーで、全6編からなる連作短編集の体裁をとっている。




2003年01月25日(土) 鹿島茂「勝つための論文の書き方」(文春新書)

鹿島茂「勝つための論文の書き方」(文春新書700円2003年1月20日第1刷発行222p)
従来の類書では意外にも見過ごしてきたと思われる「問題の立て方」を重視しているのが新しく、日本では独創的である。
論文指導とは問題の立て方を教えること(36ページ)とあるように今まで看過されてきた最も必要なことを具体的に指南している
この本は、真に独創的で説得力のある論文を書くためのスターゲイト。
熟読、実践、応用が利く有益な一冊。




2003年01月24日(金) 大江健三郎『取り替え子(チェンジリング)』(講談社)

大江健三郎『取り替え子(チェンジリング)』(講談社 2000年12月5日 第1刷発行 1900円 342P)
 大江健三郎が久々に一気に読める小説を書いた。もともとエッセイや評論的な文章はきちっとしていて読みやすく面白かったがいざ小説に向かうと妙に難渋な感じがして読み続けるのが苦痛で挫折が多かった。
 それは私の修行不足。大江健三郎が文章に刻みつけた思いやイメージはなまじっかの覚悟では読み解けないようにできている。
 今回この作品を読んでそう思った。
 一気に一度読んでおいて、後でまた全8章を1章ごとにじっくり読み直す。
 ある意味モデル小説でとっかかりがよさそうだが、主人公の気持ちからか徐々に息苦しくなっていく。それを救うのが主人公の妻や息子の存在である。その話題のページや文章は私たち読者の救済となっている。
 大江健三郎健在の一冊。



2003年01月23日(木) 舞城王太郎『熊の場所』(講談社)

舞城王太郎『熊の場所』(講談社 2002年10月15日第1刷発行 1600円205P)
「熊の場所」「バット男」「ピコーン!」
 表題作の中編と「バット男」「ピコーン!」の3作品を収める。
 同級生の鞄から猫のしっぽが飛び出した。それを見た小学校5年生男子の主人公は放課後真っ先に教室を出て、学校を飛び出した。彼はかつて熊と遭遇した父親の記憶をたどり始め・・・、という『熊の場所』は破壊的な筒井康隆風。文章は、石川淳風。
 バットを持って街をうろつく男は弱すぎ。逆に民間人に袋叩きにされたりしているうちに、死んだという噂が・・・。これは『バット男』の話のほんのさわりで、実は孤独な魂のあり方を追究する一種の願望小説。
 最愛の男を失った悲しみを癒すのは直感的にでもなんでも前向きに生きるための「証明書」が必要と、それを求めて一種の探偵として女は男の死の謎を解明しようと疾走感あふれる推理力を働かして現場に乗りだした。ある禁句を際限なく繰り出しておいて最後は割とさわやか系で締まる、やはりこれも筒井康隆風ある意味吉田健一風怪談という気がしないでもない「ピコーン!」だいたいこれは題名からしてまともでない。
 吉田健一または石川淳を想起させる(?)ようなうねる超長文を繰り出してダイナミックな人物と話を語る。三作とも忘れ難い印象を残すがそれぞれ風味が違うのは作者の引き出しが多いからかな。
 今世間で結構な評判の作者の短編集はある意味名人芸に近いストリーテリングを見事証明した。
 ノン・ジャンルのちょっと苦笑も誘う傑作短編集。



2003年01月22日(水) 内田樹『期間限定の思想ー「おじさん」的思考2』(晶文社)

内田樹『期間限定の思想ー「おじさん」的思考2』(晶文社 2002年11月11日初版 1800円260P)
 題名の通り「おじさん的思考」の続編。前作よりもパワーアップして世間が語り難いことをどんどん話題にしてゆく。そして、どんな問題でも快刀乱麻、見事に解きほぐす。目から鱗が落ちるような面白さ。筆者の舞台裏を伝えるおまけの文章もあってお徳用。

「多くの人が考えているのとは反対に、人が奇矯な服装や奇怪な身体操作をする理由は「目立つ」ためではない。「見られない」ためなのである。ヤクザであれ、右翼であれ、パンクであれ、その「異様さ」は「私を見つめてはいけない」を意味する記号なのである。」(「子どもたちはなぜ街で坐るのか 93ページ) 

 ほかにも「女は何を望んでいるか」「ほんとうの恋がうまくいかない理由」「なぜ教室で私語をしてはいけないか」「マンガしか読まない子をもつ親のマンガ擁護論」「覚悟も責任感も欠落した日本の官僚たち」などなどちょっと刺激的な話題には事欠かない。
 フランスの現代思想の専門家の面目躍如の、地に足がつき、なおかつ頭が空の雲を突き抜ける独創的な面白文章空間が現出している。



2003年01月21日(火) 藤原和博『自分「プレゼン」術』(ちくま新書)

藤原和博『自分「プレゼン」術』(ちくま新書 2000年9月20日第1刷発行 2001年3月15日第4刷発行 660円221P)

[よのなか]の歩き方シリーズに通じる本。題名がすべてを語っているとわかるのはすでに2年前の本だからである。
内容は現時点では常識に近いのである。特に目新しいことなどない。しかし、ここには大事な基本が解説されている。
時に読み返して確認しよう。
それにしてもこの著者の本はつい買って読んでしまう。
著者の主張を実行できたなら世の中は少し変わっていくかもしれない。



2003年01月20日(月) 宮本昌孝『ふたり道三 一』(新潮社) 

宮本昌孝『ふたり道三 一』(新潮社 2002年12月20日 1600円 335P)
全4巻のうちの1巻目。当然、次巻に思いを接がせる終わり方をしているが、この巻のみでも傑作である。
巨大な石柱の頂きに立つ獣じみた者の奇妙な振る舞いから始まる下克上の時代の物語は凄まじい迫力と緊張感に満ちた大傑作。この著者は傑作といえる作品をすでに十分と言える数ものしている。この作品はそれらを凌駕する優れた時代小説である。
残念なのは帯の宣伝文。先の展開や謎を考えながら解きながら読んでいくのが大きな喜びの一つなのに、帯の文章が親切にも教えてくれてしまうのだ。
傑作は目をつぶって買え。教訓である。映画がそうだが前宣伝はほどほどに、またはもっと工夫しよう。
『ふたり道三』というせっかくの意味深題名は作者の読者への呼びかけかつ問いかけであるはずだ。
それが読む前にわかってしまってはもったいない。200円ほど安くしよう。
とはいってもこの作品は、大傑作。この調子で残り3巻が続けば宮本昌孝は恐ろしい。
繰り返すと、この1巻だけでもこの1巻に対して私は第1回ガワイセ大賞を贈る。
ああ驚いた。



2003年01月19日(日) 藤原和博『給料だけじゃわからない![よのなか]の歩き方�◆戞覆舛�ま文庫)

藤原和博『給料だけじゃわからない![よのなか]の歩き方�◆戞覆舛�ま文庫 2001年11月7日第1刷発行 580円 190P)
『お金じゃ買えない』の続編。
以下、印象的だった文章を抜粋してみる。

21世紀に通じる「個人のための哲学」
日本のビジネスマンはこれから10年のうちに、「自分のテーマを追うシゴトをしているもの」と、「他人が設定したテーマの実現を手伝う仕事をしているもの」の2つの部族に分かれるだろう。
だから、自分のテーマを掲げよう。
そこに、自分自身で実感できる、リアルな「存在感」が生まれるはずだ。
私が意味づけた分だけ、私が意味づけられる。
「意味づけるチカラ」は「生きるチカラ」に昇華して、私たち自身の存在感を保証する。自分の存在とそれに直結した仕事の意味に確信を持っている人に、いい仕事ができないはずはない。
自分自身の意識の中で「意味づけるチカラ」がダウンすると、メディアのリアリティが襲ってくる。 

平易な言葉使いで核心に迫る。ビジネスマンに限らない考え方だ。



2003年01月18日(土) 野口悠紀雄『ホームページにオフィスを作る』(光文社新書)

野口悠紀雄『ホームページにオフィスを作る』(光文社新書 2001年11月25日初版第1刷発行 700円 229P)
情報発信の手段ではなく自分が使う仕事場としてホームページを位置づける。ホームページを見てもらう場所ではなく自分で使うための便利で有意義なオフィスにしてしまおうという呼びかけと実践の書である。今となっては似たような視点からの類書も出揃い、当たり前になってしまった考えだが、「基本」と「現実」をしっかり踏まえた上で具体的かつ網羅的に書かれているのでまだ有益な本なのではないか。



2003年01月17日(金) 永江朗『インタビュー術!』(講談社現代新書)

永江朗『インタビュー術!』(講談社現代新書 2002年10月20日 第1刷発行 700円 241P)
以前読んだ確か『編集者の学校』という題名の本を思い出した。この本も『インタビューの学校』といった内容で実例が多く、具体的なので一気に読めた。
特に第3章の「インタビューはこう読め」は豊富な話題でぐいぐい読ませる。
巻末のブックガイドが良心的。
『不良のための読書術』(ちくま文庫)も面白かった記憶がある。
著者は1958年、北海道生まれ。



2003年01月16日(木) 和田誠・川本三郎・瀬戸川猛資『今日も映画日和』(文春文庫)

和田誠・川本三郎・瀬戸川猛資『今日も映画日和』(文春文庫 2002年9月10日 629円 442P)
今は亡き瀬戸川猛資の名前に引かれ、購入、読了。
全12章からなるテーマ別の鼎談集。
なじみのある古目の映画作品が話題なので最後まで興味を持続させて読むことができた。



2003年01月15日(水) 池宮彰一郎『遁げろ家康(下)』(朝日文庫)

池宮彰一郎『遁げろ家康(下)』(朝日文庫 2002年2月1日 第1刷発行 600円 325P)
41歳から亡くなる75歳までの家康とその側近たちの物語。
隆慶一郎は『影武者徳川家康』(新潮文庫)を書いた。大型伝奇時代小説で波瀾万丈の面白さだったが、池宮彰一郎のこの作品も独自の奇想で肉薄している。



2003年01月14日(火) 池宮彰一郎『遁げろ家康(上)』(朝日文庫)

池宮彰一郎『遁げろ家康(上)』(朝日文庫 2002年2月1日 第1刷発行 600円 325P)
隆慶一郎亡き後時代小説の屋台骨を支えているこの著者は新しい徳川家康像を創り出した。
若い時から臆病で小心な家康は「遁走」を得意とし危機一髪を常に際どく回避し、その都度大きな存在になっていく。
その逃げっぷりや怯えぶりを独特の見方で描き見事に成功している。「欲深」と表現されるユニークな家臣団とともに逃げながらも徐々に天下に近づいていく逆説的な家康に妙に魅力がある。
この上巻では桶狭間の合戦時19歳から本能寺の変直後41歳ころまでの家康を描いている。



2003年01月13日(月) 藤原和博『お金じゃ買えない。[よのなか]の歩き方� 戞覆舛�ま文庫)

藤原和博『お金じゃ買えない。[よのなか]の歩き方� 戞覆舛�ま文庫 2001年9月4日 第1刷発行 580円 222P)
サラリーマンの最先端を疾走した著者がメニエル病発症を期に人間としての幸福に目覚め、さまざまに試みる。この本もある意味冒険の書である。そうしたくともできないという人が大勢のはずである。
相当に勇気と信念もしくはいい加減さが必要とされる。
考えさせられる一書であり、じっくり読むべきものという気はする。

昨日までに入手した本。
グレッグ・ルッカ(訳=古沢嘉通)『守護者 KEEPER』(講談社文庫 876円 P528)
和田誠・川本三郎・瀬戸川猛資『今日も映画日和』(文春文庫 629円 442P)
松本賢吾『窮鼠』(双葉文庫 600円 334P)
泉鏡花『泉鏡花集成4』(ちくま文庫 880円 485P)
泉鏡花『泉鏡花集成6』(ちくま文庫 980円 534P)
佐伯泰英『秘剣瀑流返し 悪松・対決「鎌鼬」』(祥伝社文庫 590円 314P)
佐伯泰英『花芒ノ海 居眠り磐根江戸双紙』(双葉文庫 648P)

今日入手した本。
宮島茂樹『不肖・宮島 踊る大取材線』(新潮文庫 781円 594P)

明日から金曜日までとても書けそうもないので(読めそうだが)また土曜日か日曜日にまとめることにする。



2003年01月12日(日) 青山南『この話、したっけ?(インターネットでこんなに読めるアメリカ文学)』(研究社出版)

青山南『この話、したっけ?(インターネットでこんなに読めるアメリカ文学)』(研究社出版 2001年2月15日 1500円 202P)
題名にある通りアメリカ文学に関心のある人なら楽しく読める。ある意味、ゴシップ集で、二ページで一つ、合計百個の話題が手短に紹介されている。繰り返し読めばアメリカ文学の消息通になれる。
ショックだったのは、あのマキャモンが小説を書くのをやめたという記事。文章を生業とすること自体やめたということだろうか。またひそかに再開したということはないのだろうか。



2003年01月11日(土) 小野不由美『華胥の幽夢』(講談社文庫) 

小野不由美『華胥の幽夢』(講談社文庫 2001年7月15日第1刷発行 648円 342P)
「冬栄」「乗月」「書簡」「華胥」「帰山」の五編からなる短編集。十二国記シリーズの続編が出るまでの渇きを癒すまでには至らない幕間的なエピソード集である。これでは飢えは増すばかりだが、去年は音沙汰なし。
構想が壮大すぎてもう作者の手に負えない怪物的物語と化すばかりで、あとは登場人物たちの自主性に任せるしかないのかもしれない。一種の思想小説ともいえるから納得できる物語を考え出すのは困難であるはず。いつのまにかものすごく重い作品になってしまったような気がする。



2003年01月10日(金) 内田樹『「おじさん」的思考』(晶文社)

内田樹『「おじさん」的思考』(晶文社 2002年4月10日初版 6月20日5刷 1900円 260P)
世間の目を気にして言い難いことがいっぱいある世の中にそれとなく現れたある意味奇矯な救世主がこの筆者である。論理に説得力があるので文句なし。ホームランというよりは2塁打を連打して溜飲を下げる、実に軽妙でありながら渋い書き手と思われる。一種の放言が研究者的理論に裏打ちされているのか的確かつ強烈。文章にもこの著者の人柄が滲み出ていて忘れがたいものがある。
大学におけるセクハラを話題にした「教育とエロス」と巻末約70ページに及ぶ夏目漱石とその作品を扱った文章が印象的だった。
もうすでに結構な評判を呼んでいる本らしい。確かに昨年を代表する本の一冊と言ってもよいと思った。



2003年01月09日(木) 森まゆみ『谷根千の冒険』(ちくま文庫)

森まゆみ『谷根千の冒険』(ちくま文庫 2002年5月8日 第1刷発行 720円 287P)
この本は1991年晶文社刊の単行本『小さな雑誌で町づくり』の文庫化本。
抱腹絶倒の冒険談で一気に読ませる。
谷中のや、根津のね、千駄木のせ、あわせて「やねせん」
この約十年間の日本の歴史とも重なって冒険の連続史である。



2003年01月08日(水) 久恒啓一『自作ホームページ超活用法(図で表現する人は仕事ができる!)』(KKロングセラーズ )を読んだ。

久恒啓一『自作ホームページ超活用法(図で表現する人は仕事ができる!)』(KKロングセラーズ 2002年10月1日初版発行 905円221P)
ホームページを作り自分を磨く基地とする、これが骨子で、「社会が求めているのは、自分を深く掘り、それも豊かに表現できる人」(110P)と説く筆者の実践と解説によるホームページ作りの奨めなんだが、主張の核心には先だって読んだ勢古浩爾のエッセイと共通するものがある。
それは、自分を高め自信を身につけながら人を大切にすることを忘れないこと。
ホームページ作りの技術的な本は増えているがこういうエッセイ的な手軽に読める、いわば思想的な本はあまりないので結構読まれるのではないだろうか。
*なお、9日と10日はパソコンに迎えないので11日にまとめる予定。

本日入手(積ん読候補!)
リチャード・パワーズ(訳=柴田元幸)『舞踏会へ向かう三人の農夫』(みすず書房 3200円 416P)
ロジャー・パルバース(訳=上杉隼人)『旅する帽子(小説ラフカディオ・ハーン)』(講談社 2300円 338P)
乙一『GOTH(ゴス リストカット事件)』(角川書店 1500円 332P)
青山南『この話、したっけ?(インターネットでこんなに読めるアメリカ文学)』(研究社出版 1500円 202P)
内田樹『「おじさん」的思考』(晶文社 1900円 260P)
山之口洋『オルガニスト』(新潮文庫 552円 381P)
紀田順一郎『鹿の幻影』(創元推理文庫 430円 254P)
江戸川乱歩『大暗室』(創元推理文庫 650円 428P)
スタンリイ・ワイントラウヴ(訳=高儀進)『ビアズリー伝』(中公文庫 820円 504P)
坂口安吾(訳=ロジャー・パルバース)『桜の森の満開の下』(ちくま文庫 680円 219P)
松山猛&フジテレビ『ワーズワースの庭で』(扶桑社文庫 505円 290P)
富士正晴『豪姫』(新潮文庫 360円 244P)
福永武彦『加田伶太郎』(新潮文庫 280円 379P)



2003年01月07日(火) 山田太一『彌太郎さんの話』(新潮社)をやっと読んだ。

山田太一『彌太郎さんの話』(新潮社 2002年3月15日発行 1600円 277P)
こういう不思議な魅力を持った人物は現代では存在しないのではないか。戦前、戦中、戦後直後までは隣近所に一人くらいはいたような人間としての色気を備えた人物が今はいないような気がする。
ちょっとやくざで気っ風がよくて話し上手な兄貴分的な人物の代表選手としてこの話の「彌太郎さん」が登場して、今の日本にこんな人間はいなくなったと語って消えたという感じ。

初出はすべて「小説新潮」で平成11年7月号から平成13年10月号まで8回に渡って掲載された。
順番に「彌太郎さんの話」「二十七人」「銀龍」「小さな夜祭」「一歩前」「八億四千」「思い出がない」「天国の周辺」の八編からなる。

こんな怖い空想小説を書くことのできる山田太一はただものではない。オリジナリティのおいて一番。

これは映画化すべき小説である。だれが適任か思いつかない作品こそ映画化すべきだ。
うまく作れば観客は喜怒哀楽プラス恐怖の世界で右往左往するにちがいない。怖いわい。

 本日入手(大袈裟!)の本。
大江健三郎『取り替え子(チェンジリング)』(新潮社 1900円)
エドワード・ケアリー(訳=古屋美登里)『望楼館追想』(文藝春秋 2571円)
舞城王太郎『熊の場所』(講談社 1600円)
三津田信三『作者不詳(ミステリ作家の読む本)』(講談社ノベルス 1500円)
飯島耕一『暗殺百美人』(学習研究社 1600円)
飯島耕一『小説平賀源内』(砂子屋書房 3000円)
嵐山光三郎『美妙、消えた。』(朝日新聞社 1800円)
伊坂幸太郎『ラッシュライフ』(新潮社 1700円)
阿部謹也『学問と「世間」』(岩波新書 680円)
アントニイ・バークリー(訳=藤村裕美)『ウィッチフォード毒殺事件』(晶文社 2000円)
高橋克彦『火怨(北の燿星アテルイ)上』(講談社 1800円)



2003年01月06日(月) 勢古浩爾『「自分の力」を信じる思想』(PHP新書)を読む。

勢古浩爾『「自分の力」を信じる思想』(PHP新書 2001年9月28日第1版第1刷 204P)
「自分の力」を信じる勇気・努力は「自分の力」を理性の目で判断できるかどうかで作られる。
明石家さんまやビートたけし、おすぎの話まで出る縦横無尽なこの長編エッセイの行方は割と平凡なところへ導いてくれるが、その語り口が面白い。



2003年01月05日(日) 佐伯泰英『初陣 密命・霜夜炎返し』(祥伝社文庫)を読む。

佐伯泰英『初陣 密命・霜夜炎返し』(祥伝社文庫619円2002年9月10日初版第1刷発行 405ページ)
密命シリーズの最新第7作目。稀代の剣豪・金杉惣三郎とその家族の物語に移行しつつあるシリーズも修行中の十八歳の長男・清之助が急速に成長した姿に焦点を当て、家族の物語としても剣豪の物語としてもさらに膨らみが増し、ますます面白くなってきた。
成長してゆく子または弟子を慈しんで見守る大人の視点にゆるぎが全くないので時に感動的な場面も生まれ、活劇シーンもより意味あるものに変わってゆく。
著者の数あるシリーズの中でも本作は出色である。
印象的なラストシーンは次回作をより期待させる。



2003年01月04日(土) 茅田砂胡『海賊王の帰還 暁の天使たち3』(中央公論社Cノベルス)を読了。

茅田砂胡『海賊王の帰還 暁の天使たち3』(中央公論社C★ノベルス 2002年11月20日初版印刷 11月30日初版発行 213P)
あくまでも軽くあくまでも謎が謎を呼ぶ。あくまでも思わせぶりで「続く」で終わり。どうせ待たせるならもっと時間をとってちゃんとしたものにしてから出してほしい。今一番じれったいシリーズものであるぞ。



2003年01月03日(金) 安原顯『本読みの「本」知らず』(双葉社)を読んだ。

安原顯『本読みの「本」知らず』(双葉社 2300円2002年12月5日第1刷発行365ページ)数え間違えていなければ167編の短文書評を収録(音楽評・映画評・時評などもある。)
ノン・ジャンルなのでこちらが知っているものは数少ない。それにもかかわらず読まずにはいられないのは筆者のキャラクターで読んでいるからだろう。毒舌、偏愛、未練、怒り、予感、攻撃、配慮などさまざまな心情が滲み出してくる。それを読めるのがうれしい、そんな気分で読んでいる。
昨日の『コラムの逆襲』の295ページに比べると一気に読み通すのは正直しんどいものがあって頭がくらくらしたがなんとか今日一日で読了。しかし、もう少し頭がすっきりしているときに読めば得るものがまたあるはず。
この筆者は現在大病中と聞く。その予告のような文章が何カ所かあって胸を余韻を残した。

本日入手(大袈裟!)した本。

佐伯泰英『秘剣雪割り 悪松・棄郷編』(祥伝社文庫 590円 2002年8月1日初版第1刷発行 8月30日第2刷発行 P328)

丸谷才一 和田誠『女の小説』(光文社文庫 648円2001年9月20日初版1刷発行P246)

ソポクレス『ギリシア悲劇�供戞覆舛�ま文庫 900円 1986年1月28日第1刷発行1991年12月5日第5刷発行 P555)

網野善彦『蒙古襲来 転換する社会』(小学館文庫 1000円 2001年1月1日初版第1刷発行 614P)

綾辻行人『どんどん橋、落ちた』(講談社文庫 590円 2002年10月15日第1刷発行 428P)

苅谷剛彦『教育改革の幻想』(ちくま新書 700円 2002年1月20日第1刷発行 4月20日第5刷発行 222P)

霧舎巧『ドッペルゲンガー宮 <あかずの扉>研究会流氷館へ』(講談社ノベルス 1999年7月5日第1刷発行 439P)

茅田砂胡『海賊王の帰還 暁の天使たち3』(中央公論社C★ノベルス 2002年11月20日初版印刷 11月30日初版発行 213P)

山口雅也『奇偶』(講談社 2002年10月20日 第1刷発行 12月6日第2刷発行 610P)



2003年01月02日(木) 『コラムの逆襲』小林信彦を読んだ。

小林信彦『コラムの逆襲ーエンタテインメント時評 1999〜2002』(新潮社版 本体1600円2002年12月20日発行)中日新聞夕刊連載の90本の短文集。一編がだいたい1ページ半。至福の時は短い。短時間で読めてしまうから。必殺技は一気通読の後、1週間ほどたってからじっくり読むこと。そしてこのコラムシリーズを6個さかのぼって最初の『コラムは歌う』をまた読むこと。



2003年01月01日(水) 今日から再び

しばらく書けなかった。書いても進歩もないが新たな年に際して始めることにする。日記をさぼっていた者のありがちな決意表明となった。とりあえず。


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