読書日記

2003年02月25日(火) 宮部みゆき『ブレイブ・ストーリー(下)』

宮部みゆき『ブレイブ・ストーリー(下)』

上巻よりも下巻の方が若干長い分十分に楽しめた。
コニー・ウィリスの大長編『航路(上下)』と関連を考えるとこれはありえない話ということになるのだとか人生には物語が必要だという意見からするとこれは十分に必要な物語になっているのだとか読後にあれこれ想像の余韻が続く。
現代はどんなに長大な物語もできるだけ短時日に読み切ることが要請される時代なのでゆっくり玩味して読めないのが残念。
かつて『ウィルスン・シティ』という作品を書いた作者はその面で名誉挽回を試みたのかもしれない。



2003年02月24日(月) 宮部みゆき『ブレイブ・ストーリー(上)』(角川書店)

宮部みゆき『ブレイブ・ストーリー(上)』(角川書店1800円2003年3月10日初版発行p630)

大部でかさばる一冊である。悩める十一歳の少年が、困難な旅に出るファンタジー。
「R・P・G」というタイトルの小説を書いた作者が本格的なRPG小説を書き上げた。
ゲームを完遂するのと同じくらいの時間を読者に経験させるためにはこのくらい膨大な分量が必要だった。
読み始めたら日常生活の中で折りに触れて主人公ワタルやミツルのことを思い出す、あるいは思いを馳せる。
宮部みゆきは本気で別世界の構築とエンタテインメントな展開を志したようだ。



2003年02月23日(日) ジョージ・R・R・マーティン(訳=岡部宏之)『氷と炎の歌1 七王国の玉座(上)』(早川書房)

ジョージ・R・R・マーティン(訳=岡部宏之)『氷と炎の歌1 七王国の玉座(上)』(早川書房2800円2002年11月10日初版印刷2002年11月15日初版発行p446)

ダン・シモンズの『ハイペリオン』は数々の優れた中編からなる大長編だった。この『七王国の玉座』も同じとまでは言わないが、似たところがある。短めのエピソードの連続で必ずしも各篇が完結はしていないのだが、描写の密度が濃いので優れた短編を読んだ気になってくるのだ。
いかにもマンガの絵という感じの表紙から相当甘く軽く考えて読み始めた。
謎を秘めたプロローグのあとに「�機.屮薀鵝廚両呂貌�った途端、姿勢をただすことになった。
間違いなく傑作である。
読書、といよりも物語の醍醐味がある。



2003年02月22日(土) NHK「課外授業ようこそ先輩」制作グループ+KTC中央出版[編]『見城徹 編集者 魂の戦士』(KTC中央出版)

NHK「課外授業ようこそ先輩」制作グループ+KTC中央出版[編]『見城徹 編集者 魂の戦士』(KTC中央出版1400円2001年12月27日初版第1刷発行p204)

題名の通り、今を最も勢いのある編集者の核心を最も単純明快な方法で紹介した本。
この編集者に小学校で「編集の授業」をやらせるとは!また本人も引き受けるとは!驚きの出来事から生まれた一冊としかいいようがない。
感動と愛情がなければ著者に本気でものを言うことはできない。
見城徹の姿勢が小学生とのやりとりを通して明らかになる。




2003年02月21日(金) 永江明『不良のための読書術』(ちくま文庫)

永江明『不良のための読書術』(ちくま文庫620円2000年5月10日第1刷発行p287)

ゴダール式読書法のススメと題して「本を最後まで読むのはアホである」「おもしろい本は他にある」「おもしろくても、途中でやめる」などと生真面目な読書法をやめて不真面目でもかまわないと筆者は説く。
今は一日1冊読まねばならないとか、読み始めたら最後まで読み通さなければならないとかいったことをごり押しする人はいないので、もう当たり前のことになっている部分もあるが、あれやこれやそれこそ結構生真面目に主張する筆者が面白く感じられる。
津野海太郎さんと同様に目配りが広く、視点がしっかりしているので意外に有益な本である。




2003年02月20日(木) 森真沙子『快楽殿』(徳間書店)

森真沙子『快楽殿』(徳間書店800円2001年11月30日初刷P239)

古本屋、古書、戦時の秘話、伝説の雑誌、奇譚、インターネットなどの言葉に惹かれて読んでみたが、随所に光はあるもののいま一つ。
主人公が、盛岡にあるオンライン書店「書肆ロルカ」の店主という設定につられてしまいました。
残念ながら、おすすめの本にはなりません。



2003年02月19日(水) 永江朗『消えた本、残る本』(編書房)

永江朗『消えた本、残る本』(編書房1600円2001年2月10日初版第1刷発行p250)

この著者の本は勘所が明解なのでいつも面白い。分かりやすいだけでなく楽しく読めるのはなんでだろう。紹介にとどまらず著者の批評意識が感じ取れるからだろうか。
評された多くの本の中でちょっと気になったのは、『リストラと能力主義』(森永卓郎、講談社現代新書)で、「日本のリストラは、(中略)実は会社優先を残したまま能力主義を導入するというとねでもない方向に向かっているという。」(p105)と紹介している。
以下、目次の紹介
第一章 消える本、残る本(本のありがたみが減っている、本の贋金化、残る本とは)
第二章 どうしてこの本は売れたのかーベストセラーを解読する
第三章インタビュー 永江朗が語る<書評について>
第四章うわさの個性は書店。第五章フリーライターという仕事
あとがき
、という具合で、具体的に目配りが利いている。



2003年02月18日(火) 佐伯一麦『一輪』(新潮社400)

佐伯一麦『一輪』(新潮社400円1996年3月1日発行P185解説=磯貝さやか)
「一輪」は100ページ程度。「ポートレート」が65ページ程度。中編2編収録。清楚な風俗嬢と電気工の「おれ」とのすれ違いの純愛もの「一輪」と離婚する風俗嬢「私」の意気地を描く「ポートレート」の二作である。
解説を読むと私小説風らしいが、読んでいる最中には思いもしなかった。「一輪」はラストがしゃれているが、意外なほど特徴のない小説で、題材以外は端正な落ち着いた作品である。
後からじわじわ機になってくるような渋い現代の恋愛小説。結局、これも不思議な感じのする本といことになる。この新潮文庫は絶版らしい。




2003年02月17日(月) 神蔵美子『たまもの』(筑摩書房)

神蔵美子『たまもの』(筑摩書房2800円2002年4月25日初版第1刷発行P206)
写真集もしくはフォト長編エッセイというのでしょうか。それとも写真付き赤裸々日記というのでしょうか。文筆家の坪内祐三のもとを離れてこれも文筆家の末井昭のもとに走った女性の愛の自分日記写真集。不思議な本です。カラー写真よりもモノクロ写真の方がいろいろな意味で怖くリアルです。
昨年、とても評判でした。




2003年02月16日(日) 山村修『遅読のすすめ』(新潮社)

山村修『遅読のすすめ』(新潮社1300円発行2002年10月25日p173)
新刊本病に罹患している現代日本でゆっくり読んだり、すでに一度ならず読んだ本を読み直したりするのは邪道というより概念としてすでに存在していないことになっている。
本に対する分裂的症候群に陥っている人々への、この本は一つの処方箋である。
本が何冊あろうとも心静かに好きな本をじっくり読み、好みの文章を味わう。
読書の基本を確認できた。
夏目漱石から吉田健一を経て倉田卓次・北村薫まで著者の心遣いはゆきとどいている。



2003年02月15日(土) 鹿島茂『それでも古書を買いました』(白水社)

鹿島茂『それでも古書を買いました』(白水社1900円2003年1月25日発行p242)

19世紀のフランス文学研究者はおおむね愛書家でコレクターなのだろうか。日本人がいくらお金を持っているからといってパリへ出かけ古書のオークションに加わるというのは相当の覚悟がいると思われるが、著者は何度か決断して古書を入手している。
著者のコレクター魂が横溢する抱腹絶倒の古書(メインはパリの古書店)をめぐるエッセイ集である。
内容はもちろんだが、文章がこれこそ「すてき」というべきで巧みである。たとえば、これ。
「パリの古書店に猫の時間が流れる」(p82)
他の者には書けない説得力と含味のある文章をこの著者はこともなげに書いているように見える。
後半の、蒐集した挿絵本を20冊ほど紹介する「こんな本も買いました」部分は挿絵付きで眼福を感じる。



2003年02月14日(金) 堀川弘通『評伝 黒澤明』(毎日新聞社)

堀川弘通『評伝 黒澤明』(毎日新聞社2200円 第1刷・・・・・・2000年10月15日、第5刷・・・・・・2001年9月15日 p340)
黒澤明の最も近くにいながらも、黒澤明を最も遠くから眺めるごとく客観的に黒澤明その人と作品を語っている希有な人物伝である。
全8章からなり、「戦国合戦絵巻とプライベートシネマ」というタイトルの最後の第8章が特に印象的だった。
「影武者」「乱」から「夢」「八月の狂詩曲」「まあだだよ」への流れは世間的に???という評価が一般的だが、その謎の一端は上手に説明されたような気分になった。
プライベートシネマと位置づければ、評価に大きなぶれがあっても、当然である。
今、黒澤明作品がDVDでまとめて販売されているし、スカパーでも毎月二、三作品ずつ見られるようになっている。
この評伝の内容を思い起こしながら観客になる。
なんだばかやろう、と言うだろうか。



2003年02月13日(木) 津野海太郎『新・本とつきあう法(活字本から電子本まで)』(中公新書)

津野海太郎『新・本とつきあう法(活字本から電子本まで)』(中公新書660円1998年4月15日印刷4月25日発行p193)

出た時にすぐ買ってちらっと読んでどこかへ行っていた本。最近の津野さんブームのおかげで日の目を見た。
中野重治の『本とつきあう法』なら私も読んだ。当時、谷沢永一の『紙つぶて』も読んでいたような気がする。
読書についてのエッセイ集・時評集がちょっと流行していた時があった。そういう頃に読んだ。
この津野さんの新書は先日読んだ『本が揺れた!』のいわば前編である。こっちを先に読んであっちへ行けば話がよく通じるようになっている。

印象的意見。
「歩きながら、とぎれとぎれに本を読んでわるい理由がどこにあろうか。」(p41)



2003年02月12日(水) 道端秀樹(監修)『英辞郎』(株式会社アルク)

道端秀樹(監修)『英辞郎』(株式会社アルク 1800円2002年3月12日初版発行 6月6日第4刷発行 p151)
100万語収録CD−ROM付きスーパー英和・和英辞書で1800円は凄い。しかもこれはインターネット上のWEB辞書を切り出したもので大本はWEB上で成長・拡大し続けているのである。
昨年、書店で初めて見た時は、迷いに迷って結局触れもせず、だった。しかし、まもなく姉妹編いや兄弟編の『学辞郎』が出ると知り、尻に火がついた。
私は英語を勉強するぞ、と。これは啓示だぞ、と。
辞書の使い方の前に『英辞郎』誕生秘話・苦労談をじっくり読み込むと、この辞書のありがたみを覚えるだけでなくやる気も喚起される。
『学辞郎』が楽しみ。

印象的タイトル。
「交通事故を機に始まった快進撃」(p32)
普通はとんでもない話である。



2003年02月11日(火) 津野海太郎『本が揺れた!1997ー2001』(大日本印刷株式会社ICC本部)

津野海太郎『本が揺れた!1997ー2001』(大日本印刷株式会社ICC本部1900円2002年3月29日初版p265)
現在、本や出版のことを語らせたら右に出る者がいない津野さんの5年間の記録。時評集ということだけでなく近しい人たちとの対談記録も載っていて大変楽しみな一冊だった。
地味な本なので佐野眞一さんの本の売れ行きと比べるとはるかに低迷していると思うが、出版界や読書界(?)を支えているのはこの本の方である。

ちょっと印象に残った部分の抜粋。
「この本を備えていない図書館は即反省し、最低二冊は購入すべし、と言いたい。
古書価の上がったマイナーな作家の本なんかでも、出版社が過去の財産を活かしてそれよりも安くつくれれば、五百部単位でも復刻できます。たとえば葛西善蔵あたりでも、いま、千五百円の文庫で買う人が三千人くらいいるんですよ。まだまだそういう市場があるんです。」(p157、松田哲夫、筑摩書房専務取締役)

絶対読みたくなる、ミーハーのこころを誘うタイトルの抜粋。
「森銑三は電子本を拒否したか」(p43)
1938年生まれの著者、津野さんは理想的なエッセイストである。



2003年02月10日(月) 津野海太郎『歩く書物 ブックマンが見た夢』(リブロポート)

津野海太郎『歩く書物 ブックマンが見た夢』(リブロポート 1300円 1986年5月25日第1刷発行 p278)

もともと本や読書に関する本を読むのが好きだったが、最近これといったターゲットがなく寂しかったところに登場したのがこの筆者である。名前の何冊かの著書は知っていたのだから、再発見だろうか。
この本は17年前の本なので古い。レイ・ブラッドベリの『華氏451度』や『刺青の男』について力を入れて語っているなど時代の違いを感じる。しかし、新しいというか、一貫しているというか、全く古びていない。
だいたいレイ・ブラッドベリご本人自体がまだ現役の作家として新作が邦訳されているではないか。
あの坪内逍遥を語った本がこの著者の最新刊である。
今最も深くて濃い、本と本に関わった人についての語り部、津野海太郎の本が一番面白い。



2003年02月09日(日) 津野海太郎『読書欲編集欲』(晶文社)

津野海太郎『読書欲編集欲』(晶文社 1900円2001年12月15日初版 p254)

『季刊・本とコンピュタ』(大日本印刷)の総合編集長を務める著者のエッセイ集。
本のこと、雑誌のこと、編集のこと、自らのこと、読書のことについて本当によく考えているなと感心してしまうが、人間についてもっとも深くかつ強く書いていることには感動を覚える。
本や雑誌以上にそれに関わった人間たちが好きなようである。
森銑三という先達がいるがその衣鉢を継ぐ語り部の語りとして抜群に面白かった。
今江祥智、小野二郎、片岡義男、植草甚一、羽仁もと子など登場。



2003年02月08日(土) 光瀬龍『消えた神の顔』(ハヤカワ文庫 )

光瀬龍『消えた神の顔』(ハヤカワ文庫 560円1979年6月30日発行 1996年4月30日五刷 p331)

重厚な長編型SF作家の多彩な語り口が楽しめる短編集。全十五編。
「アトランティスは、いま」「飛加藤を斬れ!」「二十年前、新宿で」「ボレロ一九九一」「それでは次の問題」「錆びた雨」「人は情によって死ぬ」「それは元禄十五年か、それとも十六年か」「同業者」「天の虚舟忌記(あまのうつろぶねいみき)」「不良品」「乗客」「いまひとたびの」「私のUFO」「消えた神の顔」
本格SF風の作品やSF時代小説はもちろん、皮肉な結末のショートショートまであるお徳用的作品集。




2003年02月07日(金) コニー・ウィリス(訳=大森望)『航路(下)』(ソニー・マガジンズ)

コニー・ウィリス(訳=大森望)『航路(下)』(ソニー・マガジンズ 1800円22002年10月10日初版第1刷発行 10月24日第2刷発行p434)

下巻は一気読みできた。
主人公ジョアンナが、さらに思いがけない人物との出会いによって謎の真相にぐぐっと接近するが・・・・・・というわけで、さらに七転八倒、七転び八起きのドタバタ騒ぎの果てにえーっという驚愕の展開になる。
そのとき、キュートなリチャードのとった行動は、
泣ける。
下巻は、感動てんこもり、といったら嘘つきになるが、ある部分からはじっくり確実に読んでいくのがよい。
結末は、奇妙もしくは驚き。
村上春樹の『海辺のカフカ』(新潮社)よりもドライだが、結末を比較すると『航路』の方がウエットかもしれない。
単純に不思議な感動があることとその絵柄がセンス・オブ・ワンダーそのものだから。手抜きなしの「本格」である。



2003年02月06日(木) コニー・ウィリス(訳=大森望)『航路(上)』(ソニー・マガジンズ)

コニー・ウィリス(訳=大森望)『航路(上)』(ソニー・マガジンズ 1800円22002年10月10日初版第1刷発行 10月24日第2刷発行p413)

死後の世界はあるのか。臨死体験者が見てきた世界は死後の世界なのか。それとも脳が生み出す単なる妄想にすぎないのか。
認知心理学を専門とする医師のジョアンナは臨死体験を科学的に解明するために臨死体験者の聞き取り調査に日々奮闘を続けている。
そこに登場した神経内科の医師リチャードとともに疑似臨死体験の実験を行い、真実にたどりつこうとするが・・・・・・。
400ページを越えるとさすがにその長さが負担で、よいコンデションを維持して読み続けるのは難しい。設定や場面が呑み込めて提出される謎に魅力を感じるまで時間がかかった。「読み始めたら止まらない!」と腰巻きの宣伝文句は強がるが、すれ違いや行ったり来たりなどのドタバタ喜劇的な面白みを秘めていても、またリチャードがあのハーポ・マルクスのポケット技を駆使して名場面を演出しても、辛抱が必要だった。
さまざまな試練のあとに主人公が思い切った行動をとるあたりからやっとこちらの集中力が物語りの展開に食いつき始め、巻末で予想外の人物との出会いに驚いたら、もう下巻に進むしかなくなっていた。
もうこのときには、なんだこの話は、と物語の仕掛けにすっかりはまっているのだった。
それは、必ずしも「読み始めたら止まらない!」ほどではないが、主人公たちと一緒に謎の解明の航海に乗り出した気分である。
前作の『ドゥームズディ・ブック』がハヤカワ文庫になるそうだ。これも長大な物語で読み続ける苦労を強いられたが、読み応えは十分あった。



2003年02月05日(水) エリック・ホッファー(訳=中本義彦)『エリック・ホッファー自伝 構想された真実』(作品社)

エリック・ホッファー(訳=中本義彦)『エリック・ホッファー自伝 構想された真実』(作品社 2002年6月5日第1刷発行 8月20日第4刷発行 190p)
紹介文にはアメリカの社会学者・港湾労働者とある。18歳で天涯孤独になった後ロサンゼルスに渡りさまざまな職を転々とするが、
28歳の時の自殺未遂を機に季節労働者となり10年間カリフォルニア各地を渡り歩き、39歳からはサンフランシスコで港湾労働者として働きながら49歳の時にTHE TRUE BELIEVER(邦題『大衆運動』)を発表、著作活動に入る。
沖仲仕の哲学者として知られている。
普通の学校教育を受けておらず、すべて独学の人。その辺のことは自伝なので詳しく書かれているけれども、読み終わって感じるのは学ぶことへの情熱とともに人との交流が豊富だったということだ。さまざまな人たちとの語らいが実によく登場する。
自覚的な労働者であり学問者であった著者はめぐり会いにも大きな価値をおいていたように思う。



2003年02月04日(火) 居作昌果『八時だョ!全員集合伝説』(双葉文庫)

居作昌果『八時だョ!全員集合伝説』(双葉文庫2001年7月20日第1刷発行 277p解説=久世光彦)
あの一世を風靡したお化け番組のプロデューサーが書いた番組裏面史。
当時の番組作りへの情熱が伝わってくる著者の文章は、特にドリフターズのリーダー、いかりや長介の人となりも見事に描写している。
単なる、昔はよかったね式に終わらせない腰と肚のすわった本である。軽いノリの題名からはとうてい想像できない濃さがあるのはその仕事が並外れてしんどいものだったからだろう。





2003年02月03日(月) 津野海太郎『歩くひとりもの』(ちくま文庫 )

津野海太郎『歩くひとりもの』(ちくま文庫 1998年3月24日第1刷発行254p)
いわゆる親本は1993年4月、思想の科学社より刊行された。
独身男を話題にした軽いエッセイ集かと思いきや随分な重みがありました。
「自分用の応援歌」「ひとりもの、年を越す」「コーヒーを入れる老人」「妹の力」「家庭の終わり」「男たちが知らない本」「料理書の哲学」といった題名から内容がある程度推測できる前半七編の後に著者のとんでもない実体験談「なかじきり1 わが愚行」が入り、以下次のように続いていく。
「死体術」「手紙ぎらい」「咳をしてもひとり」「なぜ結婚しないの?」「ニベもない」「自分を変える法」「不意打ち」「他人の家庭」「なかじきり2 ブレヒトと女たちー佐伯隆幸氏との対話」「神は細部に・・・」「歩きながらの読書」「赤いギンガムチェック」「異装について」「おだやかな根拠地」「本を破る」「再編集のたのしみ」「目次癖」「なかじきり3 歩く男の死」「三十歳」「四十歳」「幸福小説のつくり方」「スタイルに凝る」「歩く老人1」「歩く老人2」「散髪の日」「あとがき」「鼎談 人生はなにが起こるかわからない(津野海太郎・山口文憲・関川夏央」「文庫本あとがき」
三編のなかじきりが読みごたえがあった。特に三つ目のあの長谷川四郎のことを書いた「歩く男の死」が重厚でのんびりとしていた頭がショックを受けた。昨年『父・長谷川四郎の謎』(草思社)にも引用されていた長谷川四郎の文章の同じ部分が紹介されていたことにも驚いた。
カバーデザインが南伸坊描くところの旧式のロボットなので軽く見たが、印象が大きく変わった本でした。



 



2003年02月02日(日) 松本賢吾『月の虹(ムーンボー)』(毎日新聞社)

松本賢吾『月の虹(ムーンボー)』(毎日新聞社1800円 2002年10月15日印刷 10月30日発行 283p)
初めて読む作家。故・安原顯が折に触れて褒め上げている作家でこの作品も傑作と評価していたので読むつもりだったが、その褒め手の死によって早まった。
新宿歌舞伎町を舞台にした、いわば「仁義なき戦い」である。
もっと救いのない結末を恐れたが、最悪のケースでは終わらなかった。アンチ・ヒーロータイプのデカだけでなくそのほかの人物達の造形も見事で完成度が高い。褒める人が褒める人なので勘違いしたが優れた職人の腕前である。
生方利三、長田、辻村、松阪、星川などいい味出している役者が5人以上はいる。



2003年02月01日(土) 本の雑誌社『本の雑誌 2003年2月号』(本の雑誌社 )

本の雑誌社『本の雑誌 2003年2月号』(本の雑誌社 530円 112p)
巻頭の「今日の1冊」から巻末の編集後記らしきものまで一気に通読した。
適当に拾い読みしてすべて読んだかどうか怪しいうちに次の号が出て、またちょっちょっと拾い読みして・・・・・・あまり完全読破する種類の本ではないが、今回は読んだ。
余計な、または手抜きと思われる文章がなく実に充実感を覚えた。読みごたえあり。
穂村弘の棒パン日常2「本を覗き込む」は現代日本男性成人の有りようの一面を見事に目撃していて、一読に値した。




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