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黒と茶の幻想/恩田陸(講談社) 2002年08月21日(水) なんだかこう、液体のようにじんわり染み入るような物語を書くよなあ…と思いました。大抵の小説って、情景とかが描かれて、そこからだんだん人物の行動とか会話とか内面に入っていったりするじゃないですか。で、私は普段、情景とか説明文ぽいところは、けっこう斜め読みしちゃうんですよ。でもこの人は最初から、じんわりと染み入るような言葉から始めていく。俯瞰から局部に至るのではなく、最初から物語に浸食されてる。 この話って、表立っては4人の登場人物が山の中を歩いてるだけの話なんだけど、それぞれの会話と過去の回想で、ドラマを生み出してる。不思議な美しい謎を解く、それぞれの過去の謎を解く、それだけの話で、この厚さを一定の液体で端から端まで満たす。すごいなあと思う。 あ、かなり褒めてるように読めますけど、私の好みで言えば、この人の話の中では中の上でしょうか(笑) 読後感は割と良いです。でも、あまりカタルシスを感じなかったので。。 筋立て的には、「ネバーランド」「木曜組曲」みたいな感じです。 ちなみにこれは「三月は深き紅の淵を」の一話目の話の中に登場するお話のようです。 |