気まぐれ日記
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変換してそのままってあるんですよ。急いでいるときってなんか変換できません。ごめんなさい、いいわけです。暇なときにでも直します。夏目編、今週で終わりませんね、きっと。
「じゃあ、そのうち伺いますね」 おかゆと、卵味噌がのった盆を机にのせ彼はありがたく食べることにした。 「ずいぶんと本があるんだね」 本も一種の嗜好品である。書物の代わりにネットなどで調べたほうが断然早く、安上がりである。 「曾じいさんの本なんだ。昔はネットもあいまいだったからね」 井上が本を見回す。古い伝承の本、昔の歴史の本、世界各国の本も多い。ただ、どれもみな古く、ばらばらに並べられている。 「妖精の本? 神話を考える? 民俗学者というのはこういうものを調べるのかい?」 「それは小説用だよ。でも。論文書く時にも使っているしね」 「トーマ様は物知りだからなんでも教えてくれます」 セリナはうれしそうに言った。 「セリナは、妖精が宿ったみたいだね」 「妖精が宿る?」 「日本で言えば、ツクモガミかな。魂がこもるというか、なんというか。セリナはなんだか人間くさくてね」 「たしかに、セリナは普通のドールじゃないからね。フェアリードールか……」 「妖精人形……」 「新しい商品名にしようかな」 「売れるといいね」 「ああ、売れなかったら大変だからね」 食べ終えると井上は帰ってゆき、夏目は片づけをセリナに任せた。 「バイト先に電話しないとね」 夏目が電話はめったに使うことがない。だからいつも基本料金くらいしか払ったことがなかった。 受話器を取ろうとした瞬間、電話は鳴った。夏目は少し戸惑ってから受話器をとる。 「もしもし?」 「ああ、夏目さん。あたし、美幸ですう」 きんきんとした声が受話器から漏れた。思わず夏目は耳から放した。 「なんだ、天藤さんか」 「なんだって、ひどいですう。あ、明日うかがってよろしいですね」 「明日?」 「締め切りですう」 「あ、やべ」 「やべって、原稿できてないんですかー?」 「……いや、その、もう少しと思っていたけど、風邪ひいちゃって」 「いやーん。お大事にです。でも明日はうかがいますう」 美幸はそれだけ言ってがちゃりと切った。 「……」 「トーマ様、誰からですか?」 「ああ、編集部の天藤さん。明日来るって」 セリナが差し出した体温計を脇にはさめ、夏目はため息をついた。 「ああ、もう今日はできないな」 バイトに断りの電話を入れる。人は余っているから一週間来なくていいと言われた。 「どうしますか?」 体温計を取り出す。熱はまだ少し高い。 「寝るよ。お休み、セリナ」 「おやすみなさい、トーマ様」
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