気まぐれ日記
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2003年07月14日(月) 井上編

 多分短いです。新ドールが売れるかどうかの話だから。でも、あらたな気持ちでスタート。

 「今夜?」
 夏目が聞き返した。
 「ほら、この間、招待するって言ったじゃないですか。妻がどうしても貴方に会いたいらしく。娘も喜ぶだろうから」
 電話口で井上が楽しそうに言う。
 「まあ、いいか。でも、井上さんちはどこ?」
 「ああ、そこから次の駅で降りて。僕が迎えに行くから」
 そんなわけで、夏目は井上の家に行くことになった。
 「セリナとどこかに行くのは久しぶりだね」
 セリナを連れてくと、行き交う人々に注目されてしまう。そのためセリナは留守番が多い。今日はそうも行かない。何せセリナがついてこそのお呼ばれである。
 「あ、そうだ。ケーキでも買おうか」
 こんなとき、やはり母の教えが身についていた。夏目の家に来るものは手ぶらだが。夏目が訪れるときはそうは行かない。
 「娘さんはどんなのがいいかな」
 ケーキ屋のガラスケースを眺めて夏目が悩んでいた。
 「モンブラン……確か井上さんが言ってました。娘さんはモンブランが好きだって」
 セリナが言うと店員が驚いた顔をしたが無視。夏目はうなずいて、モンブランとあと他のケーキをいくつか求めた。
 ケーキ屋を後にし、駅へ向かう。聞いたとおりそこから次の駅に向かうと、井上が待っていた。
 「こんばんは、井上さん」
 「ああ、夏目さん。今晩は。セリナ、元気だったかい?」
 「はい」
 ドールは病気をしない。いつでも元気でなければならない。井上のそれは挨拶に過ぎないが、それでもまあ、勉強になっている。もちろん、セリナの。
 「さ、こっちだよ」
 井上の家は大きかった。まあ、ドールの開発者ならうなずける。


草うららか |MAIL

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