気まぐれ日記
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なのに、あまりうれしくないのは何故だ? なんだか憂鬱なのは、抜けた人の代わりが入ってこないから。ちゃっちゃっと行きましょう。今日は、カシス。何度か名前は出ているね。こいつ、書きやすそうだから。
俺がベグゼッドに頼んだものは一振りのナイフだった。なぜなら、モーサビット兄貴の短剣を一本駄目にしたから。その後、俺の顔を見るたびにしつこく弁償しろと言う。ベグゼッドが知っている店でいいものがあるというので、それで任せた。 が、二時間以上たっても戻ってこない。近くだからそんなにかからないと言っていたのだが。 「ベグゼッドが帰ってこない?」 グオンに言ったら、思いっきり不審な目で見られた。 「なんだよ」 「何を頼んだ?」 「なにって……」 俺は手短に説明したが、それを聞くとグオンは拍子抜けしたように仕事に戻った。 「おい、いいのか?」 「いつものことだ。気にするな」 「はあ?」 「まったく」 グオンは再び俺の方向いて言う。 「お前は、ベグゼッドに一時の自由をやったんだ」 「だから?」 グオンはお決まりのため息をついた。口には出さないが、「この馬鹿が」と言っている。 「ベグゼッドはお前のようにいつも外に出ているわけでないんだ。そのうち帰ってくる」 俺はグオンの部屋を出た。そして、ベグゼッドの部屋に戻ると奴は帰ってきていた。 「ただいま」 「おう。遅かったな」 「まあ、いろいろな」 約束のナイフは皮布に包まれている。解くと確かに立派なナイフだった。 「俺が使いたいくらいだよ」 「それはよかった。ところで、今日は街の露店日でついでにいろいろ見て回っていたんだ」 それで、遅かったようだ。まったく、人の心配をよそに……。 「食いものもたくさん売っててね、これ食べる?」 怪しげな丸く焼いたものを差し出した。 「たこやきだって。東の国アンギルスの料理だってさ」 「……ベグゼッド、楽しかったか?」 「うん」 ベグゼッドはうれしそうにうなずいた。
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