| 2001年09月18日(火) |
『どくとるマンボウ航海記』 |
たまに自分の書棚に飽きると、父の書棚から本を失敬してくる。 カバーがなかったり、日焼けしたりとお世辞にも美しいと言えない状態であるが、 若かりし頃の父が触れた本であると思えば、やはり貴重な財産なのかも。 今回も父の書棚から漁った一冊を3日かけて漸く読了した。
・『どくとるマンボウ航海記』(北杜夫/角川文庫)
旅行記である。 医者でもあった著者の、「照洋丸」の船医として実体験した半年余りの船旅記。 つまり、ノンフィクションである、「一応」。
何故「一応」なのか。 それは今作品がどこもかしこも胡散臭くて仕方ないからである。 どくとるマンボウは船上であろうと地上であろうといたってマイペース。 ちょっとしたハプニングもでっかいハプニングも何のそのでマイペース。 現在でこそ海外旅行などパスポートがあればちょちょいのちょいの時代であるが、 当時の日本人にとっては海外旅行はまだまだ縁遠いものであったはず。 さらに慣れない船の長旅でどうしてこんなに普通なのと首を傾げるばかりである。 勿論、全部がノンフィクションだなんて信じ込むほどピュアではない。 何せ歴代芥川賞作家の1人、平凡な事実を面白おかしく仕上げるスパイスなんて ふんだんに持っているだろうし、使ってもいるだろう。 しかし、だからと言ってここまで現実味がないというのもすごい話だ。
この本を読んで海外に行きたいと思った人は果たして何人いるのだろうか? 少なくとも私は行きたいとは思えなかった(苦笑) しかし、どれだけ国が成長してもどこか外国に引け目を感じる日本人のお国柄を 当時の時点ですでに一蹴してしまっている勢いには天晴れの賛辞を送りたい。
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作品を読み終えた後、後書、解説を読んで、ふと奥付を見てみた。
『発行者 角川源義』
うひぃ、現社長・角川春樹氏の御父上の時代の本であったか。 さらに角川源義と言えば古典研究、特に私の修論題材も含んだ軍記の大研究者。 奇しくも研究室から角川氏の著作集を借りてきた日なだけにちょっとご縁を期待。 どうか私の修論に力を貸してくださいませ。
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ラスト、今回最大の衝撃的事実。 作家北杜夫・・・本名斎藤宗吉、なんと大歌人斎藤茂吉のご子息だった。 池澤夏樹が福永武彦の息子だと知った時以来のビックリを覚える。
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