ヤグネットの毎日
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2001年10月14日(日) 2つの感動的なコンサート

 
 14日は午後から「京フェスタ2001」に家族三人ででかけてきた。妻は顔の怪我の後遺症で歩くとめまいと吐き気がするので、行くかどうか思案したが、調子が悪くなったらすぐに引き返すことにして、行くことにした。
 伏見桃山城キャッスルランドは、満員の2万人。人、人、そして人だった。乗り物は乗り放題だったが、待つだけで一時間ぐらいかかりそうで、今回はあきらめた。
 ぐるりと出店などを見終わって、文化のステージの「上田正樹ライブコンサート」をみた。
 このあいだ、テレビに出演していたが、日本でブルースを歌わせたら右にでる人はいないと、そのテレビで紹介されていた。あのヒット曲「悲しい色やね」以外で、上田正樹の曲を歌ったこともじっくり聴いたこともなかった私にとって、日本でブルースを歌わせたらトップということが、どれほどすごいことなのかが理解できずにいたのだが、ライブを聴いて、理屈抜きに納得できた。
 こいつはすごい!バックの演奏も抜群、ベースとドラムのリズムが心臓のあたりをズンズンと突き上げる。
切なさとやさしさが織り混ざったような上田正樹のハスキーボイスは、冒頭からいまのテロと戦争の理不尽さを、日本の政治の腐敗を告発。そのあとも、次つぎと歌い続け、あの「悲しい色やね」は会場も一緒にシングアウト。
 ブルースとは、人間の醜さや弱さと正面から向き合い、それに打ち勝とうともがく人びとの心を歌うものなんだ、そんなことを考えた。
 ライブがはじまったころは、少しどんよりしていた天気も、終わる頃にはすっかり秋の空に。すこし舞台がセピア色に染まった頃、キーボードのやさしいメロディーにあわせて、上田正樹がやさしく語りはじめた。
 「いま、世の中、すこしおかしい、テロもそうだし、教師が自分の生徒と同じぐらいの年齢の子に手錠をかけたり…でも、音楽は、戦争や暴力や争いごとともっとも対極にあるものだ。だから、オレはこれからも歌い続けていきたい。」「小さな子どもたちが知識をいっぱいつめこんで、賢くなって、すばらしい世の中をつくってくれるように」そんなメッセージを送ってくれた。(メモをとっていなかったので、正確に言い表わしていないかも)
 ベースとドラムの音がいつのまにか、僕の心臓の鼓動と重なるくらい、僕もテンションがあがって、自然と体が動いていた。(巨体が揺れ動いて後ろにいた方にはたいへんな迷惑だったろうに)
 帰り、ニューアルバムに上田正樹からサインをしてもらった。サインをしながら、「まさあき、まさみ…。そして僕がまさき。近い名前やね」といって、握手してくれた。サングラスをはずした上田正樹の目はとてもやさしくて、手はあたたかくやわらかかった。
 ブルースを地でいく人間なんだなと、あらためて思った。これからも応援していきたい。

 夜は、梅原司平さんの歌手生活30周年の記念コンサートを聴きに、京都市内へ。
 
 梅原司平さんは、自称「売れない歌手」と自分を表現する。だから、コンサートをひらくスタッフは必死にチケットを売ってくれ、みんなの心が集まって、すばらしいコンサートになる。
 私のとなりのほうに座っていた人が、休憩中、「なんで、こんなすごい人が売れなかったの?」と興奮ぎみに友人に話していた。それくらい、司平さんの歌には、愛があり、メッセージ性があり、高い音楽性があるのだ。彼のトークは、絶品である。昨日も、高校を卒業してから、職を転々とし、生活が安定しなかったこと、失業やシャンソン歌手として花開かなかった頃の苦しみ、そんなときに、いつも自分を励ましてくれたのがギターであり、音楽であったとしみじみ語る。こんな話を聞くだけで、僕は泣けてくる。僕のこれまでの人生も決して一度になんでもクリアしてきたものではなかったから。父親の借金で家をなくし、家族もバラバラ。そんななかで、人のやさしさとかあたたかさ、というものに救われてきたことが何度もあった。
 だから、司平さんの歌声は、「僕もいっしょだよ、心配しないで」と語りかけてくれているようで、癒されるのだ。
 プログラムには、いま、学校現場での演奏機会が増えていると書かれていた。演奏の合間のトークでも、先日は愛知県の校長会で校長先生1500人を相手に歌ったそうだ。
 小さな出来事でも人間の真実に光を充あて、ありのままに歌う司平さんの歌が評価されているのだと思う。とくに、昨日のトークでハッとさせられたのが、「いまの子どもたちに、自分に光りがあてられるような出番があるでしょうか?まわりの大人たちは、子どもに出番をつくってあげているでしょうか?」というメッセージ。子どもの心をひらいて、豊かな感性とまわりを大切にする思いやりを育てる。音楽の役割がますます大切になっている、とつくづく思った。
それにしても、一日で二つも感動的なコンサートを聴けて、本当に贅沢な一日だった。
 昼間の上田正樹と梅原司平に共通しているのは、どちらも自らを「あまり売れていない歌手」と表現していること。売れるものを求めていく、音楽産業の流れにくみせず、自分が表現したい音楽を追求し続けている点において、二人ともこだわりつづけている。だから、人の心をとらえてはなさないのだ。
 こんなすばらしいアーティストが注目をあびて、メディアにのっていかないのは、いまの日本の音楽界が商業ベースにのりすぎていることから生まれる弊害だと思う。
 僕は、二人を賞賛し少しでもそのすばらしさを広げるために自分ができることをしようと思う。
 すばらしいアーティストの音楽を一日に2つも聞くという、本当に贅沢な一日を過ごすことができた。
 


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