■娼年/石田衣良 違和感。現実感がないというか。
主人公は大学生で、ただ淡々と生きている生活から、男娼になることになり、そこで初めて自分を知る・・・みたいな物語。
なんで違和感があるんだろうと考えると、それは恐らく最初に戻って現実感がないから、だと思う。それは物語のような経験がないからというからということではなく、もっと根本的な部分にあるような気がする。
現実感を感じていない主人公だからそういうことである意味正しいのかもしれないんだけれど、なんだか作者も本当のところ、主人公だけではなく、登場人物の心情を想像しきれなかったんじゃないかと。
あ、あと、自分の正義を押し付けてくる人は嫌いだ、みたいな書き方だったんだけど、そういう人を完全に拒否するのも結果としてやってることは同じじゃないんだろうか、とか思った。
■蕎麦屋の恋/姫野カオルコ きっかけは何気ない生活からでも生まれる。そんな感じ。登場人物の女の人が、こたつに一緒に入ってテレビを見る、というのがものすごく素晴らしいことではなく、普通の人は幼い頃に経験しているものだという部分がなんだか印象的だった。当たり前だと思っていることは意外と変なことが多い。
■不自由な心/白石一文 基本は割り切れない恋とか生活とかの短編集。さらに要約すると不倫が多かった。変に晴れ晴れとしたラストも、どんよりとしたラストも、微妙だった。
でも、飛行機事故にあう直前に携帯電話で話す、という物語は本当に切なかった。
■アッシュロード/永瀬隼介 ハードボイルド。なんというか極道物。面白かったんだけど、一般人の興梠が痛々しかった。必死に考えても、極道とはやっぱり違う。生きる世界が違うってこういうことなんだろうなあ、と。
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