Mother (介護日記)
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2002年04月01日(月) リフレクソロジー

『おなかが空いたけど、絹江ちゃん、ご飯なぁい?』

『え? ご飯? さっき食べたばっかりでしょ?』

『あら、ホント? 何食べたっけ?』

そんなやり取りを聴いていて目が覚めた。相変らず寝ている私だった。

・・・しかし。

とうとうそこまで来ましたか。

ボケて来ると食べたことを忘れるというのは、本当なんだと確認した。


* * * * *


リフレクソロジー。 簡単に言えば「脚のエステ」だろうか。

東洋的なものは痛くて、英国式のは痛くないのだという。
私も一度、SPA内でリフレクソロジーを受けたことがある。
パウダーやオイルを使って、脚のツボ押しやマッサージをするのである。

昨日会ったのらさんはリフレクソロジーの勉強中なので、
『練習したいから、今度お母さんの脚を貸してね』と言っていたが
今日早速来てくれることになった。

母のかかとはガサガサになっていて粉を吹くほど荒れていた。

施術前、いきなりそんな足では申し訳ないので、
お湯を汲んだバケツに足をつけて少しでも柔らかくなればと思った。

のらさんは、脚の裏のツボを記した資料とパウダーを持参していた。
鉛筆で細かな書き込みがあり、熱心に勉強している様子がうかがえた。

ベッドに横たわり、バスタオルを敷いた上に膝下の脚を乗せてパウダーを塗り、
そのしなやかな手指で、ツボやリンパなどを刺激していた。

まだ起きたてだった私はその間に家事に専念していた。

施術の時間はおよそ1時間。
膝下だけで1時間というのも、大変な作業だと思う。


実は、のらさんのお父さんはこの冬に亡くなったばかりだった。

うちの母が入院した、退院したなどと騒いでいる間に、
のらさんも、糖尿を患っているお父さん連れて病院に通っていたが、
ある日、お母さんとの会話中に脳梗塞で倒れて入院、わずか半月で亡くなってしまったのだった。

のらさんは、お父さんが半身不髄になることを覚悟して、
自分の学んでいるリフレクソロジーを活かそうとしていた矢先だった。



『お父さんには何もしてあげられなかったから・・・』



通夜の日、のらさんは私たち親しい友達の前でも取り乱すことはなかった。

でも、今日はどんな思いで母の脚をやってくれたんだろう・・・


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