傷痕
僕が最も恐れ最も必要としているものは愛情である 僕は人間が怖い 人間は感情を持ち そしてその感情は常に変化し得るものだからである だから僕はその変化に対応出来る程度までしか 人間を愛する事は出来ないし また 愛される事が出来ない 万一 その限度を越えて深入りしたり 悪い人間になった時には 僕は自身を戒める 僕にとっての戒めには二つの意味がある 一つは前に述べたような自分に罰を与える為のものであり もう一つはそれによって生を実感する為のものである カッターナイフで傷付いた僕の身体は その傷痕が消えるまでは 清純でなければならないのである
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