Simple Song
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2002年10月04日(金) 土から生まれた姫君(6

【今日、父と母が、はじめて家に家族以外を招いたの。
 "おさむらい"って人って言ってた】

今日も、樹の下へ浪は来ていました。

【知ってるよ。おにぎりみたいな顔の男だろう?】

それを読んで、樹は驚きながら、彼を見る。

【俺が父様に頼んだからな】

樹が、じっと、文字を追ってから浪の顔を見た。

いつものまぶしい笑顔。
でも、目がまっすぐに樹を捕らえる。

【樹、私とずっと一緒にいてくれないか?
 ずっと、ずっと一緒にいてくれないか?
 返事は今すぐでなくてもいい。
 今日、君の家に着た男が帰るまでに、決めておくれ】

それを、すらすらと紙にしたためて
また笑ってから
驚いたその少女の頬にほんの少し触れる。
そして、驚いた少女を残して、帰ってしまったのでした。

樹は、驚いた顔を少し曇らせて、
そして、悲しみにどっぷりと漬かったのです。

私が、この世界に出現した意味。
生まれ出づることの出来なかった私の宿命。
そして、言い渡されている使命。
浪の言葉は、ものすごくうれしかった。
でも、私はそれに応える事が「ある意味できない」
答えたら、その時は、さよならするときだ。
そう思ったら…私は…



その夜、彼女の涙が止まることはありませんでした。

つづく。


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