目口覚書
■目口覚書■
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2001年10月08日(月) 無言電話

この間 家人が飲み会で留守の夜 遅く
無言電話があった。

「もしもし?」
数回聞けども相手は何も答えない。
ただ受話器の奥からTVの声のような男女の会話が聞こえたような気がしたので
こっちのTVの音声を落として チャンネルをかえまくった。

おなじ音声のTV番組をキャッチしようと 思わずしたのだが
そんなことわかって何になるというのだろう。

「ちょっとあんた。
今 ○チャンネル観てるやろ。んぁ?
どや、あんたの素性はもう割れてるで。」

相手の覆面性をはぎとってこらしめてやりたかったのだと思うが
我ながら力の薄いことをしてしまった。

正直1人で部屋にいるのは怖いので
おかしな脅迫傾向に走ったのだろう。
「・・・あぁ ○チャンネル観てる。 で?」ってもし言われたら
どう応じればいいんだ。
「そ、そうか。面白いか、な?」と 途端に私は弱気になるに違いない。

しかしどのチャンネルも 電話から聞こえる小さい音と合致するものがなく
かえってほっとしてしまった。

じーっと受話器をもったまま様子をうかがうが、
この相手は何も喋ろうとしない。

もし相手が はぁはぁ言ったり 下着の色でも聞こうものなら
「この鶴光めが!」と 大昔のオールナイトニッポンを知ってる人間しか
理解できないせりふで罵倒しようと思った。

だが相変わらず沈黙と TVかラジオからのような遠い音声が聞こえるだけ。
すんごく不愉快なのだが、ふと 
さっき「○時に帰る」と電話してきた家人の携帯電話が
どうかした具合でリダイアルになってしまい
その音声が今 届いているとしたら と思った。

TVと思った男女の声は 実はTVではなく
リアルタイムな家人の状態であったとしたら。
そして、そこに大変な秘め事があったとしたら。
す、すごいドラマだ。

わたしは 無言の受話器を握り締めて 妄想と鼻の穴だけを大いに膨らまし
気が付けば数分経ちそうだったので 静かに受話器を置いた。

翌日、ダンナさんに昨晩の無言電話の話しをし、リダイアル疑惑も伝えたが
その時刻に発信歴はなかったそうだ。
つくづく自分は被害妄想のケがあると思った夜なのであった。
*********

とってもさばさばと まるでいくらでもこれからチャンスのある試験に
落ちた人間にいうかのように「残念だったわねっ」と
私に例のことを慰めた人がいた。

事態は決して深刻でないことを強調した
それは、私に対する彼女なりの思いやりだ。

でも私はぽかんとしてしまった。
再度同じ言葉を繰り返されてようやく少し笑って「そうね」と言った。

だけれど やはり私の中にしこったのは、
もしかしたらもうチャンスはないかもしれないのにという怯えや
同じ経験をしていない人間に対する嫉妬もあったかもしれないし、
優しくされたいという 甘えもあったと思い当たり
うまく答えないとお互い恥ずかしいと思って
笑って「そうね」といった後「がんばるわ」といった自分が恥ずかしかった。

いよいよ自分が醜くなるようで 
自分に棲む鬼にぶるっとした。


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