目口覚書
■目口覚書■
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2002年01月05日(土) 夜行バス珍道中(その3)

真夜中の甲府ICで、これから東京に引き返すことを
運転手から申し渡されたその瞬間、
薄い室内灯の中で ガバと向き合い見つめあう2人。

以下目だけで喋る。
(と、とーきょー帰るって ゆーたよな?)
(うん。言った、言った)
時計を見せて
(今 1時やろー・・ほな東京に着くノン3時・・・)
指を3本立てて眉間にシワを寄せる。

そこで運転手の再なるアナウンス。
「今から戻りましても、電車がございませんので
ドライブインなどで待機しながら戻りまして、えー
始発まで車内で待機していただきます」

「あー、なおー、払い戻しをみどりの窓口で致しますが
本日のバスはすべて東京駅に戻りましてー えー
お急ぎのお客様は払い戻しは後日にされたほうが 
よ、よろしいかと・・・・」

運転手 もうしどろもどろ。

ということで、やはり戻ること決定は覆えりそうにないので
もそもそと鞄の底から こんなこともあろうかと用意しておいた
森永のダイジェスティブクラッカーを食べる。

ボリボリボリボリ・・・
ボリボリボリボリ・・・・・
あぁ 旨い。
マクビティも旨いが どうしてこう胚芽入りビスケットって
歯ごたえがサクサクで 旨くって・・・

いや 今はそれどこぢゃなかった。

かくして、甲府で1時間待機、談合坂で1時間待機 という無駄な時間を
過ごしてバスは2時間かけてきた道を4時間かけて帰った。
そうすることで東京駅前で長時間待機することを避けたと思われる。

バスの中の人は誰もごねたりしない。
日本人って 従順なのか 正月早々の不運に言葉を失っているのか
睡魔に襲われていて事の重大さに気づいていないのか。
その最後の例がぴったりあてはまるダンナさんはすっかりいびきタイムだ。
他の人達に迷惑がかからぬように、その度に鼻をつまむ私。

会社勤めの時から必携の「新幹線時刻表ポケットサイズ」を広げる。
始発は6時丁度ののぞみ。ひかりの始発は6時11分・・・その次は・・・
果たして正月3日の東京発の指定席なんてとれるのか。
最悪ダンナさんは家に帰ってもらって私だけ自由席で立って行こう。

いろいろな場合を想定し頭の中でシュミレーションしてみる。
そんなこんなで午前5時。
まだ真っ暗な東京八重洲口のバス降車場が見えてきた。

おおお!

前の晩 同じ場所から出発した「大阪行き」「京都行き」「和歌山行き」
などなどの大型バスが1号車、2号車・・・と続々と停車している。

やばい!
これだけの人間が一斉にみどりの窓口に並ぶのだ。
それ意外にも一般にチケットを取る人だっているだろう。

眠そうなダンナさんをせかして
バスの横腹に積み込んだ荷物をひっさげて走る。

同じような人々が八重洲口に溢れかえる。
ただ、その様子はひどく不思議だ。

これがスキーバスなら エアティックジャケットとかスキーウエアな若者一色
しかし、帰省客 観光客 観光済み客 
各種取り揃えておりますなバスからは
「ミッキーマウスの耳をつけている子供」
「東京ディズニーランドのあの青くでかいビニール製ショッピングバックを
両手に2つづつ持たされているお父さん」
「その袋を持つのに 顔の2倍はありそうなミッキーの手袋をつけているお母さん」
「訳あって夜中に都会を発った60代半ばのおっさん」
「着膨れているのかただのデブなのかわからない夫婦(私達)
「なぜだかやたらといる大学生風の外人」

そんな不思議な集団が 八重洲のあちこちに溢れかえっている。
さしづめ年末の活気を呈した黒門か築地市場 はたまたアメ横のようだ。

「とにかくみどりの窓口へ行こうぜ!」私はダンナさんを引っ張った。


中央口、すでに数百人は並んでいる。つか最後尾、どこ!?
あまりの人数に口が「あ」のまま戻らへん。

あかん、こんなん並んでたら明日になってもチケット買われへん。
口を「う」にして北口へ走る。
みどりの窓口はまだあいていないというのにここも人の列。
南口も同じ。

へろへろなダンナさんはおとなしく列に並んだほうがいいのでわ?と
提言してくるが、そんな効率の悪い方法 いやよっ!
と、わたしの身体が拒否する。

何の為に 私はずっと出張生活をしていたというのっ!
そう こんな時のために知識を持つためじゃなかったのっ!
諦めちゃだめ!だめよアナタっ!

何が何だかわからんが とにかくあたしの勢いにダンナさんは押される。

脳内パソコンが「パターンA」「パターンB」をはじきだす。
そしてイチかバチかで走った先は「普通の券売機」。

そこで入場券2枚を買う。
わたしたちが持っているのは昨晩の日付けのバス乗車券のみ。
正月なので手持ちのひかり号ビジネスきっぷも新幹線回数券も使えない。
このバス券を新幹線きっぷに交換するのは今は諦めたほうがいい。
払い戻しはいつだってできる。


とにかく改札の「中」へ入ろう!新幹線中央口へ行こう!
中央口に「本日分指定席」のみを扱う窓口が並んでいる。
改札の外のみど窓は長蛇の列だが、人数は減りこそすれそこも同じだろう。

わたしは少しでも並びの少ないみど窓を探すつもりはなかった。
「誰よりも早く『指定席』を取る!」

かくしてわたしが立った場所は、新幹線中央改札脇のシャッターの前。
みど窓があくのは午前5時半。このシャッターも同じ時間のはず。

数分後シャッターがのろのろと開き、
そこに燦然と輝く「新幹線指定席自動販売機」があらわれる。

どの窓口もあんなに人がいたのに、不思議とここは誰もいない。
入場券2枚をつっこみ、表示に従って「新神戸行き」「大人2枚」
「乗車券+指定席券」席があればどーでもいいが一応「喫煙」で検索。
画面をピ ピ ピ と押す。

数秒後、あっけなく始発のひかり指定席2枚を手に入れた。
数�嘆�の「人間対応」の窓口には ずっらぁ〜と人が並んでいる。

あまりのあっけなさにしばしぼーっとしてから
ダンナさんが「す・・・すごいよ。今日のはに〜はぶらぼーだよ。
俺達は人生の勝者だね!」

どんどん興奮してくるわたしたち

「そうよ!ういあーざういなぁよ! ういあーざチャンピオンよ!」
と改札前でクイーンを歌い出す始末。
2人のフレディ・マーキュリーが身体をくねらせる。

新幹線の時間までまだ30分ほどの余裕。
もしあのまま並んでいたら昼過ぎて自分の順番がきたときには
指定席どころか乗車率200%のデッキで
お腹を空かせてラッシュアワー3時間半を経験するはめになっていただろう。

しつこく「俺達は人生の勝者だよー!」と叫ぶ。

だいだい、夜11時に東京を出て朝5時に東京へ戻ること自体
すでに人生の敗者であることなど気付かないほど興奮していた。

お弁当を食べながら、品川あたりから見た朝焼けの
それはそれは綺麗なことったら。

頂上に雪をかぶった富士山の その美しさといったら。

しばし言葉を忘れ二人で見入っていた。
自分達が 「41年ぶり豪雪の名古屋」へ近づいていることなど
すっかり忘れていた。

(まだつづいていいですか?)


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