(つづき) いとこが強烈に覚えていることがあるという。
7歳くらいの頃。その時の「母」は家事を一切しなかった。 夕方になったら 彼女が必ずお米を研ぎ スイッチを入れ 市場で惣菜を買って並べる。洗濯ものを取り込み畳む。 その前に「母」の店の手芸用品屋の店じまいに片付けに行く。 実の父親は夜勤続きで 娘がそんなことをしているなんて知らない。
そんな家事全般が日課だったある日、友達の家で遊んでいてふと気がつくと 外が夕方のように暗い。 しまった! まだお米を研いでない! 蒼白になって 市場に向かい顔見知りの店員たちに 「今 何時?今 何時?」と 聞きまわったという。
どこで聞いても「3時やで」と答える。 そんなはずはない こんなに暗いのに。
何件も聞いて 外は雲がたちこめて暗いけれど 今は午後3時だとやっと納得した時 心から 「あぁ〜 よかった〜」と安堵したという。
これだけの話。
これだけだが、私は聞いていて 本当に切なくなり 泣いた。 その時の 7歳のいとこを抱きしめた。 目の前にいるのは ええ大人になったおばさんなので そのおばさんに同情する気は全くない。
7歳が生きるために なんか必死になっている。 食うためじゃなくて、生きるために。 自分を認めてもらうために。
これだけの話が 何十年経った今も その時の空の重さのように 彼女の心に沈んでいる。 それも悲しい。
二人で静かに泣いた。
数年後、 その時の「母」は「母」でなくなり また別の人が母となり また別の人が母となり。 中学校を出る頃には、 一筋縄ではいかない 剣と盾を持って 体もぼろぼろにして 1人でどこかに住み込んで戦っていた。 15歳の女の子が だ。
父親である男は私の叔父にあたるのだが 人生空廻りな男だ。 いい加減でやけっぱち。
そんな父を見て 彼女は「責任を果たす」が自分の命題に。
私は父から受け取れなかったものを代行しているように思えた。
自分が結婚して家庭を持って 安住の地を見つけたと思いきや そこで 自分の責任を果たすつもりなのか 娘に愛情を注ぎ 世間一般的なこと以上 なんでも娘にしてやる。 旦那さんはしらけて外へ出る。
自分が一切してもらえなかったことを 娘にしてやる。 とにかく一日中べったり。 今 娘はがんじがらめから脱出しようとしている。 そんなこんなを振り返って 今 恋をしているいとこ。 地獄を見るも 唇を噛むも あんたの勝手。
私がすること したいことは あんたに背中を向けないこと。
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