子守唄代わりの夜伽話 |
眠らない街・東京。 その街のはずれに、1人の男が居ました。
男は3人兄弟の次男に生まれました。 生まれてすぐ、瞼を僅かにしか開けない事に気付きました。 眼球に異常は無く、生後すぐに手術をして、 とても細目ですが、人並みに開けるようになりました。
――兄弟3人、すべて父親が違う 周囲が噂をしても、3人仲良く小さな店を営みました。 兄、そして弟が結婚し、 男も、1人の女にめぐり合いました。 男の母親は、女に「息子と結婚してくれ」と頭を下げました。 已む無く、女は結婚を受け入れました。
男の両親が持つ土地に、一軒家をかまえ、 女は男の店を手伝い、一心不乱に働きました。
結婚してから、7年が経ち、 女が妊娠している事が分かりました。 喜ぶだろうと思っていた男の第一声は
全てを否定するような言葉でした。
なぜそのような事を言うのか、女は問いました。 男は、数ヶ月前に女が泥まみれで帰宅した日の事を話しました。 男はその事を、強姦されたのだと思っていました。 ――それも、その日出かけた先の、女の妹の旦那に。 女は、自分の行動を一番分かっているので、 そんな考えは全て否定しました。 泥まみれで帰宅した理由も、その日、妹の家から帰宅する途中 単車で転んだからだと言いました。
どんなに口論を続けても、お腹の子供は成長し、 やがて、娘が生まれました。 女は、その娘に、自分の母親の名の一文字と、 父親の名の一文字を組み合わせ、名をつけました。
男は、何も信じてはいませんでした。
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2005年06月06日(月)
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