美輪さんの美の字は『美学』の美〜!
全体の感想はこれに尽きました!(笑) すごいこだわりの舞台でした。 本当にいい物を観たという感想でいっぱいです。
演出・美術・音楽・衣装…総て、美輪明宏さんというのを見た時に小さな溜息をついてしまったことは、今となっては秘密ですが。
役者が演出家を兼ねる時は大抵マニアックになりすぎて、観ていて辛いことが多いのですが…マニアックになりすぎず、かといって矜持を置き去りにしたわけでもない『本物』の舞台を観ることができました。
日本の演劇界…このくらいのレベルを基準としてほしいものですね。
ご自身が新聞のインタビューの中で自信たっぷりに語ってらしただけはあります。 確かに、これほどいいものを見せて貰えるのなら、積極的に劇場に通うようになるのもわかります。ストレートプレイはあまり観ないというか…ミュージカルの方を優先してしまう私でも、また行きたいな〜(^^)と思える舞台でした。
ただし、明智君は別の人を希望(笑)。 高嶋兄ィ…(T^T)ルキーニの初演の頃を思い出したよ。 初演の時は××だったもんね…。 せっかく、美輪さんと並んでも見劣りしないキャラクターなんだから、もっと明智君になりきってほしかった。徳川家康とあまり差がないんでがっかり…。 明智君は知的であってほしいのに、なんか笑い方が下品(笑)。 私の中の明智小五郎像は天知茂さん…某2時間ドラマで最も心を熱くして見てました。(///)…なんで、どうしても凝り固まったイメージというのはあるんですが、どうしても『高嶋兄ィ…もっと頑張ろうよ』と、思わずにはいられなかったです。 美輪さんが円熟しきっているだけに粗が目立つのですが、これは演技力というよりは、役に対するアプローチとセンスの問題だと思いました。 はっきり言えば、役者としては不器用とも言えるのでは…。(^^; もっと早くに才能豊かな演出家と出会えればよかったんでしょうか…?
まあ、高嶋兄ィに限ったことでなく、演技の上手い人とそうでない人の落差は激しかったです。 雨宮さんと早苗さん役の人は『美しい』と散々言われている筈なのに、ちっとも美しく見えない…(ーー; 早苗さん役の方は役者さんにしては薄めの顔なので、どうもインパクトに欠けるというか…立ち居振舞いがお嬢様役にしてはぞんざいだったとか…、登場してすぐのシーンは可愛さを強調しようとしすぎて、わざとらしくって白けた雰囲気になってしまっていたとか。ここの場面なんて、もっと普通にしていたほうが可愛かったんじゃないかと…思うんですけど…。 逆に雨宮さん役の方は顔が濃すぎて…客席の中程より少し後ろの席だったのですが、こんな席でもくっきりはっきり!(笑) 一緒に行った子は○イドーのCMの石原裕次郎の若い頃を思い浮かべてしまい、雨宮さんが出る度に、頭の中をあの歌が駆け巡っていたそう。(^▽^) 演技も顔と同じで濃ゆかったデス。
ただ、下手なりにどの人も『これから』のことを考えると面白そうな人ばかりなので、美輪さんの審美眼はいかほどのものかを窺い知ることができます。 でも、その人たちもいい演出家と仕事ができなければ、成長と脱皮は無理でしょうね。…美輪さん、温かく、厳しく(笑)、育ててあげてください。
しかし、出演者よりも私の心をがっちりと掴んでしまったのは舞台美術! 客席からはあまり見えないのに…絨毯もいい物を使ってらっしゃいましたし、とある場面の椅子などはさり気なく使われているのに、多分1脚、3〜4万円のものですよねぇ…。 (こういうものの値段を出すのもなんだかいやらしいかな…f(^^;)
舞台奥や隅々まで本当に細部に至るまで、観客を惹きつけてやまない美術でした。 学芸会で出てきそうな書き割りなんてどこにもありません。ああ、商業主義だけのチケットはバカ高いくせに、ケチケチ舞台装置の○○に見習ってほしいです!
衣装もゴージャスで、緑川夫人という役において、いつもの美輪さんよりも大分、シックな印象でしたが…なんといっても髪の毛が『黒』!(苦笑)…エレガントなラインで、立ち姿がお美しかったです。 動きがすごく優雅で滑らかで…TVなどで見るほどには毒々しさがなかったです(笑)。 着物の早変わりなどは本当にあっという間に変わってるんで、驚きました。 『悪の華』の時のあのスピードはなんだったんだ!…って思うくらいには比べものにならない早さでした。 …とはいえ、『悪の華』は着物から着物、『黒蜥蜴』は着物から洋服…またはその逆なので、簡便さもまた違ってくるのでしょうけど。 それから、ちゃんと衣装を替えるたびに指輪やアクセサリーも替えてらっしゃいました。ここにも美輪さんのこだわりが…。 宝石スッキ〜としてはこういうところも嬉しいですねェ。 あれは果たして本物なのか、それともフェイクなのかが気になりますが…やっぱりそれを舞台を観てる時でない時に追求するのは野暮なんでしょうね。
初めての生美輪さんでしたが、はまる人の気持ちがよくわかりました。 TVとかで観てても、底知れない恐ろしい人だと思ってましたが…やはり、この人は怪物でした。すごく、存在感が大きかった。 大して盛り上がっていたとも思えなかったのですが、最後はやはり、スタンディングオべーションで。 尚且つ、(私は気づいてなかったのですが)拝んでいた(-人-)人もいたそうです。 舞台のもつパワーってすごいですね。 ただ、3幕構成はいいけど、15分の休憩を2回挿んだとはいえ、18時半開演で22時半終了ってのは…ちょこっときつかったデス。 仕事帰りで疲れてたのもあって、3幕目のあまり上手くない人たちの掛合いの場面でちょこっと寝てしまいました。(。_。; で、でも、そこの場面は冗長だったし、削ってもさして支障はなかったかも…。 (肝心のものはしっかり観てきましたから)
今度は、三島由紀夫脚本の別の舞台を観たいです。 (構成も絶妙でしたから、もう少し、小説以外のこの人の世界を見てみたい気がするのです。)
※ ふと、気になったのですが、今までいろいろな方が明智さんをやってらっしゃるのですが…あまり定着してないということは美輪さんはどの明智さんにも満足はしていないのでしょうか? 嗚呼、聞けるものならご本人に聞いてみたいですね…。
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