2003年11月08日(土) |
『そして誰もいなくなった』 |
まず、驚いたこと…開演前の携帯を切るように…っていうアナウンスが祐一郎さんと匠さんのコミカルなアナウンス劇で始まっていたこと。 ………最近は、ごく普通のアナウンスじゃ聞かない程、非常識な人間が増えてるんですね。 しかし、それでも携帯の電源を切らない馬鹿はいるし、コンビニ袋を持ち込んで、上演途中にがさがさと音をたてる非常識人もいる。 もういっそ、入り口で強制的に携帯の電源をOFFにさせるだとか、ビニール袋の持ち込みは却下するだとかの処置はして欲しいですね。
いくら、場内飲食禁止じゃない場合でも、上演中にビニール袋から出してパックジュースを飲むのは周囲の人に迷惑です! しかも、最後の最後まで飲もうとしてズズっと音をたてる厭な人間がいた! そんなことが許されることかどうかわからないような人間は劇場に近づかないでください!
咳は…季節柄どうしようもない部分もありますので大目にみますが、きちんとハンカチなどで抑えるように!!…と美輪さんも仰ってました。 もう少し、常識の範囲と節度を照らし合せて欲しいものです。
というところで、本題に入りたいと思います。 『そして誰もいなくなった』…ミステリ的に見てこの作品は魅力的題材がふんだんに盛り込まれているが、そのトリックとなるとイマイチ大味であると言えなくもない。それはこの作品に限ったことではなく、クリスティ全般として言えることであるが…。 クリスティ作品は非常に魅力的な舞台設定ではあるが、叙述トリックということになるとアンフェアだと言われる声も高い。 確かに、私自身も幾つかの作品でクレームをつけたいと思ったことはあった。 それは翻訳家というフィルターを通す所為もあるのだろうか…いや、それだけではない。 クリスティという人は大胆不敵な事件を創作することに長けてはいるが、細かいところではちょっと抜けたところのある人なのだと思う。 あまり性格がよろしいとはいえない読み方だが…事件のメモをとり、きちんと順を追っていきさえすればロジックの穴が見つかるからだ。もちろん、推理小説を読む楽しみというのはロジックの粗探しをすることばかりではない。 読者を毒者に変えてしまうほど魅力的な設定とアクの強いキャラクターに引張られてぐいぐいと物語の中に引き込まれていくので、その点では十分に楽しませてくれる作家だといえる。しかし、クリスティ作品の場合はロジックの穴が実に大きかったりすることが少なくない。だから、事件が終結を迎えた時にそれが腑に落ちない読者も多いのではないだろうか。それ故に何年にもわたり、クリスティはフェアかアンフェアか…論じられることが多いのではないかと思う。
犯人はAであると語る。一時、Bが犯人であると疑われるが、アリバイが立証されて無罪放免。しかし、解決してみれば犯行時刻に犯行可能なのはAとしておきながらもよくよく読みこんでいけばCのアリバイもない事がわかる。そして、動機の面で言えばAよりもCの方が濃厚なのではないかと思う動機を持ちうることがある。 どうして、犯人はAでなければならないのか、Cではない理由とは一体何なのか。 一時的にCを疑う者はいても、物語の流れはよってたかってBであるかのように疑惑を向け、Cはフェイクの役割にすらならない…その理由付けが希薄であり、理論が強引で乱暴であることがままある。 解決の場を読み進むうちに『ちょっと待て!』と言ったことが何度あることか。<実際に思わず声を出したりしたこともあって電車の中だと恥ずかしい思いをする。 ただ、クリスティ作品はその舞台設定と息もつかせぬ展開で、自分が物語の中にはまってしまったような錯覚に陥り抜け出せないこともある。そして、それこそがクリスティの技量であり、魅力でもあるのだが…… 『もうちょこっと穴をなんとかしてくれよ〜!』と思わずにはいられない。
さて、今回はそんなクリスティ作品が舞台化された。 今までにも『マウストラップ』や『検察側の証人』なども舞台化されてはいるが、観たい観たいと思いながらもスケジュールと予算の関係でなかなか実行に移せずにいた。しかし、今回は祐一郎さんが出ると聞いたからには見逃せない! しかも、名古屋公演もあるくせに新宿・シアターアプルまで行ってきました! …だって、名古屋公演まで待てなかったというより…名古屋公演3回しかないし! いや、まだ名古屋飛ばしをされないだけマシなのかもしれないが、それでも……しかも月末…なかなか厳しい日程じゃないか…(−_−;ということで、じゃあ、東京も…!ということになりました。<…でも、大丈夫!同じことをしている人はいるから。<同県に住みながら、東京や大阪で会う回数のが多いってのも問題な気もしますが…。
『そして誰もいなくなった』に祐一郎さんが出演すると聞いたのは随分前のことで、『祐一郎さんだからミュージカルなの?』…なんて思ったりもしましたけど、やはりストレートプレイでした。 共演者を見てある程度は覚悟してたんですけど、祐一郎さんに今ちゃんも匠さんも沢田さんもいらっしゃるからもしかして…と思ってたんです。 他のキャストもストレートプレイばかりの方とはいえ、芸達者な方が揃ってらっしゃってたので、できないはずはないと思ってました。 でも、金田さんを見て『絶対に無理だろう!』とか思ってたので(失礼)、結構、気持ちは揺れていましたが。(昔よりは巧くなってましたよ〜。)
あとは『また死んじゃう役か』ってことが引っかかりました…(^^;<だって、『そして誰もいなくなった』なんだから。
やはり『歌の祐一郎』はミュージカルの方がいいと思わずにはいられないけど、相変わらず素晴らしい歌声でした。 たった1曲だけだけど、それだけに愛しさが増すようです。 既に観た方…『あれ?』っと思った方もいらっしゃるでしょうが、もう1曲のあれは…楽しかったけど、祐一郎さんも楽しそうに歌ってらっしゃいましたが、人の期待を裏切るのが好きなおちゃめな人だから…。 あれはお遊びと見なしてます。 …ファンの心理としてあれを1曲とは考えたくないです。 …とはいえ、あの曲をいつものようにかっちりと歌われると不気味ですが。
それでもやはり、バズーカが冴え渡ってこその『歌の祐一郎』ですから。でも、せっかくなんだから今ちゃんにも何か歌って欲しかった…。『Drink with me』なんて贅沢は言わないから。(^^;<絶対無理です。 しかし、あそこでいきなり歌い出す必然性ってなんだろう…? ミュージカルでいきなり歌い出された時よりも吃驚しました。
ああ、ストーリーは余りにも有名だけど、この時期、まだ観てない方もいるでしょうから犯人などネタばれするようなことは書けないし、ましてやラストの場がどーのこーのなんて書けません。(^^;
ただ、これだけ…『原作どおりではありません!』
『原作と脚本は異なるラストだ』との情報は聞いてましたが、あそこまで違うとも思ってませんでした。そして、それだけなのに…それだけのことなんだけど、それだけのことが声を大にして叫びたいことでもあるんです。 『嘘つき〜!』って叫びたかったりすることもあるんです。 うう…この辺のことは11/27の観劇後に書きます。 もう、その頃には上演も終わってるし(苦笑)。
本当はものすごく叫びたいけど、検索でぶち当たり放題なので、当り障りのないことだけ…書くことにします。 舞台は帝劇だの梅田コマだのに慣れてしまってるんで、シアター・アプルだと小さいように感じられるけど、そんなに観にくい劇場でもなく、リゾートの雰囲気の漂うセットはよかったです。 やはり、こういったクローズドサークルはしょぼい別荘が舞台では絵にならないですものね! 誰もが一度は訪れてみたいと思うようなお邸であることは重要だと思います。
原作のままだと結構めまぐるしい場面転換があるのでは…と思っていたのですが、転換などはせず、その分、人がめまぐるしく動くことになってましたが、まあまあうまく処理してました。でも、やってるほうは大変だよね。 しかし、場面転換がないので、その分時間経過がわかりづらかったです。
退屈する暇がないどころか、舞台のストーリーを追っていくのでいっぱいいっぱい…というか、いついかなる時も祐一郎さんを追うことに腐心してました。(―_―; しかし、まず舞台を目にしてまずしたことは人形探し。<基本です。 原作ではインディアンボーイズでしたが、舞台では兵隊さん人形になってました。<これ位はばらしてしまってもいいでしょう。(^^; なかなか10個探せなかったのですが、結構、盲点になりながらもちゃんと置いてありました。ストーリーが進行している時もつい人形を探してしまう。 お隣に座ってた方も指を折って人形を数えてるし!(笑)
出演者に気をとられているうちに人形が消えたときの悔しさときたら…目の前で犯行に及ばれた探偵の気分(笑)でした。
途中まではすごくどきどきする作品でした。 本当に誰が犯人か全くわからなくて出演者と一緒に疑心暗鬼になっていく。 観る前までは犯人の名が思い出せなかったのに、舞台が始まった途端に思い出しました。 しかし、『ああ、あの人が犯人…』とは最後まで確信が持てませんでした。 死んでいく順番とかも原作と違ってたような気がしましたし。 だから、『やられた!(><)』って思うことがこういう推理劇の真骨頂ともいえるなら、このお芝居はほぼいいんじゃないでしょうか。
でも、ラストで破綻している…とだけ言っておきます。 そこが腑に落ちない!
しかし、面白かった!結末のわかっているミステリってそう何度も観たいものじゃないと思うけど、この作品はまた観たいと思わせる出来栄えでした。…って言うか、まだ名古屋公演行くし!
いや、祐一郎さんが出てるからってだけじゃなく…(^^; むしろ、出てない方が作品的に成功したのでは…と、ファンにあるまじきことを思っていたり…や、祐一郎さんにストレートプレイをやらせるほうが間違ってるって日頃から正直に暴言吐いてますから。 こうなると、『マウストラップ』や『検察側の証人』を見逃したのが断然悔しくなりました。今度はぜひ、破綻してないラストを観たいものですね。
最後に…あのラストに比べたら、アガサ・クリスティはフェアな人です。
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