鼻くそ駄文日記
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2001年08月25日(土) |
越えられない壁をどう処理するか――ヤスパース限界状況を私的に解釈 |
昨日話したガダマーさんの後輩であるヤスパースさんのお話である。 ぼくらは日常生活で壁(葛藤、悩みなどのことです)ができたときは、その壁を越えろとよく言われる。それはおおむね正しい。壁から逃げれば、越えられなかった自分を尊敬できなくなり、現実を直視できない言い訳だらけの人間になってしまう。 しかし、世の中には絶対に越えられない壁もある。 ヤスパースはその絶対に越えられない壁を体験したひとりだ。ヤスパースは、ドイツ人である。そして、ナチス政権誕生後、ナチスへの協力を拒否したため大学の教授職と全著作の発売禁止処分を受けた。ナチスドイツという壁、これは個人ではどうしても越えられない壁である。 ヤスパースはこのようなどうしても越えられない壁を「限界状況」と名付けた。 そして、人が限界状況におかれたときは、その挫折を直視することを、自分をもうひとつ上のステージへ上げる(つまり擬似的に壁を越えたことになる)きっかけになると考えた。 つまり、壁を越えられなければ、なぜ自分が越えられなかったかを直視することが大切なのである。 なにか挫折をしたとき、ぼくらは「運がなかった」などと適当なことを言ってごまかしがちだ。しかし、それではなんにもならない。「本当だったら、こうなっていた」と結果も出てないのに思いこみ、本当の自分はこういう人間ではないと疑うはめになる。疑っているうちに、本当の自分ではないと思いこんでいる現実の自分を軽蔑するようになり、自分を偽って生きるようになってしまう。 それではいけない。 自分の挫折、いたらなさ、失敗、それらを直視し、「たら、れば」な自分を一切忘れるべきである。いま、生きている自分が本当の自分なのだから。 限界を知ること、それが壁の向こう側を知るひとつの方法でもある。
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